ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

変化を求める部下達にカイ・リンデンバウムは戸惑う 1

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 モニターに映る冒険者の姿に、最奥の間に集まった者達の視線が集まっている。
 そこに移されているのはダンジョンの入り口の光景らしく、夕暮れの茜色の日差しが僅かに差し込んできていた。
 初めてダンジョンに訪れたのであろう、くたくたといった様子のその若い冒険者達は、重い足取りで最後の坂を上っている。
 カイ達はそれが終わるのを、今か今かと待ち焦がれていた。

「・・・外に出たか?他に残っている冒険者はいないな?」
「はい、間違いありません。あの者達が最後の筈です」

 ダンジョンから出て行った冒険者の姿に、静かに唾を飲み込んだカイは、ヴェロニカに他に残っている冒険者はいないかと尋ねていた。
 彼の言葉にそれはもはや何度も確認したと、ヴェロニカは自信に満ちた態度でそれに答える。
 カイは彼女のその言葉にも、自らで確認するように一度モニターを見回していたが、そこにも冒険者の姿は見つけられはしない。

「よし!それでは門番の魔物を配置してくれ、今日のダンジョンはこれでお終いだ!」
「畏まりました!」

 ダンジョンから人気がなくなった事をしっかりと確認したカイは、冒険者達が最初に訪れる部屋に配置される魔物の変更をヴェロニカに指示していた。
 それは通常営業が終わったダンジョンに、間違っても人が迷い込んでしまわないようにするための措置だ。
 そこに配置されるのは、このダンジョンでも最強格のケルベロスである。
 ケルベロスとその近縁種であるオルトロスには、フォレストやデザートなど環境に即した形容詞がつく種も存在するが、それらは代を重ねては血を薄めてしまい、力を失ってしまった者達だ。
 そのためそれらの魔物は何も余計な名前がつかない、純粋種であるものが最も強大な力を誇っている。
 ここに配置されたケルベロスは、その純粋種である。
 そのあからさまに凶暴そうな容貌と、圧倒的な強者のオーラを感じ取れば、間違ってもこの状態のダンジョンに立ち入ろうとはしないだろう。

「皆、良くやってくれたな!このダンジョン始まって以来初めての死者ゼロを達成出来たのは、皆の頑張りのおかげだ!」

 手元を操作したヴェロニカが、ダンジョンを入ってすぐの部屋にケルベロスを配置したのを確認したカイは、両手を広げて喜びを顕にしていた。
 それもその筈であろう、彼がこの一ヶ月目標にしていた冒険者の死者ゼロを、この時達成する事が出来たのだから。

「カイ様、おめでとうございます!」
「いやいや、ヴェロニカ。この偉業の達成は、君の努力あってこそじゃないか。こちらこそ、ありがとうと言わなくてはな」
「そんな、滅相もございません!私の働きなど・・・」

 カイの喜ぶ姿に、ヴェロニカも本当に嬉しそうにお祝いの言葉を上げては、その両手で拍手を鳴らしていた。
 ヴェロニカのその振る舞いにカイはそちらへと歩み寄ると、今回の事は彼女のおかげだと労いの言葉を掛ける。
 その言葉にヴェロニカは僅かに頬を染めると、伏せた瞳をカイの方へと向けていた。

「カイー!フィアナはフィアナはー!フィアナも頑張ったよー!!」
「はははっ、そうだな。良く頑張ったなフィアナ、偉いぞ」
「えへへー、もっと撫でて撫でて!」

 ヴェロニカの仕事ぶりを褒め称えるカイの姿に、フィアナが彼へと飛び掛りながら自分も頑張ったと猛烈にアピールしている。
 彼女のその素直な振る舞いには、思わずカイも頬を緩めてしまう。
 カイの手の平に頭を押し付けては、気持ち良さそうに声を漏らしているフィアナの姿に、この最奥の間には穏やかな空気が流れていた。

「・・・ちっ、小娘が」

 その二人の姿を目にしては、小さく舌打ちを漏らすヴェロニカ以外は。
 ヴェロニカへと歩み寄っていたカイの手は、そのままであれば彼女の肩の辺りを抱いていたかもしれない。
 それを密かに待ち望んでいた彼女からすれば、横からそれを掻っ攫っていったフィアナに、恨み言の一つも言いたくなるだろう。

「そ、それぐらいでいいんじゃないかのぅフィアナよ。カイ様もお疲れのご様子、あまりお手を煩わせては・・・」

 ヴェロニカが漏らした舌打ちが聞こえなくとも、その不穏な空気は感じ取る事が出来る。
 彼女の周囲から漏れ出している不穏な空気を感じ取ったダミアンは、慌てて二人を引き離そうと説得を開始する。
 そんな彼の振る舞いに、この場に漂う不穏な空気は僅かながらも和らいだようだった。 

「えぇー!?いーやー!もっと撫でてもらうんだもん、何でそんなこと言うのおじじ!?」
「ダミアン・・・私も別に迷惑ではないぞ?」

 しかしそれはフィアナ本人だけではなく、カイからも拒絶されてしまう。
 まだまだ撫でられたりないと、カイの腕の中から離れようとしないフィアナは、その僅かに尖った牙を剥き出しにしては怒りを顕にしている。
 カイもそんな彼女が可愛くて仕方がないのか、撫でる手を止めようとはせずに、彼女の柔らかい髪の毛の感触を楽しみ続けていた。

「ん、んんっ!カイ様。ダミアンもああ言っておりますし、それぐらいに為されてはいかがでしょうか?」
「そうか?私としてはもう少し―――」

 ダミアンに苦言を呈されても離れようとしない二人に、ヴェロニカは咳払いをして関心を引くと、彼の意見に便乗して二人を引き離そうと試みていた。
 そんな彼女の言葉にもカイは、フィアナの頭を撫でる手を止めようとはしていない。
 しかしそんな彼も、この猛烈な勢いで近づいてくる乱暴な足音の存在は、無視する事は出来なかった。
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