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勇者がダンジョンにやってくる!
ある冒険者達と商人の出会い 2
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「ふぅ~、いやはや誤解が解けてよかった。あぁ!申し遅れました、私はパスカル・キルヒマン。しがない商人でございます」
「いえいえ、こちらこそ疑ってすみません。私はケネス・ガスリー、こっちはエルトン・アーネット。駆け出しの冒険者です」
解けた誤解に剣を収めるエルトンの姿に、小太りな商人パスカル・キルヒマンこと、カイ・リンデンバウムはほっと胸を撫で下ろしていた。
彼はだらだらと額から流れ落ちる汗を拭うと、軽く頭を下げて目の前の二人へと自己紹介をしている。
そんなカイの仕草はとても小物じみていて、二人の冒険者もそんな彼を警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなったのだろう。
砕けた様子で警戒を解いた二人は、彼に倣うように簡単な自己紹介を返していた。
「あん?駆け出しとは聞き捨てならねぇな?」
「別にいいだろ、そこは・・・」
もはや目の前の得体の知れない商人は警戒に値しないと判断したのか、自らの得物を鞘へと納めたエルトンは、相棒の物言いについて突っかかっている。
どうでもいいことで肩をぶつけてくる相棒の存在に、うんざりとした表情を見せるケネスはしかし、まだ完全にはカイに対する警戒を解いてはいないようだ。
彼は突っかかってくるエクトルの方へと視線を向けながらも、カイの方へと向ける注意を怠ってはいなかった。
「はははっ!まぁまぁ、アーネットさん。ガスリーさんも謙遜してそう言っただけですよ、本心からそう思ってる訳ではない筈です。そうお気を立てる事はありませんよ」
「そうかぁ?まぁ、あんたがそう言うなら・・・」
二人の仲の良さそうなやり取りに、思わず笑い声を上げてしまったカイは、それを誤魔化すように二人の仲裁へと踏み出していた。
カイはケネスの物言いは謙遜だと断言するが、それは間違いのないことであろう。
この一ヶ月、ダンジョンに訪れる冒険者を観察してきたカイからすれば、目の前の二人はその中でもかなり腕の立つ方に見受けられた。
そのため彼らが少なくとも、駆け出しといったレベルではない事だけは、はっきりと断言することが出来るのであった。
「ところで・・・お二人もあのダンジョンに?ここはあそこからも少し外れていますが・・・?」
「えぇ、そうなのですが。実は、迷ってしまいまして・・・キルヒマンさん、よければ道を教えてもらえないでしょうか?」
ダンジョンの裏口といっていい所からほど近いこの場所は、ダンジョンの本来の入口からは少し離れている。
しかしこんな場所に冒険者がやってくる理由など、あのダンジョンしかないだろう。
そう思って彼らへとそれを尋ねたカイに、ケネスは恥ずかしそうに頭を掻くと、正直に自分達の現状を白状していた。
「あぁ、そうでしたか。でしたら、ここからこちら・・・ではなく、この方向に真っ直ぐ進めばダンジョンの入口が見えてくると思いますよ。この時間でしたら、入口に冒険者の方々が集まってると思いますので、行けばすぐに分かりますよ」
「この方向ですね、分かりました。ちなみに、どれ位でつきますか?」
「そうですね・・・私の足でも十分位ですので、お二人ならもう少しお早くなるのではないでしょうか」
ダンジョンまでの道程を尋ねてきたケネスに、カイは思わず自らが出てきた裏口の方を示そうとしてしまい、慌ててそれを取り繕っている。
カイがこっそりと抜け出してきたのは、ダンジョンが開場される随分前の時間だ。
それからある程度時間が経った今では、丁度ダンジョンの開場を待つ冒険者が入口付近でごったかえす時間だろう。
そのため大雑把な場所を教えるだけでも、そこに辿りつけるだろうと判断したカイは、腕を伸ばしてダンジョンへの方向を教えるだけで留めていた。
「なるほど・・・ありがとうございます、助かりました。ほらエルトン、お前もキルヒマンさんにお礼を」
