ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

死者ゼロ達成に向かって 1

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「―――さい、―――――さい、――様」

 どこかから聞こえてくる目覚めよと呼ぶ声にも、この目蓋は重たく開こうとはしない。
 しかしそれも、この肩を優しく揺すられるまでの話しだ。
 その冷たい感触はきっと、体温よりも温かい。
 そんな温かさに触れてしまえば、いつまでも眠っている訳にはいかなかった。

「・・・んん?あぁ、眠ってしまっていたのか」
「お休みの所、申し訳ありません」

 ヴェロニカの呼び掛けにようやくその重い目蓋を上げたカイは、うたた寝によってぼんやりとした意識を振り払おうと、軽く頭を揺すっている。
 彼の目の前には主の睡眠を邪魔してしまった事に、申し訳なさそうに頭を下げているヴェロニカの姿があった。

「別に構わない。それでヴェロニカ、何か用があったのか?」 
「はい、ご報告差し上げたい事が少々。実は先ほどエリアマネージャーのレクスから報告があったのですが・・・」

 部下達が各々必死に働いているにもかかわらず、一人のんびりとうたた寝をしていた罪悪感からか、カイは寝覚めの陰鬱な気分にもヴェロニカの事を気遣う言葉を掛けていた。
 カイのその言葉に安堵したように表情を緩めたヴェロニカは、彼をわざわざ目覚めさせた理由について述べる。
 それは何て事のない報告のようであったが、カイにはその内容にひとつ気になる事を見つけていた。

「レクス?レクスというと、あのゴブリンの事か?」
「えぇ、以前カイ様がご対面なされた、あのゴブリンのレクスでございます」
「そうかそうか!いや、中々頭の良さそうな奴だと思っていたが、そんな事になっているとはな。確かエリアマネージャーは、まだ一人しか任命されていない筈だったな?」
「はい、その通りでございます」

 以前対面したゴブリンの内、カイが姿を盗んだのはニックの方だった。
 しかしその時隣にいた、頭の良さそうなゴブリンの事はちゃんと憶えている。
 そのゴブリンが、このダンジョンで初めてのエリアマネージャーに任命されたと聞き、カイは何ともいえない喜びを感じていた。

「最近、初めてのエリアマネージャーが任命されたとは聞いていたが・・・それがあのゴブリンだったとはな」

 ダンジョン運営のほとんどの部分をヴェロニカに任せているカイは、大雑把な方針にしか口を出していないのが実情であった。
 そのためそれぞれの部屋を管理するルームマネージャーの任命や、その上の役職であるエリアマネージャーの任命などは全て彼女に任せていた。
 そんな状態のため、あの時のゴブリンがエリアマネージャーになっていたなど、カイには初耳であった。

「彼は非常に優秀でございます。こちらの意図をよく理解し、小まめな報告も欠かしません。それに同僚のゴブリンの面倒も、よく見ているようです」
「そうかそうか!いやなに、初めて会った時から優秀な奴だと思っていたのだよ!!がっはっはっは!!」

 レクスの優秀さを褒め称えるヴェロニカの言葉に、カイは機嫌を良くすると顔を上に傾けては笑い声を上げていた。
 彼を抜擢したのはヴェロニカであるのだから、カイは別に何をした訳でもないのだが、彼は何故かレクスは自分が育てた的な感情を抱いているようだった。
 そしてそれを止める者もいない。
 それ所か実際にレクスを抜擢したヴェロニカが、率先してカイへと拍手を送り、その手柄だと褒め称えているのだから。

「そうだ、あいつの相棒のニックはどうしてる?あれも中々、気骨のある男だっただろう?」
「彼も薬草採取での活躍によってルームマネージャーに任命したのですが、その・・・少々好戦的過ぎるといいますか、負傷する事が多く・・・」
「あぁ、うん。まぁ、そんな奴だったな」

 カイとしては対面しただけのレクスよりも、直接姿を盗んだニックの方が思い入れが深い。
 レクスの活躍を耳にして調子に乗ったカイは、ついでに彼の活躍ぶりもヴェロニカへと尋ねるが、彼女はその言葉に言い辛そうに言葉を濁してしまっていた。
 レクスと違い好戦的で感情で動くタイプの彼からすれば、冒険者が危険な目に遭わないように魔物達を管理する仕事など柄に合わないのだろう。
 ヴェロニカは言葉を濁して誤魔化しているが、彼が役に立っているどころか足を引っ張っているのは、その口ぶりからも明らかであった。

「それで、何の話だったか?あぁ、報告があるのだったな」

 期待していたのとは違ったヴェロニカの言葉に、どこか気まずい空気が漂っている。
 それを誤魔化すために元の話題に戻ろうとしたカイは、ヴェロニカに報告を促していた。

「はい、そのレクスからの報告なのですが。彼が管理するエリアを突破した冒険者がいるようです」
「何だと!?」

 カイから報告を促されたヴェロニカは、ようやくその本題を彼へと告げる。
 その内容に、カイは思わず驚きの声を上げてしまっていた。

「・・・ん?確かエリアマネージャーが任命されたのは、最初のフロアではなかったか?それならば大した問題では・・・」
「はい。レクスが担当しているエリアは、次のフロアへと続く部屋の手前の領域ですね」
「それなら問題ないのではないか?何故そんな事をわざわざ報告してきたんだ?」

 レクスがエリアマネージャーに任命された事を知らなかったカイも、それが任されたエリアが最初のフロアであった事は憶えていた。
 現在のダンジョンは三つのフロアで構成されており、最初のフロアはクリス達が訪れた時とそれほど変更のない、駆け出し向けのフロアであった。
 そのためそこを突破されたとしても問題はなく、カイは何故そんな事をヴェロニカが報告してきたのかと疑問に感じていた。
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