幼女と執事が異世界で

天界

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第5章

91,財産 Part,1

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 役所で手続きを済ませ、冒険者ギルドに戻ってくるとすぐにギルドマスターに出迎えられた。
 後ろには瞳に何も映していない顎――リオネットがいる。


「無事手続きは済ませたようだな。こっちも用は終わった。
 そこでリオネットの買取金額だが……」


 リオネットは今はオレの奴隷だし、その前からギルドマスターから買い取ることを約束している。
 だが問題はやはり値段だ。
 ギルドマスターは適正価格で買い取ると言っていたが、ランクSの冒険者の適正価格というのは天井知らずなのは言うまでもない。
 普通の奴隷が金貨で大体2桁序盤くらいだ。
 戦闘経験やステータスなどで一般奴隷と区別されるくらいの違いが出る。
 冒険者としてのランクもこれに拍車をかけることになる。
 しかもリオネットは自身をかなりの金額が予想される高級防具で固めて武器も恐らく凶悪な値段がするものだろう。

 それに加え、リオネットはPTを組んでいる。
 そのPTだがリオネットのPTは全てヤツの奴隷で構成されているので、ヤツの奴隷はもうすでにオレが所有しているのでその人達も必要となる。当然装備や道具も。

 つまりリオネットを買い取っても今まで通りのランクS相当の行動を取らせるには相当な金額を積まなければいけないことになる。
 さすがにギルドマスターといえどもそこまでのお金を動かす事はできない。


「そこでだ、リオネットは買い取るが装備は買い取れん。もちろん他の奴隷もだ。
 そういう理由で相談なのだが、装備と奴隷を貸し出してくれんか。
 もちろん期間契約として修理修繕整備はこちらで持つ。装備が大破した場合も保証しよう。必要道具類もギルドが支給する。
 そちらで用意してもらうのは装備と奴隷だけだ」


 ギルドマスターの出した提案というか相談はギルドとしてはかなりがんばっていると思う。
 リオネットだけでも買い取るのが難しい金額になるのが簡単に予想がつくのにそれに加えて、買い取るよりはマシとはいえ安い金額では決してないはずの貸し出し契約。探索時の消耗品の類だけでなく修理や修繕、装備の保証までしてくれるという。


「どうだ? おまえさんには損はないと思うが」

「えーと、アル、どうかな?」

「一先ずワタリ様が受け取った財産を検分した方がよろしいかと存じます。その中に奴隷や装備なども入っておりますので」

「あー……それもそうか。とりあえずきちんと見てみないとね。その顎については買い取ってもらって構いませんけどね。
 むしろ要らないので是非買い取ってください」


 顎に向けて嫌そうな顔を向けて言ってやるが、感情の制御までされている奴隷契約では何の反応も返ってこない。
 まぁ別にいいけど。


「そうかそうか。わかった。
 ではリオネットの買取金額についてはこちらで適正価格をしっかり算出しておく。
 一応その他貸し出し価格や期間の金額も算出しておこう。リオネットの使っている奴隷達のLvやステータスや装備は把握しているからな」

「わかりました。では私達はとりあえず見てきますね」

「あぁそうしてくれ。
 ……そうだ。リオネットの屋敷を見て驚かんようにな」

「え……はぁ、わかりました」


 何やら意味深なギルドマスターの言葉に生返事を返してアルに手を引かれたままみんなでまたギルドを後にする。
 ギルド前にはすでにあの豪華な馬車が用意されていてさっそく乗り込むと柔らかいクッションの利いたすわり心地抜群の腰掛が待っている。

 一緒に乗り込んだネーシャは相変わらず固まったままで、レーネさんも少し緊張している。
 なのでアルと雑談を交わしながらまったく揺れない馬車に揺られて十数分。


「お嬢様、到着いたしました」


 御者席に続く窓から老執事の声が聞こえ、窓を覗いて見るとそこにはありえないナニカがあった。


「……ナニアレ」

「前の持ち主であるリオネットの建てられた屋敷にございます、お嬢様」

「あ、あんなのに住んでたの……?」

「はい」


 老執事が何事もなかったかのように答える声に信じられないという言葉を返すが慣れているのか老執事はなんともない。
 声を掛けられた時には正門前だったのだが、唖然としている間にすでに敷地内に入り大きな扉の前に横付けされた馬車から戸惑いながらも降りる。

 まず目に入るのが完全に開け放たれている黄金の扉。
 玄関となっている部分は大きなホールになっていてそこには使用人と思しき者達がずらっと整列している。

 ホールの中も一面黄金。目に痛い。

 屋敷の壁面、屋根に到るまで全て黄金色という徹底振りには目が痛いどころか見るのも辛い。


「なんちゅー成金趣味……」

「ワタリ様、こちらは本物の金ではなくメッキのようです」

「あぁ……なんというか一気にしょぼくみえた」


 ネーシャとレーネさんはそれでも口をぽかーん、と開けて停止している。
 停止している2人の手を取って引っ張って玄関に入ると並んでいた使用人達が一斉に頭を下げる。
 その様は一糸乱れぬ統一感に溢れ、恐ろしいまでの迫力を伴っている。
 おかげでネーシャがひっ、と声を上げてオレの後ろに隠れてしまったではないか。

