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ダンジョン経営の始まり
クリス・ウィルビーとの出会い 1
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「あー・・・何がいけなかったんだろ」
うまくいきそうな展開からの完全なる失敗に落ち込むカイは、肩を落としながらとぼとぼと歩いている。
その向かう先に、当てなどない。
部下達に大見得を切って出てきた以上、何の成果もなく帰る事は出来ない彼は、ダンジョンにも戻れずに村の中を彷徨っていた。
「おっさん・・・おっさん!」
「はぁ~・・・このまま帰る訳にもいかないし、もう街までいってみるか?でも、結構距離あるんだよなぁ・・・」
当て所なく村の中を彷徨っているカイに、物陰から声が掛かる。
しかし落ち込みすぎて気もそぞろな彼はそれに気づこうともせず、ふらふらと前に進むばかりであった。
「おい、おっさん!!無視すんなよ!あんただろ、ダンジョンから逃げてきたって人は!」
「うおっ!?な、なんだ!?」
無視された声に物陰から飛び出してきたのは、まだ子供といってもいい年頃の少年であった。
彼は張り上げた大声にも反応せず、そのまま通り過ぎてしまいそうなカイの肩を掴むと、それを激しく揺すり始める。
その衝撃には流石のカイも目の前の少年を認識し、目を見開いて驚く事となっていた。
「なぁ、あんたなんだろ!?俺は知りたいんだ、ダンジョンの事を!でも、アダムスのおっさんや他の大人共は話してくれないし・・・あんたなら話してくれるよなっ!?」
「ま、まぁ待て!一旦落ち着け!!とりあえず、その手を離すんだ!ちょっと痛いぞ!」
「あぁ・・・悪い」
目の前の少年はカイの身体を激しく揺すりながら、ダンジョンの話をしてくれと訴えかける。
その申し出自体はカイにとっても願ったり適ったりの事であったが、シェイクされる身体に落ち着いて話をするどころの状況ではない。
カイがそれを主張すると、少年もすぐに彼の身体を解放し、ばつの悪そうに謝罪の言葉を述べていた。
(ん?今、視界の端で何か動いたような?気のせいかな・・・まぁちょっと、揺すられ過ぎてぐわんぐわんしてるしな)
カイの視界に一瞬映りこんだ影は、出てきた時と同じように音もなくその姿を消している。
彼はその影を、この気持ち悪さが生み出した目の錯覚だと決め付けて、特に気にしようとはしなかった。
「それで、ダンジョンの話が聞きたいんだっけか。え~っと・・・」
「クリス・ウィルビー、クリスでいいよ。おっさんは?」
「クリス君な。私はパスカル・キルヒマン、商人をやっている」
言葉の詰まったカイに、少年は自らの名前を名乗る。
彼の名を繰り返す事で頭に刻み込んだカイは、適当に偽名を名乗っていた。
お互いに簡単な自己紹介を済ました彼らは、適当な距離を取って向き直る。
よく見れば目の前の少年、クリスは中々整った顔をしており、赤髪の活発そうな見た目をしていた。
「それは知ってるよ。ダンジョンに商品を置き忘れた、おっちょこちょいな商人だろ?スコットの店で話してるのを聞いたよ」
「まぁ、その通りだが・・・ん?何でそれを知っているんだ?外にまで聞こえるほど、大声で話してはいなかったと思うが・・・」
カイの自己紹介に、クリスはそんな事始めから知っていると鼻で笑う。
彼の小馬鹿にしたような物言いも、子供らしさと思えば受け入れる事もできる。
しかし彼が口走った事実は看過できない、それは彼が知る筈もない事実だからだ。
先ほどの失敗で心を弱めているカイは、また何かやらかしてしまったのではないかと、焦りと共に彼に問い掛けていた。
「店の裏で仕込みを手伝ってたんだよ」
「ふむ、そうだったのか」
しかし返ってきたのは、あっけないほどに当たり前の事実であった。
確かに良く見れば、目の前の少年の身体には皮むきの際に着いたのであろう野菜の屑が付着している。
(さて皮むき少年が、どうしてダンジョンの事を知りたがる?単純に子供らしい好奇心か?それを満足させてやってもな。いや、こういう子供を育てる事で数年後には・・・幾らなんでも気が長すぎる、却下だなこれは)
目の前の少年がダンジョンについて知りたがる理由を考察して、勝手に落胆しているカイは、すでに期待していないという瞳を彼へと向け始める。
