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1章
過保護な家族との再会
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存分に調査をして成果はあったと思う。それに、2泊した宿はなかなか快適だった。
もしかしたら、リンが宿の主人に何か言ってくれたのかもしれない。いつかまた会えるかな。その時はお礼をしたい。
変装を済ませて荷物をまとめ背負い、宿に心づけを置いて後にした。彼はそれはもうニコニコで、またおいでくださいと言ってくれた。
もう、一人になる機会はないだろうけど……是非再訪したいな。
今日は、両親とジョナサン兄さんが皇都に来る日だ。
婚約式の衣装やアファトナ領へ持っていく荷物を持ってきてくれるのだ。だから、そろそろ屋敷に戻らないとグレゴリー兄さんが心配しているだろう。
早足で一等区へ向かったのはいいが、そこで出会った警備の騎士に足止めを喰らってしまった。
「貴様、小汚い格好でこの区域に入ろうなんて烏滸がましいぞ! 名を名乗れ!」
自分で言うのもなんだが、彼の行動は正しい。もし僕が彼の立場でも誰何する。
「僕はベニトア辺境伯の三男、グレゴリー様の知り合いで会いにいくところです」
ここは遠慮なく兄の名を使わせてもらう。
「グレゴリー様の? 確かにこの2日ほど誰かを探していたが……」
爪先から頭のてっぺんまで、舐めるように見られた。
「すごく心配性なんですよね。皆さんにご迷惑をかけていませんでしたか? まさか泣いてませんよね……?」
僕が言うと彼は固まった。
「大丈夫ですか?」
石像みたいになった彼に呼びかけると、正気に帰って身震いした。
「あの方のそんな姿を知っているなら、確かに知り合いのようだ。悪かったな。通っていいぞ」
青い顔をして通してくれた。僕が見た鬼の形相を彼も見たのかもしれない。必要なことだったとはいえ、自分のせいで申し訳ない気分だ。
「ありがとう」
手を軽く振って別れ、以降は無事屋敷にたどり着いた。
「カミュ!!」
門のところでキョロキョロしているカミュが見え、自然と駆け出していた。
「オリヴィン様! おかえりなさいませ! ご無事でよかったですうぅぅ~!!」
僕の顔を見た途端大号泣で、出迎えてくれた他の使用人たちもドン引きしている。
「心配させてごめん。送り出してくれてありがとうな。すごくいい経験ができたよ」
「グレゴリーざまが、それはもう、大変でした」
ハンカチで涙を拭い、豪快に鼻をかむカミュ。僕は肩をそっと撫でる。
「ちょっとだけ見かけたよ。えっと、怖い顔してた」
「ええ。オリヴィン様の意思だとお伝えしたのですが、仕事中に少しばかり皆様を怖がらせていました」
カミュは落ち着いたが、鼻がイチゴのみたいに真っ赤だ。僕は思わず抱きついた。
「カミュ、僕を信じてくれて行かせてくれてありがとう」
「オリヴィン様……!」
またカミュの涙腺が崩壊しかけ、僕は慌てて話題を変えた。
「土産話をさせて。あ、グレゴリー兄さんが一緒の方がいいかな」
「その方がよろしいかと。私が先に聞いたら拗ねると思います」
全力で首を縦に振るので、帰りを待つことにした。それにしても、怒るんじゃなくて拗ねるのか。想像すると可愛いな。
「グレゴリー様に、オリヴィン様がお帰りになったと知らせます」
カミュは近くにいた侍女に、すぐ警備隊へ行くように指示している。彼女は駆け足で屋敷を出て行った。
「仕事中に知らせなくてもいいんじゃないか」
「いいえ……同僚の皆様のためにも必要です」
「そうか。わかったよ。父上たちももうすぐ着くのかな」
「ええ。先触れがありまして、まもなくご到着です。お帰りが間に合って本当によかったです」
話している間に、エントランス内がにわかに慌ただしくなった。これはギリギリだった! いなかったらどうなっていただろう。
「これは……! オリヴィン様、早くお着替えをなさってください!」
