ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

死者ゼロ達成に向かって 4

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「それでもだ。ダンジョンに訪れる冒険者は多い、その中からいつ強大な力を持った者が現れるとも限らないんだ。お前にはそこを守ってもらう必要がある」

 ダンジョンに訪れる冒険者の数は、この一ヶ月で飛躍的に増えている。
 確かにそのほとんどは、まだ駆け出しといってもいいような実力の者達であり、脅威とはなりえない。
 しかし、その全てがそうであるとは限らなかった。
 例えば先ほど見かけた姉妹の父親も、かなりの実力者のように見受けられた。
 彼は駆け出しの冒険者である娘を見守る事が主であり、本気でこのダンジョンを攻略する気はなさそうであったが、彼がその気になればかなりの所まで進められてしまうだろう。
 まだ駆け出しの冒険者が中心の今のダンジョンですら、そうしたものが時折現れるのだ、いつそれ以上の化け物がやってくるかも分からない。
 そうした状況に怯えるカイからすれば、セッキをそこから動かす事など、ありえない話であった。

「大体、お前に他の仕事が出来るのか?ダンジョンの操作はお前には難しいんだろう?それに薬草採取の監視だって失敗したじゃないか」
『うっ!?で、でもよぉ・・・頼むよ、旦那ぁ。暇で暇で仕方がねぇんだよぉ!』

 今の仕事が暇だと訴えるセッキはしかし、他に適した仕事がないのも事実であった。
 その戦闘においては絶大な威力を発揮する大柄な身体も、ダンジョンの管理を行う上では邪魔にしかならない。
 その上彼のダンジョンの操作を憶える速度は、ダミアンのそれと大差がなく、戦力としては数得られないものであった。
 セッキが望んだ薬草採集の監視も、以前に問題を起こした事を考えると、あまり彼には任せたいとは思えなかった。

「気持ちは分かるが・・・セッキ、今はそこの仕事を頼む」
『ま、待ってくれ旦那!頼むから―――』

 セッキの悲痛な叫びを聞いて残念そうに眉を下げたカイは、モニターへと指を伸ばすと彼との通話を打ち切ろうとする。
 カイの態度のその兆候を感じ取ったのか、セッキはどうにか彼を思い留まらせようと必死に縋りつくか、それはその指の動きを止められるほどのものではない。

「さて、と・・・フィアナ、何か問題は起きていないか?」

 モニターを操作する事によって、セッキが待機している部屋から通話が来ないように設定したカイは、一度椅子へと座り直して気持ちを切り替えている。
 彼はそうして落ち着くと、元々声を掛けようとしていたフィアナになにか問題はないかと呼び掛けていた。

「もんだいー?えっとねー・・・ないよー!」

 カイからの声に、あちこちに浮かんでいるモニターを指差しては何事かを行っていたフィアナは振り返る。
 彼から尋ねられた内容を考えては首を捻っていた彼女はいつか、考える事を放棄したような明るい笑顔で、問題などないと断言していた。

「フィアナ、それでは駄目じゃろう?」
「うぅん?何で?」 

 しかしその言葉は、彼女の背中へとしがみついているダミアンによって苦言を呈されてしまう。
 その格好は、フィアナの作業を邪魔しないためだろうか。
 自らの肩へと顔を乗っけているダミアンへと視線を向けたフィアナは、彼の発言の意味が分からないと、先ほどとは違った角度で首を傾げてしまっていた。

「仕方がないのぅ・・・ほれ、こっちに」
「なになにー?ふひっ、ふひひっ!くすぐったいよー」

 フィアナの反応に嬉しそうに溜め息を吐いたダミアンは、彼女にこちらへと耳を寄せるように顎をしゃくっている。
 その仕草に無邪気な様子で耳を寄せたフィアナは、耳元で何事か囁くダミアンの声に、くすぐったそうに身を捩じらせていた。

「えっとねー・・・小さなもんだい?は色々あったけど、おじじと相談して解決したよー!」

 ダミアンの耳打ちを受けて、その言葉を喋りだしたフィアナは、自らの話す言葉にも首を傾げていたが、何とかその事実を伝える事には成功していた。
 彼女の話では、カイが眠っていた間にも大した問題は起こっていないらしい。
 その話の真偽をヴェロニカに視線を送って確かめると、彼女は静かに頷いて間違いないと肯定していた。

「そうか、良く頑張ったな。偉いぞ、フィアナ」
「えへへー、凄いでしょ!えっへん!」
「こ、これ!フィアナ!あんまり反り返っては、ひぃぃ!?」

 フィアナの頑張りを褒め称えるカイの言葉に、彼女は嬉しそうに胸をそり返させる。
 その姿勢は彼女の背中へとしがみついているダミアンの立場を危うくさせ、彼は必死にもがいてはその場所を維持しようと頑張っていた。

「ヴェロニカ、まだ死者は出ていないな?」
「はい。今の所、死者は確認されておりません」

 ダミアンがフィアナの背中から滑り落ちるのを視線の端で捉えたカイは、ヴェロニカへと今のダンジョンの状況について尋ねている。
 カイの声になにやら手元をいじってはモニターへとデータを表示させたヴェロニカは、それに一目やると彼の質問に僅かな喜びをみせて答えていた。

「そうか、それは結構。時間は・・・まだ日没までは、それなりにあるな」

 ヴェロニカの答えに満足したように頷いたカイは、手元のモニターへと目をやって現在の時刻を確認している。
 そこには日没には、まだ遠い時刻が表示されていた。
 冒険者がダンジョンに潜る際には、往々にして日数を掛けて挑戦する場合が多い。
 しかしそれは、多くのダンジョンが人里離れた場所にあるからであった。
 このダンジョンのように人里が近くにある場合は、冒険者も好き好んでダンジョン内で一夜を明かそうとはせずに、大体日没と共に引き上げていくのが通例であった。
 そのためカイ達も、日没後に冒険者達が引き上げた後は、ダンジョンを閉めて休憩するようにしていたのだった。

「よし。それでは皆、もう一踏ん張りといこう!今日こそ死者ゼロを達成するぞ!」

 ダンジョンを閉めるまでは、まだ大分時間がある。
 カイはそれを踏まえて今一度、皆の気を引き締める声を上げていた。

「はい!このヴェロニカ、より一層の働きをしてご覧に入れます」
「フィアナもフィアナもー!!」 
『旦那、聞いてくれ!頼むから―――』

 カイの呼び掛けに、ヴェロニカは小さく拳を握って気合を現している。
 彼女のそんな仕草に、フィアナは自分も忘れないでと両手を振るってアピールをしていた。
 彼女達の明るい声に紛れて、なにやら野太い男の声が聞こえてきたような気がしたが、それはすぐに聞こえなくなってしまっていた。

「やれやれ・・・」

 セッキは隣の部屋にでも移動して、通話してきたのだろうか。
 彼がまた話し掛けてこないように、三つ目のフロアとの通話を制限する設定を行ったカイは、ゆっくりと自らの席につく。
 彼の視線の先では、忙しそうに働いている部下の姿があった。
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