ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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勇者がダンジョンにやってくる!

久々のアトハース村

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 土を踏みしめる感触が変わったと感じたのは、森を抜け差し込む日差しが強くなったからだろうか。
 朝日の眩しさに手を翳したカイは、その向こう側にかつて目にしたのとは比べ物にならない賑わいを見せている、アトハース村の姿を捉えていた。

「おぉ!なんか賑わってんなぁ!やっぱりダンジョンによる、地域の活性化っていけるんじゃないか?」

 前に訪れた時から一ヶ月程度しか経っていないその村は、以前とは明らかに違う賑やかさを見せていた。
 その姿にカイは、彼が以前思い描いていたダンジョンによる地域の活性化という考えが、間違ってはいなかったのだと喜びの声を上げている。
 つぶさにその村の様子を観察していた訳ではない以上、この村の様子がダンジョン以外の要因の可能性もあった。
 しかしたった一ヶ月でここまで劇的に変わるとなると、やはりダンジョン以外の理由は考えられないのではないかと、彼は一人うんうんと頷き続けていた。

「よし!これは帰って、更なる地域活性化のプランをだな・・・って、違ーう!!それどころじゃなかったんだった!!」

 アトハース村の様子に機嫌を良くしたカイは、更なる地域の活性化について思い巡らしている。
 しかしそれが具体的なアイデアと変わる前に、彼はここにきた本当の目的を思い出してしまっていた。
 彼がここに訪れたのは、先延ばしにした問題の解決策を求めての事だ。
 こんな場所に来ても何か思いつくとも思えなかったが、少なくとも一人でうじうじと悩んでいるよりはましだろう。

「しかし村に来てもなぁ、別に何か思いつくとも・・・まぁ、クリス達の様子なんかも見ておきたかったしな」

 ダンジョンに多くの冒険者が訪れる切欠となったクリス達であったが、あれ以来彼らがダンジョンに訪れることはなかった。
 せっかく渡した取って置きの代物、ミスリルソードを手にしたクリスの活躍を、カイは非常に楽しみにしていた。
 そのクリスがあれ以来ダンジョンに姿を見せないという事実は、非常に残念な事であったが、それ以上にカイは彼らの動向が気になってしょうがなかったのであった。

「ダンジョンを出るまでは問題なかったんだし、無事だとは思うが・・・っと、村に入るなら変身しといた方がいいか?いや、さっきの感じなら問題ないかな?」

 クリス達の動向が気になるカイは、ぶつぶつと独り言を呟きながらアトハース村へと歩いていく。
 その途中に彼は立ち止まると、なにやら別の姿へと変身しようかと迷う仕草を見せていた。

「そうだな・・・日常会話は問題なくこなせたようだし、このままでいいか。いやぁ~、一ヶ月でここまで上達するなんて。結構凄いんじゃないか?」

 カイはどうやらパスカル・キルヒマンの顔の下に、かつて彼が姿を盗んだ村の住民の顔を忍ばせるかで悩んでいたようだ。
 そうする事で彼らの言葉が問題なく話せるようになるのだが、彼はそれは必要ないと判断すると再び歩みを進め始める。
 それは何故かというと、彼はこの一ヶ月で彼らの言葉をある程度マスターしており、先ほどの冒険者との会話も彼自身の技能によって会話を成立させていたからであった。

「まぁ、この一ヶ月暇だったから、そればっかりしてただけなんだけどな!はっはっは・・・はぁ~、なんか虚しくなってくるな」

 カイがそんな事が出来たのも、この一ヶ月やることがなく暇だったからだ。
 ダンジョンの運営はそのほとんどをヴェロニカに任せており、フィアナやダミアンも頑張ってくれている。
 彼自身もダンジョンの操作においては今だにトップレベルの技能を誇っており、時には自ら手を下すこともあった。
 しかしそうすると部下達、特にヴェロニカが過剰に恐縮してしまうため、あまり手を出し辛い状況であった。
 そのため結果的にカイは暇を持て余すこととなり、それを潰すために語学の勉強に勤しんでいたのであった。

「ダンジョンに行かれる方は、村の広場にあるギルドの出張所で名簿に登録していってくださーい!!ダンジョンの情報と、簡単な地図を差し上げまーす!!」

 自らの努力を誇ったカイも、そうするに至った境遇を思い出せば溜め息も吐きたくなってしまう。
 顔まで若干俯かせて、とぼとぼと歩いているカイの耳には、元気のいい少年の声が届いていた。
 それは彼が向かおうとしている、アトハースの方から響いてきている。 
 顔を上げてそちらを見てみれば、村の入口に立っている少年が両手を口に添えながら、道行く人々に対して呼びかけているようだった。

「ん、何かやってるな?ダンジョンに向かう冒険者に名前を記入させて、その管理をしているのか?まぁ確かに、少ないとはいえ死者も出てしまっているからな・・・遺族に連絡とか、そうした事も必要なのかもしれないな」

 まだ早朝といってもいい時間に、村の入口に通る人影は畑仕事に向かう人や、森へと採取や狩猟に向かう人が主だろう。
 後はそう、ダンジョンに向かうためにこの村へと寄った冒険者達だ。
 村から離れていく人影は素朴な格好をした者が多いのに対して、村へと向かう人影はなにやら物騒な格好した者が多い。
 そのほとんどが、冒険者なのだろう。
 例外はカイと同じような格好をした商人と、その護衛といったところか。

「情報をくれるといえば、冒険者達も寄らざるを得ないか・・・色々考えるんだな」

 彼が話しているダンジョンの地図というのは、恐らく最初のフロアのものだろう。
 あのフロアは基本的に一本道で、地図と言ってもたかが知れている。
 しかしそれでも初めてダンジョンを訪れる者からすれば、その情報は貴重であり、それが貰えるとなれば寄らない手はないだろう。
 呼び込みの少年、もしくは彼にそれを行わせている者の工夫に感心の声を漏らしていたカイは、気づけば村の入口近くまで辿りついていた。
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