ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

死者ゼロ達成に向かって 2

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「それがレクスが言うには、その突破した冒険者というのが中々有望そうという話でして・・・」
「ほぅ・・・それは気になるな。そこを突破したのなら、今頃は最後の部屋辺りか。どれ、見てみるか」

 自らが誇る、あのレクスが有望と認めたのならば相当なものなのだろうと、カイは早速その姿を一目見ようとモニターを操り始める。
 カイが出現させたモニターに映る映像を見ようと、隣の席へと腰を下ろしたヴェロニカは、僅かにそちらへと身体を傾かせていた。

「ふむ、確かに中々有望そうだが・・・二人組みの冒険者なのか?いや、よく見るともう一人いるな。彼だけは随分と手練れそうに見えるが・・・あぁ、なるほど二人は彼の娘なのか」
「報告だと、そう見ているようです」

 最初のフロアの最後の部屋という事もあり、その部屋にはそれなりの強敵を配置している。
 それらと報告にあった冒険者との戦いを眺めているカイは、その戦いぶりにレクスの評に納得を示していた。
 モニターに主に映っているのは魔物と戦っている二人の少女であったが、よく見れば少し離れた所から彼女達を見守っている壮年の男性もチラチラと映り込んでいた。
 明らかに戦っている二人よりも格段に実力がありそうな男が、何故戦いに参加しないのかと疑問を抱いたカイも、その男の眼差しを見れば理解出来る事もある。
 その二人を見守るような視線に、カイは彼が二人の父親なのだと言い当てていた。

「それで・・・他にも何かあるんだろう?これだけの事で、お前がわざわざ報告してくるとは思えない」
「ふふふっ、その通りでございますカイ様。実は彼女達のために、次のフロアの構成を少し変更したいのです」
「次のフロアの?それは・・・どうしてだ?」

 次のフロアは、最初の部屋から三つに道が分かれる構成となっており、それは左から初心者向け、中級者向け、上級者向けルートという形に分かれていた。
 それは最初の部屋から、それぞれの部屋に配置された魔物が良く見えるようにする事で、訪れる冒険者に自分にあったレベルを選択させる事を狙った仕組みであった。

「それが・・・彼女達のうち一人が勝気な性格らしく、自分達のレベルに見合わないルートを選んでしまうかもと」
「なるほど。それで彼女達に適正なレベル以外のルートの魔物を、もっと分かりやすく強そうなものに変えたいのだな。別にいいんじゃないか?彼女達に行かせたいのは、初心者向けのルートだろう?」

 リディ達の戦いを影から観察していたレクスは、その性格の特徴も良く掴んでいた。
 そのためそのままいけば、彼女達が危険なルートを選択してしまうかもしれない可能性に気づき、それをヴェロニカへと報告していたのだった。
 彼女からその懸念を聞いたカイは、分岐するルートの最初の魔物達の姿を思い浮かべる。
 上級者向けルートの魔物は流石に間違いようがないとしても、初心者向けと中級者向けはそれぞれゴブリンとオークの一隊に任せていた。
 それらの実力には大きな差があるが、ここまでの行程で過剰な自信を培った冒険者からすれば、その差を軽んじてしまう事もあるかもしれないものであった。

「はい、仰る通りでございます。それではルートの最後の魔物を、最初の部屋へと配置し直します。これならば、間違ってもそちらを選んでしまう事もなくなるでしょう」
「ふむ、悪くないんじゃないか?」

 ルートの最後の魔物は、それぞれのルートのボスともなっている魔物だ。
 その実力は折り紙つきであり、迫力も十分である。
 それならば間違っても彼女達がそちらを選んでしまう事はないだろうと、カイは納得を返していた。

「それより、レクスはそんな所まで見ているのか。噂に違わぬ優秀さだな」

 ヴェロニカに任せた変更は、それ自体は大したものではない。
 しかしそんな細かい所まで観察し、それを的確に報告してきたレクスの優秀さに、カイは舌を巻いていた。

「えぇ。ゆくゆくはフロアマネージャーを任せても、よろしいかもしれません」
「それには、私も賛成だが・・・まぁ、それは追々だな。流石にフロアマネージャーともなると、権限が大きくなり過ぎる。もう少し確かな信頼関係を築かなければ、な」 

 階層の全体を任せる、フロアマネージャーの権限は絶大だ。
 一つの階層を丸ごとその支配下に置けばその戦力は少なくなく、またそれだけ大きな権力を握れば派閥というものも形成してくるだろう。
 そういった事態を恐れるカイは、レクスの実力を認めながらも、そのこれ以上の出世には慎重な態度をみせていた。

「そういえば、そんな変更をしてしまって大丈夫なのか?一度了承してしまってから、悪いんだが。それでは他のルートを選ぶ冒険者が、いなくなってしまわないか?」

 その変更によって、リディ達が間違って中級者用のルートに入ってしまう事はなくなるだろう。
 しかし本来中級者用のルートが適正なレベルの冒険者達も、今の構成ではそれを選らばなくなってしまうのではないかと、カイは懸念を口にしていた。

「それは、その・・・問題ないかと」
「うぅん?何故だ?実際、それぞれのルートの最後の魔物は強敵だろう?それではせっかくの選択肢が台無しではないのか?」
「その、実はですねカイ様・・・元々、他のルートを選ぶ冒険者がほとんどいないのです。ですので、そのような変更をしても問題にならないかと」
「あぁ、そうなのか。それなら・・・まぁ、問題ないかもな」

 冒険者の友という呼び名は、このダンジョンの易しさを示唆している。
 その上このダンジョンを最初に攻略したのは、年端もいかない子供達であるという事実もあり、このダンジョンにはまだ駆け出しの冒険者が多く集まってきていた。
 勿論このダンジョンで手に入るアイテムの美味しさに惹かれて集まってきた冒険者もおり、その中には腕の立つ者いたが、そうした者はあまり危険な道を選ぶ事を良しとしなかった。
 そのためその分岐点で初心者用のルート以外を選ぶ者は皆無であり、せっかく用意した選択肢もほとんど無為なものとなってしまっていたのだった。
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