でも、着替えていたら出迎えられない。それに、父上は僕の目的を知っているわけだし、理解してくれると思う。多分ね。
「自分で説明するからこのままでいいよ」
「ああ、そんな……!」
外では馬車が車止めに止まったらしい。僕は駆け足で向かう。カミュはオロオロしながらも後に続いた。
外に出ると、父が馬車から降りる母の手を取って助けている場面だった。ジョナサン兄さんはもう一台の馬車から降りてきたのだが、僕を見て目を丸くしている。
「オリー!! なんだその格好は!」
猛然と駆け寄り、僕の着ている服をまじまじと見ている。その声に気づいた母が、父の手を取ったまま固まった。
「町の住人の生活が知りたくて潜入していたんですよ」
返事をすると、ジョナサン兄さんの目がくわっと開いた。
「まさか……一人で? いや、カミュもいたよな!?」
「一人でも大丈夫でしたよ!」
僕が首を横に振ると、兄さんは口をぱくぱくとさせ絶句し、母はふらっと倒れけかけ父に支えられた。
「私のオリヴィンが……そんな汚い格好を……」
「加工しただけで、実際は汚くないんですよ」
「でも……ああ、あなた……」
父はサッと母を抱き上げた。
「よく考えてのことだろう、理解してやれ。だが、少々刺激が強かったようだ。オリヴィン、着替えてこい」
「は、はい!」
母にショックを与えてしまい、さすがにまずかったと反省した。僕は即Uターンして自室へと向かう。そんな僕をカミュが追ってきた。
シャツを脱ぐと、すかさず新しいシャツを差し出した。袖を通しながら、父の表情を思い出す。顰めっ面だったな。
「……母上、大丈夫かな。父上も怒ってたと思う?」
「どちらかというと、お母上にショックを与えたことにお怒りだったかと。溺愛されておりますから」
「後でちゃんと理由を話して謝るよ。あと、報告もする」
悪戯であんな格好をしていたわけじゃない。話せばわかってもらえるはず。
――そうだ。リンのことも聞いてもらおう。知ってる人かもしれないよな。
2日間だけだけど、少しは成長できた自負がある。報告するのがとても楽しみだ。
もしかしたら、リンが宿の主人に何か言ってくれたのかもしれない。いつかまた会えるかな。その時はお礼をしたい。
変装を済ませて荷物をまとめ背負い、宿に心づけを置いて後にした。彼はそれはもうニコニコで、またおいでくださいと言ってくれた。
もう、一人になる機会はないだろうけど……是非再訪したいな。
今日は、両親とジョナサン兄さんが皇都に来る日だ。
婚約式の衣装やアファトナ領へ持っていく荷物を持ってきてくれるのだ。だから、そろそろ屋敷に戻らないとグレゴリー兄さんが心配しているだろう。
早足で一等区へ向かったのはいいが、そこで出会った警備の騎士に足止めを喰らってしまった。
「貴様、小汚い格好でこの区域に入ろうなんて烏滸がましいぞ! 名を名乗れ!」
自分で言うのもなんだが、彼の行動は正しい。もし僕が彼の立場でも誰何する。
「僕はベニトア辺境伯の三男、グレゴリー様の知り合いで会いにいくところです」
ここは遠慮なく兄の名を使わせてもらう。
「グレゴリー様の? 確かにこの2日ほど誰かを探していたが……」
爪先から頭のてっぺんまで、舐めるように見られた。
「すごく心配性なんですよね。皆さんにご迷惑をかけていませんでしたか? まさか泣いてませんよね……?」
僕が言うと彼は固まった。
「大丈夫ですか?」
石像みたいになった彼に呼びかけると、正気に帰って身震いした。
「あの方のそんな姿を知っているなら、確かに知り合いのようだ。悪かったな。通っていいぞ」
青い顔をして通してくれた。僕が見た鬼の形相を彼も見たのかもしれない。必要なことだったとはいえ、自分のせいで申し訳ない気分だ。
「ありがとう」
手を軽く振って別れ、以降は無事屋敷にたどり着いた。
「カミュ!!」
門のところでキョロキョロしているカミュが見え、自然と駆け出していた。
