ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

ダンジョンの魔物達、それぞれの思惑 1

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 ダンジョンの入り口から少し離れた山肌に、ある一人の人影の姿があった。
 それは額から脂ぎった汗を流す小太りの男であり、その身なりから商人のように思われた。

「ふー・・・何とか、気付かれずにここまで来れたかな?ヴェロニカ辺りに見つかると、連れ戻されそうだからな。いやぁ、早起きして抜け出してきて良かったな!」

 ダンジョンに所属する者だけが通れる隠し通路を利用してその外にまで出てきた男、カイはうまくいった逃避行にほっと一息を吐いていた。
 彼が利用したのは、薬草を採取する部隊などが主に利用している通路であった。
 ここならばダンジョンの入口からある程度離れているため、そこから出てくる所を人間に目撃される事はないだろう。

「さて、ここからどうすっかなー・・・正直、何も考えてないんだよなぁ。まぁ、あのままあそこにいても絶対押し切られちゃったからなー」

 昨日の部下達の圧力を思い返せば、彼があの場にいても直に押し切れられてしまうのは目に見えている。
 その結果待っているのは、人間達の虐殺だ。
 そんな事は絶対に起こさせたくない彼はしかし、それを止める術を思いつきもせず、とりあえずその場を離れる事で問題を先延ばしにする事しか出来なかった。

「あいつら、ちゃんと言いつけを守ってくれるかなぁ・・・それは信じるしかない、か」

 押し切られそうな圧力にも、部下達が彼の裁可を求めてきたのは間違いない。
 そうであるのならば彼の主としての信望は、まだ有効な筈であった。
 そうであるなら残してきた言付けは守ってくれる筈と、今の彼には信じる事しか出来ない。

「それにしても、ちょっと大袈裟に書きすぎたかなぁ・・・俺を任せろって。でも、そうでも書かないとあいつらを止められないだろうし。う~ん・・・」

 部下達の要望に応える完璧な解決法があるとのたまった書置きにも、彼にそんな考えが思いつく筈もない。
 しかし部下達のあの勢いを考えるに、そうでも書かなければ彼らを止める事は出来なかっただろう。
 そうして行った苦肉の策は、一旦は問題を先送りには出来るだろうが、根本的な解決には繋がる事はない。
 カイはダンジョンの方を振り返っては、不安そうな表情で頭を悩ませている。
 しかしどんなに頭を捻ってみても、彼の頭脳からは閃きが下りてくる事はなかった。

「いかん・・・なーんも思いつかん。大体無理なんだよなぁ、あいつら基本的に人間のこと敵視してんだもん。いや、それが当たり前なんだけど・・・今まで無理矢理押し切ってきたけど、正直もう限界かもなぁ・・・」

 追放紛いに辺境へと押しやられたとはいえ、彼らはまだ魔王軍の一端に属している。
 そうでなくとも魔物と人間は長年、敵対関係が続いているのだ。
 そんな中カイが一人人間に協力しようとしても、裏切り者扱いされるのが当然の道理であった。
 彼が今だに部下達から糾弾されていないのは、培ってきた信頼が故だろう。
 しかしそれも彼が遠大な計画を思い描いていると信じるからであり、本当に人間を助けるために行動しているとは思っていないからである。
 それがばれてしまえば、流石のヴェロニカ達も彼を見限るだろう。
 そう考えているカイは、これ以上今の状況を続ける事に限界を感じてしまっていた。

「はぁ、一体どうしたら・・・おっと、誰か出てくるな」

 今の状況でダンジョンの経営を続けていく事に、限界を感じ溜め息を吐いていたカイの目の前で、山肌の一部が消失していた。
 それはダンジョンの隠し通路を、誰かが利用した証だろう。
 この時間であれば、薬草採集に向かう部隊であろうか。
 部下達に黙って出てきている都合上、見つかっては不味いと感じたカイは、咄嗟に物陰へとその身を潜ませていた。

『何故、我らは薬草の採集ばかりに回される?ゴブリン共には、ダンジョンの管理を任されている者もいると聞く、おかしいではないか!』

 開いた通路から最初に出てきたのは、その薄いピンクの肌の至る所を緑や茶色にペイントしたオークの集団であった。
 彼らの先頭を行く屈強なオークは、隣の同じくらいの体格のオークに向かって、何やらがなりたてているようだった。

「何を話しているんだ?良く聞き取れないが・・・これはオークの言葉か?共通語で喋ればいいものを」

 カイが隠れている物陰の少し先で、なにやら言い争いを始めたオーク達の言葉を彼は聞き取れない。
 それは彼らが、その種族独自の言語で話しているからだろう。
 かつて広範な版図を築いた帝国、その国は遥か昔に崩壊してしまったが、そこで使われていた言語は今日にも魔物達の共通語として使用されている。
 しかしそれとは別に、それぞれの種族ごとや地方によって異なる言語を持つという事は、往々にしてあった。
 それは帝国崩壊後に長く続いた、戦乱の時代が影響しているのだろう。

「アルバロ辺りの姿になれば聞き取れると思うけど・・・ま、いっか。プライベートな話だったら、気まずいしな」

 彼らの会話が聞きたければ、彼らの姿になればいい。
 今は遠く離れ、別の所にいるかつての部下の姿を思い浮かべたカイは、その姿へと変身しようとする。
 その男と目の前のオークとでは出身も大きく違っており、そのため話す言葉も異なっているかもしれなかったが、同じ種族であればある程度聞き取る事は可能なように思われた。
 しかしどうしてもそれを聞きたいというほどの理由を思いつかなかったカイは、変身を途中で取りやめて彼らの動向を観察するのに留めていた。
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