ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

ダンジョンの魔物達、それぞれの思惑 2

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『落ち着け、ルーカス。奴らに聞かれるぞ』
『聞かれて困るものか!大体奴らに、我らの言葉を解する頭などないわ!』

 ルーカスと呼ばれたオークは、彼を制止しようとする仲間にも、声を抑える事はしない。
 彼は寧ろ、そうした仲間の様子が気に食わないとばかりに一層声を張り上げてみせる。
 そんな彼の振る舞いに、それを止めようとしているオークは、頻りに背後を気にしては振り返っていた。

『それはそうかもしれないが・・・大体お前は、本当にダンジョンの仕事がしたいのか?聞いたところによるとダンジョンの仕事といっても、まともに戦う事も出来ず、人間共の手助けしなければならないという話しだぞ』
『それもゴブリン共の話だろう!マルセロ、お前もそれをまるっきり信じている訳でもあるまい!』
『まぁ、な』

 ルーカスの切望するダンジョンの仕事は、碌なものではないとマルセロと呼ばれたオークは語る。
 しかしそれはルーカスの言うとおり、ゴブリン達から伝え聞いた話に過ぎない。
 小狡いゴブリン達のこと、自分達がその仕事を独占するためにそういった噂を流しているのだろうと、ルーカスは疑っている。
 その考えを、マルセロも否定する事は出来ずにいた。

『噂が真実かどうかなど、一度体験してみなければ分からん!だから再三、我らにもその仕事を振ってくれと頼んでいるというのに・・・何故、我らには一向に宛がわれん!?』
『これも噂なのだが・・・かの御方が、我らに採集の仕事を推しておられるとか。何でも我らは嗅覚に優れているので、この仕事の方が向いていると』

 彼らオークに、カイが薬草採集の仕事を優先させているのは事実であった。
 それは彼が彼らと同じ種族の者達との係わりの中で、その優れた嗅覚を知ったからであったが、それ以上に切実な事情も存在した。
 カイが知っているオークは、その全てが武人肌の人物であったからだ。
 彼らもそうであるとは限らなかったが、そのイメージを考えるとダンジョンの管理の仕事は向かないように思われる。
 何故ならその仕事とは、冒険者を殺してしまわないように気を使い、時に戦わずして逃げる事もあるものであったからだ。

『我らを豚扱いするかっ!!ふん!確かにゴブリン共よりは優れた嗅覚を持つのは事実だが、言うに事欠いてそのような扱いを受けるとは・・・許せん!』
『おい、ルーカス!どこに行くつもりだ!!まさか彼らに反旗を翻すつもりか!!それは無理だと散々話し合っただろう!!』

 カイの自分達に対する扱いを知ったルーカスは、憤懣やるかたないといった様子でもと来た道を戻ろうとしている。
 そんな彼の事をマルセロを始め、周りの仲間達が必死な様子で制止しようとしていた。
 いくら武人肌の人物が多いオークとはいえ、それはこの辺の魔物に対して優位に立てるといったレベル過ぎず、カイの部下達が見せた圧倒的な力に敵う筈もない。
 それを骨身に染みて理解している彼らは、決してそれに対して反旗を翻す訳にはいかなかった。

『ぐっ!分かってる、分かってるが・・・このままでは、俺は―――』

 マルセロの言葉に納得の姿勢をみせたルーカスはしかし、その不満を拭い切れはしない。
 彼は仲間によってその身体を取り押さえられながらも、その場に留まり不満を零そうとしていたが、それもマルセロが何かに気がつくまでであった。

『しっ!後ろの連中が来る。言い争っている所を奴らに見せたくはない、一旦ここを離れるぞ!』
『ちっ、分かったよ』

 後ろから迫り来る足音に気がつき、慌ててルーカスを黙らせたマルセロは、すぐにここから離れようと周りの仲間へと指示を出していた。
 オークの言葉を話している彼らに、後ろからやってきているだろうゴブリン達には、その会話は聞き取れないだろう。
 しかし彼らはオーク達が揉めていたという事実を持って、それを誇張してはカイ達に報告するかもしれない。
 それを恐れるマルセロは一刻も早くここから離れようとし、それにルーカスも不満ながらも納得を示していた。

「なんか揉めてたなぁ・・・なに話してたんだ?」

 去っていくオーク達の姿に、カイは物陰からひょっこり顔を出しては、その後姿を見送っていた。
 結局、彼らがなにやら言い合っている間に、その姿へと変身する事をしなかった彼にはその内容は分からない。
 そのため彼らがカイ自身の事を痛烈に批判していた事も、彼は知る由がなかった。

「おっと、こんな事やってる場合じゃないな。なんかまだ誰かやって来そうだし、今の内にここを離れよう」

 彼らが何を話していたかは少し気になる所であったが、それは今彼が考えるべき事ではない。
 オーク達が立ち去った事で人気がなくなった森に、カイは足早にこの場を立ち去ろうとしていた。

『何故、俺ではなくノルデンの連中ばかりが上に認められるんだ!!』
『ヨ、ヨヘム!声を抑えて、ここでは不味い』

 カイが山肌から森の中へと移動しようとしていると、ダンジョンの隠し通路を通って新たな人影が現れていた。
 それは先ほどのオーク達よりも、一回りは小さな体格をしており、茶褐色の肌を持つゴブリン達であった。

『ふん!ノルデンの所の雑魚共に聞かれたところで構うものか!!所詮、レクスとニックの二人をいなければ烏合の衆よ。あれらはダンジョンの管理で忙しい・・・うぬぬ、レクスの奴め!あの席には俺が座る筈だったものを!!』
『そ、そうかも知れないが!連中に聞かれれば、奴らの耳にも入る!特にレクスの奴は、上からも気に入られてるんだろう!?そうなると、俺達の立場が・・・』

 薬草採集に向かうゴブリンの一団を先導しているヨヘムは、そんな自らの立場に対する不満を喚き散らしている。
 彼からすれば同じゴブリンであり、つい先日まで同じような立場であった筈のレクスやニックが、順調に出世していっているのが羨ましくて仕方がないのだ。
 その不満は理解出来る仲間達も、彼が大声でそれを喚き散らすのは止めようとする。
 それもその筈だろう、レクスやニックはダンジョンの管理に忙しいとはいえ、彼らの部族が全てそのような役職についている訳ではない。
 彼らの後に続いている一団の中にも、ノルデンの部族の者はいるだろう。
 彼らはそんな者達の耳に、ヨヘムの言葉が届いてしまう事を恐れていた。

「ん?なんかまた言い争ってんな・・・ま、俺には関係ないだろ。急ご急ご」

 なにやら言い争う声に、一度はその場に足を止めたカイも、身内の争いならば関係ないとすぐに再び足を急がせ始める。
 彼らもまたゴブリンの言葉を使って会話しており、その内容はカイには窺い知れなかった。
 最もその内容からして、たとえカイがそれを聞き取れたとしても、同じ感想を抱いたであろうが。

『くっ・・・いつか、いつか見返してやる!!』

 足早に立ち去っていくカイの背中に、なにやら叫んでいるヨヘムの声が響いている。
 その意味を理解する事の出来ないカイは、それを気にする事なく走り去っていく。
 後にはまだなにやら揉めている様子の、ゴブリンの一団だけが残されていた。
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