「オリヴィン様! おかえりなさいませ! ご無事でよかったですうぅぅ~!!」
僕の顔を見た途端大号泣で、出迎えてくれた他の使用人たちもドン引きしている。
「心配させてごめん。送り出してくれてありがとうな。すごくいい経験ができたよ」
「グレゴリーざまが、それはもう、大変でした」
ハンカチで涙を拭い、豪快に鼻をかむカミュ。僕は肩をそっと撫でる。
「ちょっとだけ見かけたよ。えっと、怖い顔してた」
「ええ。オリヴィン様の意思だとお伝えしたのですが、仕事中に少しばかり皆様を怖がらせていました」
カミュは落ち着いたが、鼻がイチゴのみたいに真っ赤だ。僕は思わず抱きついた。
「カミュ、僕を信じてくれて行かせてくれてありがとう」
「オリヴィン様……!」
またカミュの涙腺が崩壊しかけ、僕は慌てて話題を変えた。
「土産話をさせて。あ、グレゴリー兄さんが一緒の方がいいかな」
「その方がよろしいかと。私が先に聞いたら拗ねると思います」
全力で首を縦に振るので、帰りを待つことにした。それにしても、怒るんじゃなくて拗ねるのか。想像すると可愛いな。
「グレゴリー様に、オリヴィン様がお帰りになったと知らせます」
カミュは近くにいた侍女に、すぐ警備隊へ行くように指示している。彼女は駆け足で屋敷を出て行った。
「仕事中に知らせなくてもいいんじゃないか」
「いいえ……同僚の皆様のためにも必要です」
「そうか。わかったよ。父上たちももうすぐ着くのかな」
「ええ。先触れがありまして、まもなくご到着です。お帰りが間に合って本当によかったです」
話している間に、エントランス内がにわかに慌ただしくなった。これはギリギリだった! いなかったらどうなっていただろう。
「これは……! オリヴィン様、早くお着替えをなさってください!」
でも、着替えていたら出迎えられない。それに、父上は僕の目的を知っているわけだし、理解してくれると思う。多分ね。
「自分で説明するからこのままでいいよ」
「ああ、そんな……!」
外では馬車が車止めに止まったらしい。僕は駆け足で向かう。カミュはオロオロしながらも後に続いた。
外に出ると、父が馬車から降りる母の手を取って助けている場面だった。ジョナサン兄さんはもう一台の馬車から降りてきたのだが、僕を見て目を丸くしている。
「オリー!! なんだその格好は!」
猛然と駆け寄り、僕の着ている服をまじまじと見ている。その声に気づいた母が、父の手を取ったまま固まった。
「町の住人の生活が知りたくて潜入していたんですよ」
返事をすると、ジョナサン兄さんの目がくわっと開いた。
「まさか……一人で? いや、カミュもいたよな!?」
「一人でも大丈夫でしたよ!」
僕が首を横に振ると、兄さんは口をぱくぱくとさせ絶句し、母はふらっと倒れけかけ父に支えられた。
「私のオリヴィンが……そんな汚い格好を……」
「加工しただけで、実際は汚くないんですよ」
「でも……ああ、あなた……」
父はサッと母を抱き上げた。
「よく考えてのことだろう、理解してやれ。だが、少々刺激が強かったようだ。オリヴィン、着替えてこい」
「は、はい!」
母にショックを与えてしまい、さすがにまずかったと反省した。僕は即Uターンして自室へと向かう。そんな僕をカミュが追ってきた。
シャツを脱ぐと、すかさず新しいシャツを差し出した。袖を通しながら、父の表情を思い出す。顰めっ面だったな。
「……母上、大丈夫かな。父上も怒ってたと思う?」
「どちらかというと、お母上にショックを与えたことにお怒りだったかと。溺愛されておりますから」
「後でちゃんと理由を話して謝るよ。あと、報告もする」
悪戯であんな格好をしていたわけじゃない。話せばわかってもらえるはず。
――そうだ。リンのことも聞いてもらおう。知ってる人かもしれないよな。
2日間だけだけど、少しは成長できた自負がある。報告するのがとても楽しみだ。
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