ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

変化を求める部下達にカイ・リンデンバウムは戸惑う 2

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「旦那ぁ!今日はもうあの連中は来ないんだろう!!なら、もういいよな!」
「あぁ、そうだな。別に構わないぞ。しかし・・・やはりお前が入ると、ここが狭く感じるな」

 憤怒の表情を浮かべてこの部屋へと押し入ってきたのは、先ほどカイにぞんざいな扱いをされたセッキであった。
 かなりの大柄である彼が立ち入ると、この部屋が急に狭くなったようにすら感じられてしまう。
 それが怒りの表情を浮かべ、こちらへと今にも詰め寄ってこようとする強面の男であれば尚更。

「ここが狭いだぁ?そんな事はどうでもいいんだよ!!」
「あ、あぁ・・・そうだな。そ、そうだ!お前には伝えていなかったな。今日、ダンジョンでは死者が出なかったんだ。お前には損な役割をさせてしまったが、これはお前の働きのおかげでもある。感謝するぞ、セッキよ」

 その顔に怒りの表情を浮かべたセッキは、正直言ってかなり恐ろしい。
 そのためカイは彼を何とか宥めようと、必死に感謝の言葉を伝えていた。
 その行動は彼の怯えから出た事であろうが、その腕の中にフィアナを抱える彼を傷つける術などありはしないのだ。
 セッキ自身も苛立ってはいるが、カイを傷つけるつもりなど毛頭もないだろう。
 もしそうであるならば、彼は既にヴェロニカによって殺されているか、ダミアンによって消し炭にされているのだから。

「あぁ?そんな事どうだって・・・いや、それが済んだって事はいよいよだな?」
「ん?一体何の話しだ?私としては、明日からもこれを継続してだな・・・」

 カイの話をどうでもいいと一蹴しようとしたセッキはしかし、その話になにやら感じるものがあったのか、ニヤリ唇を歪めてはなにやら意味ありげな笑みを見せている。
 そんなセッキの振る舞いに何を言っているんだと首を捻っているカイは、明日からも死者ゼロを継続していこうと、周りに呼び掛けようとしていたのだった。
 カイの腕の中では、そんな彼の仕草を真似しては一生懸命首を捻って見せている、フィアナの姿があった。

「で?何からやるんだ、旦那?俺の所にも回してくれよ、ボコボコにしてやっから!」
「セッキ、お前は何を言って―――」

 拳を手の平に打ちつけながら、戦意を昂ぶらせているセッキの姿に、カイは訳が分からないと首を捻る事しか出来ない。
 しかし彼のその言葉の意味を理解出来なかったのは、カイとその腕に抱えられている少女だけのようだった。

「待て待て、落ち着くのじゃセッキよ。まったく、お主は短絡過ぎて困る」
「あぁ?だってよぉ、爺さん。大人しくして、冒険者共を集めるのはもう終りなんだろ?なら片っ端から殺しちまえばいいじゃねぇか」

 その証拠に、カイのぼんやりとした疑問の声へ割り込むように、ダミアンが口を挟んでくる。
 彼の口ぶりは、セッキの話している事を完全に理解している者のそれであった。
 事実セッキも彼の言葉に、当たり前のように会話を成立させている。
 彼らの振る舞いに、何やら除け者にされたような気分を感じているカイであったが、そんな事よりも聞き逃してはならない事があったのではなかっただろうか。

(待て待て待て!冒険者を殺す!?一体セッキは何を言っているんだ!?ダミアンもそれを分かってる感じだし・・・冒険者を集めるのが終りって、寧ろここから始まりなんじゃないか?こっから冒険者達を育てていく、俺の壮大な計画が・・・)

 部下達が彼に分からない話をしていてもそれほど気にはならないが、それが冒険者をその手に掛けるという話ならば、聞き捨てならない。
 カイからすればようやく舞台が整い、これから冒険者達を育成しては、人類を影から助けようとしている所なのだ。
 そんな時に、冒険者を殺されては堪ったものではない。

「ふふふっ、そうよセッキ。そんな短絡な行動では、大した成果も上げられないでしょう?カイ様が自ら設えた舞台よ?その程度の事で、終わる訳がないじゃない?」

 セッキの言動を窘めるヴェロニカの声に、カイは一瞬救世主を見る瞳を彼女へと向けていた。
 しかしそんな彼女が話した内容は、もっと大規模な計画がカイにはあるというものであった。

(えぇー・・・ヴェロニカもそうなの?いや、何か凄い計画があるみたいに話してるけど・・・そんなの全然ないからね。いや、一応冒険者を育成する計画ならあるけど・・・そういうのを求めるんじゃないよなぁ)

 一瞬期待しただけに、落胆もまた大きい。
 明らかにセッキ達と同じ考えを抱いているヴェロニカの言動に、カイは内心のショックを隠せない。
 何より彼らがヴェロニカの言葉に、何故か一様に納得の仕草を見せている事が、彼を余計に追い詰めていた。

「う、うむ・・・そうだな」

 全く心当たりがない計画も、部下達から期待の眼差しを向けられば、否定する訳にもいかない。
 僅かに明後日方へと顔を向けているカイは、何とも歯切れの悪い声でそれを適当に肯定してしまっていた。

「おおっ、やはりそうでございましたか!いやはや、カイ様もお人が悪い。あまりにも冒険者共を肩入れするもので、もしや彼らに味方するつもりなのかと勘繰ってしまう所でありましたぞ」

 カイの適当な頷きに安堵の声を漏らしたダミアンの言葉は、彼の真を突いている。
 冒険者に味方するつもりであるという真意を暴かれそうになってしまったカイは、思わず肩を跳ねさせて動揺してしまっていた。

「そんな訳がないでしょうダミアン、貴方もまだまだね。私は始めからカイ様の思惑を読み取っていたわ。冒険者に優しくするのは彼らを集めるため。そうなのでしょう、カイ様?」
「ふふふっ・・・その通りだよ、ヴェロニカ。まったく君には、何も隠す事は出来ないな」

 動揺を誤魔化すために、ヴェロニカの発言を肯定したカイの言葉は嘘ではない。
 彼は冒険者に優しくしていたのは、彼らを集めるためなのは間違いではないのだから。
 しかし彼はその集めた冒険者を何とか育成して、人類の助けになりたかったのであって、決して彼らを害そうとしていた訳ではない。
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