「いえいえ、礼を言われるほどの事は何も・・・そうだ!ダンジョンに行かれるのなら、これをお持ちください」
周りへと目をやり太陽の位置や、木々の隙間からうっすらと垣間見える遠くの景色を確認しては、方角の頼りを定めたケネスはカイへと頭を下げて感謝の言葉を述べていた。
彼は自らの横で退屈そうに二人の話を聞いていたエルトンにも、同じことをするように求めていたが、それはカイの方から逆に遠慮されることになる。
ケネスへと早く頭を上げてくれるように促しているカイは、何かを思いつくと腰に下げた鞄をごそごそと弄り始め、やがてそこから一つの小瓶を差し出していた。
「これは?何でしょうか、キルヒマンさん?」
「これは、そのダンジョンで手に入る治癒のポーションでございます。これからダンジョンに潜るのならば、何かとご入用でしょう。どうぞお一つ、お受け取りください」
ある程度警戒を解いたとはいえ、得体の知れない人物であることには変わりないカイが差し出してきた小瓶に、ケネスは手を出そうとせずに疑いの目を向けている。
彼の疑念は、もっともなものであろう。
そのためカイは気分を害する事なく、それを何かを丁寧に説明する事で、その疑念を晴らそうとしていた。
「へぇ、これが例のポーションね。噂は本当だったんだな・・・」
「エルトン!?失礼だろう!!」
カイの説明を耳にしても、ケネスはそれを手に取ろうとしない。
それは彼の冒険者としての用心深さだろう、しかし全ての冒険者が彼と同じように用心深い訳ではない。
ケネスの横から割り込んできたエルトンは、カイの手の平からガラスの小瓶をさっと奪い取ると、それをしげしげと眺めていた。
「これを俺らに差し出すって事はキルヒマンさんあんた、ダンジョン商人だったんだな。これで俺らに、唾をつけとこうってことかい?」
「・・・はははっ、実はそうなのですよ!いやはや流石は凄腕の冒険者、隠し事は出来ませんなぁ」
小瓶の中身を傾けながら、それを品定めしていたエルトンは、その半透明の液体越しにカイの姿を見詰めてはその正体を言い当てていた。
カイがその言葉に一瞬沈黙してしまったのは、その下心を隠しておきたかったからだろうか。
もはや言い当てられてしまった正体に隠す事もないと笑う彼は、それでもエルトンの事をよいしょする言葉を止める事はなかった。
「いえいえ、こちらこそ疑ってすみません。私はケネス・ガスリー、こっちはエルトン・アーネット。駆け出しの冒険者です」
解けた誤解に剣を収めるエルトンの姿に、小太りな商人パスカル・キルヒマンこと、カイ・リンデンバウムはほっと胸を撫で下ろしていた。
彼はだらだらと額から流れ落ちる汗を拭うと、軽く頭を下げて目の前の二人へと自己紹介をしている。
そんなカイの仕草はとても小物じみていて、二人の冒険者もそんな彼を警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなったのだろう。
砕けた様子で警戒を解いた二人は、彼に倣うように簡単な自己紹介を返していた。
「あん?駆け出しとは聞き捨てならねぇな?」
「別にいいだろ、そこは・・・」
もはや目の前の得体の知れない商人は警戒に値しないと判断したのか、自らの得物を鞘へと納めたエルトンは、相棒の物言いについて突っかかっている。
どうでもいいことで肩をぶつけてくる相棒の存在に、うんざりとした表情を見せるケネスはしかし、まだ完全にはカイに対する警戒を解いてはいないようだ。
彼は突っかかってくるエクトルの方へと視線を向けながらも、カイの方へと向ける注意を怠ってはいなかった。
「はははっ!まぁまぁ、アーネットさん。ガスリーさんも謙遜してそう言っただけですよ、本心からそう思ってる訳ではない筈です。そうお気を立てる事はありませんよ」
「そうかぁ?まぁ、あんたがそう言うなら・・・」
二人の仲の良さそうなやり取りに、思わず笑い声を上げてしまったカイは、それを誤魔化すように二人の仲裁へと踏み出していた。
カイはケネスの物言いは謙遜だと断言するが、それは間違いのないことであろう。
この一ヶ月、ダンジョンに訪れる冒険者を観察してきたカイからすれば、目の前の二人はその中でもかなり腕の立つ方に見受けられた。