 ネーシャを後ろに隠したまま進み、老執事が案内したのは屋敷の奥にある大きな部屋だった。
 ここがリオネットが使っていた主部屋らしい。


「くさ……。パス。掃除しといて。徹底的に」

「畏まりました」


 部屋に入る前から臭っていたがやっぱり香水のにおいが酷い。
 部屋のドアが開いた瞬間には老執事にすでに指示を出し速攻でその部屋を後にする。
 あの部屋はだめだ。臭いが取れなかったら取り壊そう。

 次に案内されたのは先ほどの部屋と同じ位の大きさの部屋だったが、こちらは匂いがなかった。
 正確には匂いはあるのだが、香水臭かったりしない爽やかな植物の匂いが強い。


「こちらは客室の中でも最上級のものです」

「ふーん。海鳥亭とは雲泥の差だねぇ~」


 とりあえずということでソファーに全員座るとすぐに紅茶の匂いを漂わせた蛍光色のいつもの飲み物が出てくる。
 まったく音を立てずに用意されたそれらは所作だけでもプロの仕事だとわかる。
 しかし飲んでみるとアルが淹れてくれるものに比べると香りが強いだけであまり美味しくなかった。
 茶葉は高級っぽいけど、アルが淹れてくれる普通の茶葉の方が美味しい。
 庶民の舌だからそう感じるのかな? よくわからない。

 お茶を飲んで一息吐くと老執事が何やら目録のようなものを大量に運び込ませている。


「アレはなに?」

「こちらはお嬢様の取得なされた財産の目録になります」

「目録とか事前に用意しておくものなの?」

「いえ、奴隷契約で主人が1度に変動する場合はこういった物が必要になりますので、用意を進めておきました。
 ですのでまだ全ての目録は完成しておりません。ご容赦を」


 どうやら奴隷の主人が1度に大量に変更されるということは元の主人が奴隷になったということで解釈されるらしく、奴隷契約のLvが低くある程度の裁量を任されている奴隷は財産の目録を予め準備し対応するものらしい。
 まぁこの老執事がすごく出来る執事である可能性が高いけど。


「こちらが各奴隷の目録になります。では入ってきなさい」


 老執事が渡してきた目録を受け取ると、部屋に屈強な肉体にはちきれそうな服を纏ったそれなりの見た目の者達が入ってきた。
 中には女性もいるがこちらはボンキュボン、を絵に描いたようなセクシーダイナマイトな体型だ。

 どうやら目録によるとこの人達はリオネットの主戦力の奴隷のようだ。
 全員が直立不動でこちらをみつめているが、敵意は感じない。むしろ新しい主人がどういう人物なのか探るような、だが決して値踏みするような視線ではない。


「お嬢様、こちらがギルドマスター殿が言っていた貸し出しを希望した者達になります」

「5人しかいないけど、リオネットを含めて6人で行くものなの?」

「はい、前主人リオネットのPT『破滅の牙』は6人で構成されています」


 確か奴隷はPT限界数だけで考えればすごい人数組み込めるはずだ。
 だが迷宮はそんな大人数では逆に邪魔になってしまうのだろう。それだけの人数がいると指示も大変だろうし、管理も大変になる。
 食料などの物資もポーターを数人連れて行くにしても大変だろうし、結局少数精鋭に落ち着くものなのだろう。


「ではご説明させていただきます。
 まず目録の最初の項目をご覧ください」


 老執事がこちらの考えが落ち着いたのを見計らい話を続ける。

 簡単に説明するとリオネットのPTはオーソドックスな構成よりも防御よりな感じだった。
 敵の注意をひきつけて守る盾が2人。
 後衛に回復と補助を使える弓使いが1人と攻撃魔法をメインとした火力が1人。
 中衛に長槍が1人とリオネット。ポーターが2人いて合計の8人。

 リオネットは長剣持ちだが、オレにも使ってきた例のスキルがあるので中衛のようだ。
 盾2人が敵の攻撃を完全にシャットアウトして中衛と後衛による火力で殲滅する。
 前衛が罠感知スキルと罠解除スキルを所持していて、罠などにも対応しているようだ。
 ポーターは完全に荷運び用で戦闘能力こそないがHPが多めになっているので早々死にはしない感じだが、目録上には記載されているだけでここにはいない。どうやら彼らは完全に荷運び専用で交代制のようだ。

 なかなか悪くないPTだと思う。
 うちもアルが防御を担当してオレが後方から火力で殲滅するタイプなので似ている。

 ちなみに全員BaseLvがかなり高い。
 職業も上位職でしかもかなりLvが高く、ステータスもそれぞれ特化した感じだ。
 スキルもそれに伴い特化されている。

 今は奴隷だが、元はそれなりの冒険者だったそうだ。
 それぞれ理由は異なるが奴隷となってリオネットに買い取られた。そして死んでも構わないくらいの鍛錬によりここまでに成長したようだ。
 ここまで来るのにそれなりの数の奴隷が死んだそうだ。
 優秀な奴隷を作り出すために選別する。これがリオネットのやり方なのだろう。

 ちょっと眉を潜めてしまうやり方だが、とりあえず後で考えるという事で次々運び込まれる目録に目を通していくことにした。

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