カイにとって目の前の少年は、もはや有益な存在ではなくなりつつあった。
そのため会話を続けるテンションは低く、扱いもぞんざいなものへと変化していく。
うまくいきそうな展開からの完全なる失敗に落ち込むカイは、肩を落としながらとぼとぼと歩いている。
その向かう先に、当てなどない。
部下達に大見得を切って出てきた以上、何の成果もなく帰る事は出来ない彼は、ダンジョンにも戻れずに村の中を彷徨っていた。
「おっさん・・・おっさん!」
「はぁ~・・・このまま帰る訳にもいかないし、もう街までいってみるか?でも、結構距離あるんだよなぁ・・・」
当て所なく村の中を彷徨っているカイに、物陰から声が掛かる。
しかし落ち込みすぎて気もそぞろな彼はそれに気づこうともせず、ふらふらと前に進むばかりであった。
「おい、おっさん!!無視すんなよ!あんただろ、ダンジョンから逃げてきたって人は!」
「うおっ!?な、なんだ!?」
無視された声に物陰から飛び出してきたのは、まだ子供といってもいい年頃の少年であった。
彼は張り上げた大声にも反応せず、そのまま通り過ぎてしまいそうなカイの肩を掴むと、それを激しく揺すり始める。
その衝撃には流石のカイも目の前の少年を認識し、目を見開いて驚く事となっていた。
「なぁ、あんたなんだろ!?俺は知りたいんだ、ダンジョンの事を!でも、アダムスのおっさんや他の大人共は話してくれないし・・・あんたなら話してくれるよなっ!?」
「ま、まぁ待て!一旦落ち着け!!とりあえず、その手を離すんだ!ちょっと痛いぞ!」
「あぁ・・・悪い」
目の前の少年はカイの身体を激しく揺すりながら、ダンジョンの話をしてくれと訴えかける。
その申し出自体はカイにとっても願ったり適ったりの事であったが、シェイクされる身体に落ち着いて話をするどころの状況ではない。
カイがそれを主張すると、少年もすぐに彼の身体を解放し、ばつの悪そうに謝罪の言葉を述べていた。
(ん?今、視界の端で何か動いたような?気のせいかな・・・まぁちょっと、揺すられ過ぎてぐわんぐわんしてるしな)
カイの視界に一瞬映りこんだ影は、出てきた時と同じように音もなくその姿を消している。
彼はその影を、この気持ち悪さが生み出した目の錯覚だと決め付けて、特に気にしようとはしなかった。
「それで、ダンジョンの話が聞きたいんだっけか。え~っと・・・」
「クリス・ウィルビー、クリスでいいよ。おっさんは?」
「クリス君な。私はパスカル・キルヒマン、商人をやっている」
言葉の詰まったカイに、少年は自らの名前を名乗る。
彼の名を繰り返す事で頭に刻み込んだカイは、適当に偽名を名乗っていた。
お互いに簡単な自己紹介を済ました彼らは、適当な距離を取って向き直る。
よく見れば目の前の少年、クリスは中々整った顔をしており、赤髪の活発そうな見た目をしていた。
「それは知ってるよ。ダンジョンに商品を置き忘れた、おっちょこちょいな商人だろ?スコットの店で話してるのを聞いたよ」
「まぁ、その通りだが・・・ん?何でそれを知っているんだ?外にまで聞こえるほど、大声で話してはいなかったと思うが・・・」
カイの自己紹介に、クリスはそんな事始めから知っていると鼻で笑う。
彼の小馬鹿にしたような物言いも、子供らしさと思えば受け入れる事もできる。
しかし彼が口走った事実は看過できない、それは彼が知る筈もない事実だからだ。
先ほどの失敗で心を弱めているカイは、また何かやらかしてしまったのではないかと、焦りと共に彼に問い掛けていた。
「店の裏で仕込みを手伝ってたんだよ」
「ふむ、そうだったのか」
しかし返ってきたのは、あっけないほどに当たり前の事実であった。
確かに良く見れば、目の前の少年の身体には皮むきの際に着いたのであろう野菜の屑が付着している。
(さて皮むき少年が、どうしてダンジョンの事を知りたがる?単純に子供らしい好奇心か?それを満足させてやってもな。いや、こういう子供を育てる事で数年後には・・・幾らなんでも気が長すぎる、却下だなこれは)
目の前の少年がダンジョンについて知りたがる理由を考察して、勝手に落胆しているカイは、すでに期待していないという瞳を彼へと向け始める。
カイにとって目の前の少年は、もはや有益な存在ではなくなりつつあった。
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