そのため彼らが少なくとも、駆け出しといったレベルではない事だけは、はっきりと断言することが出来るのであった。
「ところで・・・お二人もあのダンジョンに?ここはあそこからも少し外れていますが・・・?」
「えぇ、そうなのですが。実は、迷ってしまいまして・・・キルヒマンさん、よければ道を教えてもらえないでしょうか?」
ダンジョンの裏口といっていい所からほど近いこの場所は、ダンジョンの本来の入口からは少し離れている。
しかしこんな場所に冒険者がやってくる理由など、あのダンジョンしかないだろう。
そう思って彼らへとそれを尋ねたカイに、ケネスは恥ずかしそうに頭を掻くと、正直に自分達の現状を白状していた。
「あぁ、そうでしたか。でしたら、ここからこちら・・・ではなく、この方向に真っ直ぐ進めばダンジョンの入口が見えてくると思いますよ。この時間でしたら、入口に冒険者の方々が集まってると思いますので、行けばすぐに分かりますよ」
「この方向ですね、分かりました。ちなみに、どれ位でつきますか?」
「そうですね・・・私の足でも十分位ですので、お二人ならもう少しお早くなるのではないでしょうか」
ダンジョンまでの道程を尋ねてきたケネスに、カイは思わず自らが出てきた裏口の方を示そうとしてしまい、慌ててそれを取り繕っている。
カイがこっそりと抜け出してきたのは、ダンジョンが開場される随分前の時間だ。
それからある程度時間が経った今では、丁度ダンジョンの開場を待つ冒険者が入口付近でごったかえす時間だろう。
そのため大雑把な場所を教えるだけでも、そこに辿りつけるだろうと判断したカイは、腕を伸ばしてダンジョンへの方向を教えるだけで留めていた。
「なるほど・・・ありがとうございます、助かりました。ほらエルトン、お前もキルヒマンさんにお礼を」
「いえいえ、礼を言われるほどの事は何も・・・そうだ!ダンジョンに行かれるのなら、これをお持ちください」
周りへと目をやり太陽の位置や、木々の隙間からうっすらと垣間見える遠くの景色を確認しては、方角の頼りを定めたケネスはカイへと頭を下げて感謝の言葉を述べていた。
彼は自らの横で退屈そうに二人の話を聞いていたエルトンにも、同じことをするように求めていたが、それはカイの方から逆に遠慮されることになる。
ケネスへと早く頭を上げてくれるように促しているカイは、何かを思いつくと腰に下げた鞄をごそごそと弄り始め、やがてそこから一つの小瓶を差し出していた。
「これは?何でしょうか、キルヒマンさん?」
「これは、そのダンジョンで手に入る治癒のポーションでございます。これからダンジョンに潜るのならば、何かとご入用でしょう。どうぞお一つ、お受け取りください」
ある程度警戒を解いたとはいえ、得体の知れない人物であることには変わりないカイが差し出してきた小瓶に、ケネスは手を出そうとせずに疑いの目を向けている。
彼の疑念は、もっともなものであろう。
そのためカイは気分を害する事なく、それを何かを丁寧に説明する事で、その疑念を晴らそうとしていた。
「へぇ、これが例のポーションね。噂は本当だったんだな・・・」
「エルトン!?失礼だろう!!」
カイの説明を耳にしても、ケネスはそれを手に取ろうとしない。
それは彼の冒険者としての用心深さだろう、しかし全ての冒険者が彼と同じように用心深い訳ではない。
ケネスの横から割り込んできたエルトンは、カイの手の平からガラスの小瓶をさっと奪い取ると、それをしげしげと眺めていた。
「これを俺らに差し出すって事はキルヒマンさんあんた、ダンジョン商人だったんだな。これで俺らに、唾をつけとこうってことかい?」
「・・・はははっ、実はそうなのですよ!いやはや流石は凄腕の冒険者、隠し事は出来ませんなぁ」
小瓶の中身を傾けながら、それを品定めしていたエルトンは、その半透明の液体越しにカイの姿を見詰めてはその正体を言い当てていた。
カイがその言葉に一瞬沈黙してしまったのは、その下心を隠しておきたかったからだろうか。
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