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勇者がダンジョンにやってくる!
勇者の来訪は果たして彼らに何を齎すのか 1
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「勇者がやってくる!!」
物凄い勢いでこの最奥の間へとやってきたカイは、開口一番そう叫んでいた。
彼の格好は、その重要な事実を伝えるのに流石に別の姿では格好がつかないと思ったのか、普段の姿へと戻っている。
しかしその服装は慌てて着替えた為か所々乱れており、まるで密通が見つかりそうになった間男のようであった。
「勇者がやってくるぞ、皆!このダンジョンに勇者がやってくるんだ!!まだいつかは分からないが、近いうちに!これは凄い事だぞ!!」
突如部屋に入って来ては、一方的に言葉を捲くし立てているカイの姿に、部屋の中に控えていた幹部達は何ともいえない表情を見せている。
それはカイのその振る舞いに戸惑い、呆れてしまっているのだろうか。
いいや、違う。
それは―――。
「何だ、どうしたんだお前達?勇者がやってくるんだぞ?あの人類の希望の星である、勇者がだぞ?少しは驚いても・・・」
「存じております」
「えっ?存じて・・・えっ、ど、どういう事だ?ヴェロニカ?」
彼女達がそれを、既に知っていたからだ。
思っていたのとは違う部下達の反応に、疑問を漏らしたカイに返ってきたのは、ヴェロニカの意外な言葉であった。
カイがヴェロニカのその言葉に戸惑い狼狽えていると、彼女はつかつかと近づいてくる。
彼女のそんな不可解な行動よりも、カイにはその発言の真意の方が気になって仕方がないようだった。
「カイ様、お召し物が・・・」
「お、おぉ・・・すまないな、ヴェロニカ。それで、存じているとはどういう事だ?」
互いに息の届く距離まで近づいてきたヴェロニカは、カイの乱れた衣服を手早く直していく。
彼女の気遣いに礼の言葉を返したカイはしかし、彼女が何を知っているのか早く知りたいようだった。
それはどうやら、普段よりも明らかに距離が近い彼女の存在に、気が回らなくなるほどの事のようだった。
「えぇ、実は・・・ダンジョンに訪れたある冒険者が話していたのです、勇者がこのダンジョンにやってくると」
ヴェロニカ達が勇者の来訪を知っていたのは、ダンジョンに訪れた冒険者がそれを話していたからだ。
それは話していたのは何を隠そう、カイがダンジョンを離れる際にすれ違った冒険者であったのだが、カイがそれを知る由はない。
「なるほど、冒険者が・・・まぁ、早く知っていたに越した事はない。お前達ならば既に考えている事だろう、勇者の歓迎計画を」
ダンジョンに訪れた吉報をいち早く知らせたかった、カイの望みは叶う事はなかったが、それは大した問題ではない。
カイは知っているのだ、優秀な彼ら達ならば既に、勇者を歓迎する計画の一つや二つ立てているだろうという事を。
そしてそれは、間違いなく的中している。
「はい、勿論でございます」
「そうか・・・」
カイが予想したとおり、ヴェロニカはにっこりと頷くとその計画の存在を肯定する。
彼女の頷く姿と、その自身に満ちた様子を目にしたカイは、自らの湧き立つ気持ちを抑えては鷹揚に頷いていた。
彼は整えられた衣服を翻しながら、自らの席へと向かっていく。
その先には自然と道が出来ており、気付けば姿のなかったフィアナもそこへと加わっていた。
「・・・では聞かせてもらおうか、お前達の勇者歓迎計画を」
自らの席へとついたカイは、その体重を深々と椅子に掛けると、ゆっくりと息を吸い込んでいる。
そうして彼は十分に勿体つけると、精一杯の貫禄を持って部下達に計画を披露するように促していた。
「はい。私達が考えた勇者歓迎計画、もとい勇者抹殺計画について説明させていただきます。まずは―――」
「・・・ん?抹殺?ちょ、ちょっと待ってくれ!?何か聞き間違えてしまった気がするな、うん!悪いんだが、もう一度言ってくれないか?」
そうしてカイが耳にしたのは、自らの望みとは真逆といってもいい、部下達の計画であった。
ヴェロニカがカイの歓迎計画という言葉に頷いたのは、それが比喩的表現だと解釈したからだろう。
彼女が笑顔で口にした抹殺という言葉を、カイはうまく聞き取れずにもう一度話すように要請している。
それは彼なりの現実逃避か、しかし彼女の口から齎されたのは、逃れようのない非情な現実であった。
「はぁ・・・ではもう一度。私達が考えた勇者歓迎計画、もとい勇者抹殺計画について説明させていただきます。これでよろしいでしょうか?」
自らの主へと口上に、ヴェロニカは常に細心の注意を払っており、その発音と滑舌はとてもはっきりとしてものであった。
そのためその言葉をうまく聞き取れなかったと話す主人に、彼女は不思議そうに首を捻っている。
それでも彼女は主人の求める事と、再び同じ言葉を話し始める。
それは先ほどの言葉よりも、とてもはっきりとした発音であり、もはや聞き間違える事を許すようなものではなかった。
「・・・うん。うんそうね、そうだよね。そうか、やっぱり聞き間違いじゃなかったかー・・・そうだよねー、分かってはいたんだけどねー」
