ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
189 / 308
勇者がダンジョンにやってくる!

死者ゼロ達成に向かって 3

しおりを挟む
「うむむ・・・まぁそれについては、また今度考えるとして。ヴェロニカ、魔力の残量はどうだ?問題なさそうか?」
「は、はい!それがですね・・・やはりギリギリの所で推移しています」

 クリス達が訪れた時点で枯渇寸前であったダンジョンの魔力量は、訪れる冒険者が増えた現在の状況に回復する訳もなく、ギリギリの状態で推移していた。
 以前より明らかに魔力を消費する場面が増えたダンジョンにも、どうにか経営を成り立たせているのはヴェロニカ達の努力の賜物だろう。
 しかしそんな頑張りにあっても、主人の期待に応えられていないと、彼女はどこか悔しそうに顔を俯かせていた。

「いやヴェロニカ、お前が気にするような事ではない。お前は十分良くやってくれている」
「も、勿体無きお言葉でございます!このヴェロニカ、より一層の働きをしてご覧に入れます」

 十分な働きをしているにもかかわらず、自らの不甲斐なさを嘆く部下の姿に、カイはその働きを認める声を掛けていた。
 ヴェロニカはその言葉に感動したように瞳を潤ませ、背筋を正してはより一層の働きを誓っていたが、それはカイの意図とは少しずれたものであった。

「あ、あぁ・・・頼んだぞ。しかしやはり、予想以上に魔法を扱える者が少ないのが響いたか?」
「確かに、そうした面もあります。彼らが齎す魔力は、予想を大きく下回っていますので・・・」

 魔法使いが魔法を行使すると、それによって放出された魔力はマナへと変わってその空間に残留する。
 ダンジョンの外からやってきた魔法使いがその中で魔法を使えば、当然その魔力はダンジョンによって吸収される事になる。
 冒険者が多く訪れる事によって、それによる魔力の供給が増えると考えていたカイは、思った以上の魔法使いの少なさに、当てが外れてしまっていた。

「それも考えていかないとな・・・ポーションの量を、もっと絞った方がいいか?」
「そうですね。採取した薬草を素材に使う事で、大分魔力の消費を抑えられていますが、それでもやはり魔力を使いますので・・・」

 慢性的な魔力不足に、カイは冒険者達に供給しているポーションの量を絞る事も視野に入れる。
 セッキが連れてきた魔物達は、その一部にダンジョン管理の仕事を任せているが、ほとんどは以前と変わらず薬草採集に従事させていた。
 それにより治癒のポーションなどのポーションを量産していたのだが、薬草を素材として使ったからといって、その魔力の消費がゼロになる訳でもない。
 確かにそのポーションは冒険者を惹きつける上で重要な役割を担っていたが、こうも魔力不足の状態が続いてしまえば、いつまでもそのままではいられなかった。

「そうか、ならばやはり少し絞ろう」
「はっ、畏まりました」

 訪れる冒険者の数に、このダンジョンの評判はもう十分に広まっているだろう。
 それならば少しぐらい供給するポーションの数を絞っても問題にはならないだろう、そう考えてカイはそれを絞る指示を下す。

「ふむ、こんな所か。他に報告はないか、ヴェロニカ?」
「いえ、ございません」
「そうか。では、先ほどの事を頼む」
「ははっ、お任せください」

 一通り考えられる問題について話し合ったカイは、他に何か話しておく事ははないかとヴェロニカに尋ねていた。
 その言葉に静かに首を横に振ったヴェロニカの姿に、カイは先ほど出した指示の実行を求める。
 カイの言葉に頭を下げて了承を告げたヴェロニカは、足早にダンジョンコアの方へと向かっていく。

「さて、フィアナ達は何を―――」

 カイがヴェロニカと話している間にも、フィアナはダミアンを抱えたままなにやら作業をしているようだった。
 ヴェロニカからだけでなく、彼女達の意見も聞こうとしたカイはしかし、どこかから聞こえてきた声によって、そちらへと注意を割かざるえなくなってしまっていた。

『旦那ぁ~、旦那ぁ~聞いてくれよぉ!』
「この声は、セッキか?どうした、何かあったのか?」

 カイが手元に出していたモニターから聞こえてきたのは、まるで泣いているかのようなセッキの声であった。
 そんなセッキの声にも、カイは焦った様子を見せない。
 それは彼がそんな声を上げる理由を、カイがすでに知っていたからだろう。

『暇で暇でしょうがねぇよぉ、旦那ぁ~!これなら薬草採集に行ってる連中に、ついて行った方がまだましだぁ!今からでもそっちに行かせてくれよぉ!』
「・・・悪いが、それは出来ない」

 訪れる冒険者が増えたという事は、このダンジョンを最後まで踏破する実力を持つ者が、いつ現れてもおかしくはないという事を意味していた。
 それを考えればこの最奥の間を守る、このダンジョンのボスともいえる存在には、強力な力を持つ者を当てる必要があった。
 このダンジョンにおいて最強の存在、それはつまりセッキの事である。
 それは勿論、カイの認識の中での話であったが、自らの主人にそう言われればセッキも悪い気はしない。

『何でだ!何で何だよ旦那ぁ!?もう一ヶ月近くも誰も来やしない!こんな所守ってる必要もないだろぉ!!』

 その結果が、この有様である。
 先ほども言ったとおり、このダンジョンに訪れるのは駆け出しの冒険者が主であった。
 そんな冒険者の多くは最初のフロアを突破するのがやっとであり、二つ目のフロアを攻略する者など皆無に等しい。
 その上、最奥の間が存在するこのフロアに配置された魔物は、臆病なカイの心情を配慮してか、かなり強力な者を揃えている。
 そんな者を突破してセッキの前まで現れる冒険者などいる訳もなく、セッキはこの一ヶ月、ただただ暇を持て余していただけであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...