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「海ですわっ!」
目の前で水平線上に広がる大海原を眺め、誰からともなく感激の声を上げた。
結局あれからカナデアたちが親を説得し、正式に休学届けを出したのは、それからすぐのことだった。
もちろん休学に際し、ある程度のいきさつは話してある。
名前こそ出さなかったもののミーナのせいだと。
「ああ、潮風が気持ちいいわ……」
今回の発起人でもあるカナデアがほうと息をもらす。
友人の予期せぬ形での婚約破棄による精神保養も兼ね、今回は皆での傷心旅行と称してリゾート地と名高いここ隣国にやってきた。
一般庶民とは違い、令嬢たちが通う学園は色々と融通が利く。
故に突発的な数ヶ月程度の休学もなんなく認めてもらうことができた。
もっともこれらは表向きの理由であり、真の目的は他にある。
そのためしばらくここで時間を潰す必要があり、畢竟ただ黙って無為な毎日を過ごすだけでも問題はない。
――が、どうせなら今は素直にバカンスを楽しむことにしたカナデア御一行である。
「ありがとうカナデアさんに皆さん。おかげでわたくしも少しだけ心が楽になりましたわ。やはり持つべきものは友ですわね」
そう言ってまだぎこちながらも薄い笑顔を浮かべながら、件の友人からそんな感謝の言葉を聞かされては胸が熱くならないわけがない。
婚約破棄の一件からまだ完全に立ち直れたわけではないだろうが、この選択は間違っていなかったとカナデアは思う。
「さあさ、せっかくの機会なのだから堅苦しいことは言いっこなしよ。楽しましょう!」
ことさら努めて明るく言うカナデアの言葉に皆は賛成の意を示す。
建て前はどうであれミーナのいない地で羽を伸ばすこともまた、彼女らには必要だったのだろう。
――さて、カナデアが考案した対ミーナへの対抗策はこうだ。
元々ミーナは一人でいる分にはそう大したことはない。
良くも悪くも空気を読まない性格ではあるが、用がなければ向こうから近づいてこないのでそうして遠巻きにしている分には害はない。
なのに何故彼女がこうもトラブルメーカーになっているのかといえばやはりそれは狙った異性に媚びを売り、ともすれば周囲の人間――この場合は彼女の友人である――をターゲットに近づくための都合の良い引き立て役にするからなのは周知の通り。
淑女であろうとする貴族令嬢たちは普段他者の悪口を叩くことがなく、殿方にも好まれるように乱暴な言動を控えて奥ゆかしくあるから、それを逆手にとってミーナは相談女として先手を打つ。
当然こういった手合いに対する適切な対処の仕方を知らない令嬢たちは後手に回り、あることないことを吹き込まれて悪者にされるのだ。
しかもそれだけのことをやっておきながら抜かりなく周囲の目を気にし、表面上は仲の良い友人として振る舞ってくるからなおのこと質が悪い。
だからこそカナデアはミーナの相談女として話の種にされるくらいなら、いっそのこと物理的に距離を置こうと考えたわけだ。
当然ミーナはこのことすら友人に裏切られたあたし可哀相アピールに利用するのだろうが、騙されやすい令息らに見切りはつけてあるのでいくら自分たちの悪評を流されようとも関係ない。
ただ一つ誤算があるとするならば、当初カナデアは気の置けない友人たちとだけ行動を共にするつもりだった。
それが気がつけば同性だけで一クラスは作れそうになるほどの大所帯となっていた。
どうやら自分が思っていたよりもずっとミーナ被害者の会は拡大しており、今回の噂を聞きつけた他クラスの令嬢もどうせならと付いて来ることとなったのだから恐ろしい。
一体どれほどミーナは令嬢らの恨みを買っているのかと。
目の前で水平線上に広がる大海原を眺め、誰からともなく感激の声を上げた。
結局あれからカナデアたちが親を説得し、正式に休学届けを出したのは、それからすぐのことだった。
もちろん休学に際し、ある程度のいきさつは話してある。
名前こそ出さなかったもののミーナのせいだと。
「ああ、潮風が気持ちいいわ……」
今回の発起人でもあるカナデアがほうと息をもらす。
友人の予期せぬ形での婚約破棄による精神保養も兼ね、今回は皆での傷心旅行と称してリゾート地と名高いここ隣国にやってきた。
一般庶民とは違い、令嬢たちが通う学園は色々と融通が利く。
故に突発的な数ヶ月程度の休学もなんなく認めてもらうことができた。
もっともこれらは表向きの理由であり、真の目的は他にある。
そのためしばらくここで時間を潰す必要があり、畢竟ただ黙って無為な毎日を過ごすだけでも問題はない。
――が、どうせなら今は素直にバカンスを楽しむことにしたカナデア御一行である。
「ありがとうカナデアさんに皆さん。おかげでわたくしも少しだけ心が楽になりましたわ。やはり持つべきものは友ですわね」
そう言ってまだぎこちながらも薄い笑顔を浮かべながら、件の友人からそんな感謝の言葉を聞かされては胸が熱くならないわけがない。
婚約破棄の一件からまだ完全に立ち直れたわけではないだろうが、この選択は間違っていなかったとカナデアは思う。
「さあさ、せっかくの機会なのだから堅苦しいことは言いっこなしよ。楽しましょう!」
ことさら努めて明るく言うカナデアの言葉に皆は賛成の意を示す。
建て前はどうであれミーナのいない地で羽を伸ばすこともまた、彼女らには必要だったのだろう。
――さて、カナデアが考案した対ミーナへの対抗策はこうだ。
元々ミーナは一人でいる分にはそう大したことはない。
良くも悪くも空気を読まない性格ではあるが、用がなければ向こうから近づいてこないのでそうして遠巻きにしている分には害はない。
なのに何故彼女がこうもトラブルメーカーになっているのかといえばやはりそれは狙った異性に媚びを売り、ともすれば周囲の人間――この場合は彼女の友人である――をターゲットに近づくための都合の良い引き立て役にするからなのは周知の通り。
淑女であろうとする貴族令嬢たちは普段他者の悪口を叩くことがなく、殿方にも好まれるように乱暴な言動を控えて奥ゆかしくあるから、それを逆手にとってミーナは相談女として先手を打つ。
当然こういった手合いに対する適切な対処の仕方を知らない令嬢たちは後手に回り、あることないことを吹き込まれて悪者にされるのだ。
しかもそれだけのことをやっておきながら抜かりなく周囲の目を気にし、表面上は仲の良い友人として振る舞ってくるからなおのこと質が悪い。
だからこそカナデアはミーナの相談女として話の種にされるくらいなら、いっそのこと物理的に距離を置こうと考えたわけだ。
当然ミーナはこのことすら友人に裏切られたあたし可哀相アピールに利用するのだろうが、騙されやすい令息らに見切りはつけてあるのでいくら自分たちの悪評を流されようとも関係ない。
ただ一つ誤算があるとするならば、当初カナデアは気の置けない友人たちとだけ行動を共にするつもりだった。
それが気がつけば同性だけで一クラスは作れそうになるほどの大所帯となっていた。
どうやら自分が思っていたよりもずっとミーナ被害者の会は拡大しており、今回の噂を聞きつけた他クラスの令嬢もどうせならと付いて来ることとなったのだから恐ろしい。
一体どれほどミーナは令嬢らの恨みを買っているのかと。
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