俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵

文字の大きさ
67 / 144
第四章 光魔法と闇魔法

無詠唱のスイッチ

しおりを挟む
 目隠しのおかげか、俺は闇の球を出すことに成功した。

「見てみて」

 俺は上機嫌に岩場に座っているジェラルドに闇の球を見せた。ジェラルドは俺を一瞥し、海を眺めた。

「良かったな」

「ジェラルド、元気ないね」

 不思議そうにジェラルドの顔を見ていると、エドワードに肩をトントンと叩かれた。

「夜中に三時間も歩かされたら流石に疲れるよ」

「え、三時間? ジェラルド何してたの?」

 キースが呆れた様子で教えてくれた。

「お前、夜中にジェラルドと一緒に転移したんだよ」

「いつの間に」

「で、ジェラルド放置してお前だけ一人で転移で戻って来たんだ。ジェラルドはお前が急にいなくなったって、探し回りながら戻ってきたらテントでスヤスヤ寝てるだろ。今日はゆっくり休ませてやれよ」

 無意識ではあるが、それは完全に俺が悪い。

「ジェラルドごめん」

「……」

「今日は一人でやるから、ゆっくり休んで」

 ジェラルドは冷めた視線を俺に向け、手を翳してきた。

「え、待って、待って。怒らせたのは悪いと思ってるけど、こんな至近距離で攻撃は……」

「俺にも無詠唱の仕方教えてくれ」

「え?」

 ジェラルドは俺に向けていた手を引っ込めて、自身の手の平を見つめながら静かに言った。

「お前ばっか成長してずるいだろ」

「成長? 俺より随分と成長してると思うけど」

 身長だって冒険する前より更に高くなっているような……。

「そっちじゃねーよ。能力的なこと。聖水作ったり魔物浄化させたり光魔法で色々出来るようになっただろ? 無詠唱で魔法発動できるし、闇魔法だって使える」

「闇魔法は、たまたま……」

「たまたまでも使えることに代わりないんだ。赤ん坊の頃から一緒に育って同じように成長してると思ってたのに、どんどん置いていかれてさ」

 ジェラルドはそのままでも強いし、冒険だってノエルの思いつきで付き合わされているだけだ。そんなことを考えていたなんて知らなかった。

「いつの間にか結婚までしてるしなぁ」

「け、結婚って……それは」

「冗談だよ。とにかく夜中に歩きながら考えたんだ。お前と同じ場所に立つには、まずは無詠唱かなって」

 夜はジェラルドでさえセンチメンタルになるようだ。

 闇魔法が勝手に発動する今、暫くこの海辺に滞在する予定なので皆で強くなろう。そう心に決めた。


 ◇


 十分後。

「だから、こうしてこうなんだって」

「何をどうしたらどうなるんだよ!」

 心に決めた決意は砕け散ろうとしている。

 だって、魔法の扱い方を他人に教えるのは難しいのだ。しかも無詠唱なんてほぼ感覚でやっている。何をどう教えたら良いのか分からない。

 メレディスの教え方を批判したが、今まさに自分がその教え方でジェラルドに教えている。

 そんな時、ノエルが提案した。

「ここは、お兄様が無詠唱で出来るようになった場面を再現するのが一番では?」

「確かにな。再現してみるか」

「再現って、あの時は……」 

 メレディスに首筋を噛まれそうになって……いや、実際噛まれたか。とりあえず殺されると思って魔法が発動したのだ。

「ほら、やろうぜ。首出せば良いのか?」

 ジェラルドが首を差し出して来た。俺はその首筋をじっと見た。

 俺はこれを噛むのか……?

「いや……あれはそもそも死にたくないという強い思いから出来たことであって、噛むことに意味はないって」

 俺は噛むことを拒むが、ノエルはどうしても俺がジェラルドの首筋を噛む様をみたいらしい。

「いいえ、きっと首を噛むのがスイッチか何かになっているのですわ。噛めば無詠唱で魔法が発動するはず」

「そんなスイッチ聞いたことないよ」

 ジェラルドは半ば諦めたように言った。

「お前の教え方じゃ全然分かんねーし、やれること全部試してみようぜ」

 俺が噛みやすいようにと、ジェラルドは俺をヒョイっと岩の上に立たせた。目線が同じ高さになり、俺はジェラルドと見つめ合った。

「一回だけだよ」

「おう」

 覚悟を決めて、ジェラルドの首筋を噛もうとしたその時——。

「うわッ」

 突如黒い龍がジェラルドを襲った。その龍はジェラルドの氷のシールドに阻まれて、その場にふよふよと浮いている。

「何これ……?」

「今までの闇魔法の攻撃とはちょっと違うな。こいつ、殺気が凄まじい」

「殺気?」

 俺には全く感じないが、一つだけ気付いたことが……。

「ジェラルド、詠唱してなかったよ」

「あ、本当だ」

 ノエルが嬉しそうに近付いてきた。

「やはり噛むことがスイッチなのですわ」

 やや違う気もするが、今回ばかりは何も言い返せない。

 少し離れた場所で剣を交えていたキースとエドワードも龍の存在に気付いたようで、こちらにやってきた。

「これ、何だ?」

「離れた場所からでも凄い圧を感じたよ」

「何なんだろ……」

 黒い龍はジェラルドを見下ろしたまま、そこに漂って消える気配がない。そして何故かジェラルド以外の人に対しては、敵意は向いていないようだ。

 どうすれば良いのか分からない時、タイミング良くリアムとショーンが情報収集から戻ってきた。

「みんな、どうしたの?」

「実はね————」

 先程の出来事を説明すると、リアムは暫く龍を見て、夫婦の刻印を触った。

「恐らく、これのせいだよ」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

処理中です...