俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵

文字の大きさ
124 / 144
第七章 人間界侵略回避

王家はお揃いに弱い

しおりを挟む
 襲撃は、またもや夜中。

 今回の襲撃はハイアット王国の王都。というより、この国は王都しかない。国民全体を合わせても三百人余りの小さな国だ。

 そんな小さな国を狙っても人間界に大して痛手がないように思うかもしれないが、この国の民は優れた職人の集まりだ。

 身の回りの装飾品や加工品、武器に至るまで、ありとあらゆる物を手掛けている。他国もこの国の技術を評価し、大抵の物はこの国からの輸入品。

 つまりは、この国の職人がいなくなれば優れた武器を作れる者がいなくなるのはおろか、経済が回らなくなる。すぐには何の変化も見られないかもしれないが、経済が回らなければ国も弱っていく。そしてそれは人間界全域の問題となっていく。これは由々しき問題なのだ。

「今晩までに民を全員王城に避難させる手筈は大丈夫でしょうか?」

 リアムが国王に問えば、国王は頷いた。

「問題ない」

 俺はリアムの服をピッピッと引っ張った。

「ねぇ、何で素直に信じてくれるんだろう。リアムのお父さんから偽情報だって言われてるんでしょ?」

「ああ、それはね」

「我が国には兵士がいないのだ」

「あ、王太子様……」

 誰にも聞かれていないと思ったのに、すぐ近くに王太子がいた。全然気付かなかった。

「兵士のいない我が国は周辺国に助けられながら国を維持している。ウィルモット王に警戒体制は不要だと言われたことで、他国の協力が仰げない」

「なるほど」

「今回の件が事実なら我が国は秒で終わりを迎えることになる。藁にも縋りたい思いなのだ」

「藁……」
 
 俺達は藁扱いかと内心思ったが、最近ポッと出た冒険者を強力な戦力だと思えという方が難しい話だ。

「とにかく今回は全面僕らに任せてくれるってことだから、思う存分力が発揮出来るよ」

「そっか。ジェラルドは何だか嬉しそうだね」

「この国は俺と相性が良いらしい。一から氷を作り出さなくて良いから魔法を出すスピードも早いし、魔力もほんの少しの消費で良いんだ」

「僕は反対に魔法が使えないや」

「何で? 魔力切れ……なわけないよね」

 困った顔でエドワードが手の平を上に向けた。すると、手の平から水が湧き出てきた。

「あー、なるほど」

 水はその寒さから、すぐに凍った。空中で凍った水はまるで何かの作品のようで、戦闘には使えそうになかった。
 
「まぁ、何にせよ夜まで暇だしよ、遊びに行こうぜ」

「ジェラルド、不謹慎だよ」

「良いじゃねーか。こんな北の国に来ることなんか早々ないぜ」

「そうだけど」

 怒られるかなと王太子をチラリと見れば、勘違いされた。

「王都を案内しようか?」

「えっと……」

 返事に困っていると、どこからともなく元気な王女の声が聞こえた。

「私も行く!」

 前髪が右分けだから……クレア王女か。

「クレアは駄目だよ。部屋にいなさい」

 王太子が宥めると、クレアは頬を膨らませながら言った。

「はーい。では、シンシアお姉様なら宜しいですか? 代わりに買ってきて頂きたい物があるので」

「シンシアなら……」

「では、お姉様に伝えて参りますわね」





 と、いうわけで、俺達は襲撃前に観光をしている。ちなみにアーサーらは来なかった。

『王族と観光なんて御免だね。食事だけでも気ぃ遣うのに、おれは夜まで寝る』

 勿論アーサーが行かなければ、その仲間は誰もついて来ない。

『悪い、オレもパス』

 キースも襲撃……の前の夕食に備えてテーブルマナーをエドワードから習うことになった——。

 銀細工や革製品を売っている雑貨屋に入り、俺は提案した。

「みんなにお土産買って帰ろっか」

「そうですわね。この置物なんてキース様喜びそうですわ」

「これに盗聴出来る魔道具つけられないかな? 人はこういうのに悩みを打ち明けたりするよね」

「それは名案ですわね」

 弟に悩みを盗聴される兄。不憫だ。

「で、ジェラルドはさっきから何してるの?」

「どれが似合うかなって」

「どれも似合わないよ」

 ジェラルドは俺の頭に様々な髪飾りを合わせているのだ。王太子から冷たい視線を感じる。

「オリヴァー、これとか結婚指輪に良さそうだよ」

「どれ? って、リアム。指輪まではいらないんじゃないかな」

 リアムは俺と末永く一緒にいたいだけ。なので、俺はどうにかして結婚という形以外の選択肢を探していくつもりでいる。それなのに指輪なんて買ってしまったら後戻り出来ないような気がする。  

「そうだ、リアム。これお揃いにしようよ」

 俺は革製のリストバンドを手に取った。リアムは指輪とリストバンドを交互に見て、リストバンドを手に取った。

「良いね。これならみんなで着けられる」

 相変わらずお揃いに弱いリアム。リアムが早速皆の分まで購入していると、シンシアがその様子を羨ましそうに見ていた。

「シンシア王女様もリストバンドが欲しいんですか?」

「あ、いえ。私は……友人とお揃いって良いなぁって」

 王族は皆、お揃いが好きなのだろうか。

「でも、シンシア王女様はクレア王女様といつもお揃いなのでは?」

「お姉……クレアは友人ではないわ。姉妹ですもの」

「なるほど。では、せっかくですからこのブローチなんてどうですか? ノエルと……」

「良いわね! でも、ブローチよりあなたはカフスボタンとかの方が良いんじゃないかしら?」

「いや、俺じゃなくてノエルと……」

 シンシアはあまり人の話を聞かないようだ。ブローチとカフスボタンを手に取って嬉しそうに俺に見せてきた。

「これなんて丁度良いじゃない。同じ柄だわ! これ着けて今度パーティーで一緒に踊りましょう」

「はは……そうですね」

「何? 嬉しくないの?」

「いえ、王女様とお揃いで、しかもダンスまで誘って頂けるなんて光栄の極みです」

「シンシアお姉……クレアが知ったら嫉妬するわね」

 左分けだからシンシアに間違いない。しかし、先程から違和感を覚える。気のせいだろうか。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

処理中です...