ヴェロニカの完璧な発声と滑舌に、カイはまざまざとその事実を思い知らされていた。
つまり彼の部下達は勇者を抹殺するつもりであり、それを歓迎するつもりなど微塵もないという事を。
物凄い勢いでこの最奥の間へとやってきたカイは、開口一番そう叫んでいた。
彼の格好は、その重要な事実を伝えるのに流石に別の姿では格好がつかないと思ったのか、普段の姿へと戻っている。
しかしその服装は慌てて着替えた為か所々乱れており、まるで密通が見つかりそうになった間男のようであった。
「勇者がやってくるぞ、皆!このダンジョンに勇者がやってくるんだ!!まだいつかは分からないが、近いうちに!これは凄い事だぞ!!」
突如部屋に入って来ては、一方的に言葉を捲くし立てているカイの姿に、部屋の中に控えていた幹部達は何ともいえない表情を見せている。
それはカイのその振る舞いに戸惑い、呆れてしまっているのだろうか。
いいや、違う。
それは―――。
「何だ、どうしたんだお前達?勇者がやってくるんだぞ?あの人類の希望の星である、勇者がだぞ?少しは驚いても・・・」
「存じております」
「えっ?存じて・・・えっ、ど、どういう事だ?ヴェロニカ?」
彼女達がそれを、既に知っていたからだ。
思っていたのとは違う部下達の反応に、疑問を漏らしたカイに返ってきたのは、ヴェロニカの意外な言葉であった。
カイがヴェロニカのその言葉に戸惑い狼狽えていると、彼女はつかつかと近づいてくる。
彼女のそんな不可解な行動よりも、カイにはその発言の真意の方が気になって仕方がないようだった。
「カイ様、お召し物が・・・」
「お、おぉ・・・すまないな、ヴェロニカ。それで、存じているとはどういう事だ?」
互いに息の届く距離まで近づいてきたヴェロニカは、カイの乱れた衣服を手早く直していく。
彼女の気遣いに礼の言葉を返したカイはしかし、彼女が何を知っているのか早く知りたいようだった。
それはどうやら、普段よりも明らかに距離が近い彼女の存在に、気が回らなくなるほどの事のようだった。
「えぇ、実は・・・ダンジョンに訪れたある冒険者が話していたのです、勇者がこのダンジョンにやってくると」
ヴェロニカ達が勇者の来訪を知っていたのは、ダンジョンに訪れた冒険者がそれを話していたからだ。
それは話していたのは何を隠そう、カイがダンジョンを離れる際にすれ違った冒険者であったのだが、カイがそれを知る由はない。
「なるほど、冒険者が・・・まぁ、早く知っていたに越した事はない。お前達ならば既に考えている事だろう、勇者の歓迎計画を」
ダンジョンに訪れた吉報をいち早く知らせたかった、カイの望みは叶う事はなかったが、それは大した問題ではない。
カイは知っているのだ、優秀な彼ら達ならば既に、勇者を歓迎する計画の一つや二つ立てているだろうという事を。
そしてそれは、間違いなく的中している。
「はい、勿論でございます」
「そうか・・・」
カイが予想したとおり、ヴェロニカはにっこりと頷くとその計画の存在を肯定する。
彼女の頷く姿と、その自身に満ちた様子を目にしたカイは、自らの湧き立つ気持ちを抑えては鷹揚に頷いていた。
彼は整えられた衣服を翻しながら、自らの席へと向かっていく。
その先には自然と道が出来ており、気付けば姿のなかったフィアナもそこへと加わっていた。
「・・・では聞かせてもらおうか、お前達の勇者歓迎計画を」
自らの席へとついたカイは、その体重を深々と椅子に掛けると、ゆっくりと息を吸い込んでいる。
そうして彼は十分に勿体つけると、精一杯の貫禄を持って部下達に計画を披露するように促していた。
「はい。私達が考えた勇者歓迎計画、もとい勇者抹殺計画について説明させていただきます。まずは―――」
「・・・ん?抹殺?ちょ、ちょっと待ってくれ!?何か聞き間違えてしまった気がするな、うん!悪いんだが、もう一度言ってくれないか?」
そうしてカイが耳にしたのは、自らの望みとは真逆といってもいい、部下達の計画であった。
ヴェロニカがカイの歓迎計画という言葉に頷いたのは、それが比喩的表現だと解釈したからだろう。
彼女が笑顔で口にした抹殺という言葉を、カイはうまく聞き取れずにもう一度話すように要請している。
それは彼なりの現実逃避か、しかし彼女の口から齎されたのは、逃れようのない非情な現実であった。
「はぁ・・・ではもう一度。私達が考えた勇者歓迎計画、もとい勇者抹殺計画について説明させていただきます。これでよろしいでしょうか?」
自らの主へと口上に、ヴェロニカは常に細心の注意を払っており、その発音と滑舌はとてもはっきりとしてものであった。
そのためその言葉をうまく聞き取れなかったと話す主人に、彼女は不思議そうに首を捻っている。
それでも彼女は主人の求める事と、再び同じ言葉を話し始める。
それは先ほどの言葉よりも、とてもはっきりとした発音であり、もはや聞き間違える事を許すようなものではなかった。
「・・・うん。うんそうね、そうだよね。そうか、やっぱり聞き間違いじゃなかったかー・・・そうだよねー、分かってはいたんだけどねー」
ヴェロニカの完璧な発声と滑舌に、カイはまざまざとその事実を思い知らされていた。
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