そんなに相談女の方が良ければお好きにどうぞ。邪魔な私たちはいなくなりますので

日々埋没。

文字の大きさ
2 / 26

02

しおりを挟む
 結局、演劇は他にもチケットの取れた友人たちと一緒に観覧することにした。
 むろんカナデアにとっては当初の予定とは打って変わったが、それは仕方ない。
 むしろ結果的には同じくミーナにしてやられた傷心者同士、何の気兼ねなく劇を楽しむことができると思っていたからだ。

(あ……)

 しかし現実は非情で、目と鼻の先には嫌でも目に入る二人組が。

「誘ってくれてェありがとうリューグスぅ、あたし今日まですっごい楽しみにしてたんだからぁ」

「いやーははは、ミーナがそんなにも喜んでくれて俺も嬉しいよ。さあ二人っきりのデートを思いっきり楽しもうか」

 おそらくこちらには気づいていないのだろうが、目の前でわざとらしくイチャイチャしている二人組にめっきりとテンションが下がるカナデア。

 考えてみればチケットを取ったのが同時期なのだから、こうして出くわす可能性もあったのだ。

「カナデア……大丈夫?」

 友人の一人がそう気を遣ってくれたので、あえてカナデアも何でもないように振る舞おうとしたところで――急にこちらを振り向いたミーナ。

「あらぁ奇遇ねえ」

 ちっ、と舌打ちをするリューグスとは対称的にぽわぽわと笑うミーナ。
 その笑顔に隠された本性さえ知らなければうっかり見とれてしまいかねないほどだ。

「うふふっ、カナデア達もデートかしらぁ?」

 からかいのつもりなのか、こちらに男の気配がないことを知ってる上でのミーナの発言にますます気を悪くするカナデア一行。

「なぁんてねぇ。貴方たちもぉ、お友達同士で劇を観に来たのでしょう? ――そうだぁ、一緒に行かなぁい? きっと楽しいわよぉ」

「はぁっ!? み、ミーナ、いやそれは。彼女たちも忙しいだろうし無理に誘っても! というより俺がその、だな……」

 言外にその提案は却下だお前らも拒否しろ、と言わんばかりの勢いでリューグスは、ミーナから見えない角度で顔をぶんぶんと横に振っている。

「無理に誘わないでくれて結構よ。二人のデートの邪魔をするつもりもないし、私もみんなとお互いの友誼を深めるために静かに観劇したいもの」

 代わりに空気を読んだカナデアが答えると、リューグスはようやくホッと一安心した様子で息を吐いた。

「あらそぉ? ざぁんねん、なら今度会ったら劇の感想を言い合いっこしましょうねー。じゃあリューグス、先に生きましょーよぅ」

「お、おおっ! そうだ、劇を見るときに庶民はポップコーンとかいう物を食べるそうだ。どうせならそれを買っていこうか」

「えー、なにそれ食べたい食べたぁい♪ ふふっ、楽しみぃ♪」

 あえてカナデアに見せつけるかのように、かつての想い人であるリューグスの腕を取ってわざとらしく胸を当てながら、甘ったるい猫なで声のままそう言って去っていく二人。
 特にミーナは最後まで嵐のような人間だった。

「……私たちも行きましょうか」

 明らかに空気が微妙になっていたが、仕方なくカナデアがそう切り出して劇場に向かう。
 しかしこれではせっかくのワクワクが台無しだ。

 ◆

「ああ、なんだか今一内容を楽しめませんでしたわ」

「ええ本当に! 誰かさんがいちいち悪目立ちするようなことをしていたせいでね」

「ねぇ見まして? その誰かさんを注意なさった殿方のあのご様子を」

「見た見た! なによ、ちょっと可愛く泣いてみせたくらいで簡単に鼻白んで情けない」

 案の定である。
 今は観劇を終えてランチの最中。
 本来ならば劇の感想について楽しくあれこれ花を咲かせるところだったというのに。

 それを例の誰かさん――つまりミーナのせいでただの愚痴大会となっていた。

(……はぁ、あの子のせいで楽しくない)

 その場にいてもいなくても迷惑な存在、それがミーナ。
 だがこの時はまだカナデアは知らない。

 ミーナの更なるやらかしを。
 そしてその結果、彼女がどのような末路を迎えるのかを。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ
ファンタジー
卒業パーティーで、第一王子から婚約破棄を宣言されたカミーユ。王子が選んだのは、カミーユの妹ジョフロアだった。だが、ジョフロアには王子との婚約が許されない秘密があった。

婚約破棄を本当にありがとう

あんど もあ
ファンタジー
ラブラブな婚約者のパトリシアとラルフ。そんなパトリシアに、隣国の王立高等学院に留学しないかとのお誘いが。「私、もうこの国の王立学園を卒業してますよ?」「高等学園にはブライト博士がいるわよ」「行きます!」 当然、ラルフも付いて行くのだが、そこでパトリシアは王太子の婚約者と思われて……。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

王家の賠償金請求

章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。 解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。 そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。 しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。 身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。 『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

わたくしへの文句くらい、ご自分で仰ったら?

碧水 遥
恋愛
「アンディさまを縛りつけるのはやめてください!」  いえ、あちらから頼み込まれた婚約ですけど。  文句くらい、ご自分で仰ればいいのに。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...