ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
212 / 308
勇者がダンジョンにやってくる!

勇者の来訪は果たして彼らに何を齎すのか 2

しおりを挟む
「どうかなさいましたか、カイ様?ご気分が優れないようでしたら、今日の所はお休みになられても・・・」
「いや、問題ない。それよりもお前達の、その・・・抹殺計画なのだが・・・」

 あからさまに落ち込み、項垂れてしまったカイの様子に、ヴェロニカは心配そうに彼の事を気遣っている。
 彼女のそれは本心から出た言葉であっただろうか、カイはそれに甘える訳にはいかない。
 彼がこのまま沈んだ気分のままに倒れ付してしまえば、彼女達は迷いなくその計画を実行するだろう。
 それだけは、何としても止めなければならないのだ。

「何とか、こう・・・もっと穏やかなものには出来ないだろうか?抹殺というのは、そのなんと言うか・・・不味いんじゃないか?」

 カイの話術では、彼らをうまく言いくるめることなど出来ようもない。
 そのため彼は勇者という人類の希望だけは何とか守ろうと、その抹殺だけは阻止しようと計画の修正させる事を試みていた。
 勇者を守り育てるのは、彼の悲願ともいえる事であったが、それを手放してもその存在だけは守らなければならない。
 カイの苦渋の決断はヴェロニカの心にも響いたのか、彼女はその唇に笑みを浮かべては、彼の言葉に頷きを返していた。

「はい、勿論でございます。カイ様の仰られるとおり、抹殺というのはあくまで最終目標。それまでは勇者を逃がさぬように、細心の注意を払い『歓迎』するように考えております」

 ヴェロニカは極上の笑顔を浮かべながら、カイの提案を肯定している。
 その勇者を絶対に逃がすなという、彼の言葉を。

「えっ?い、いや・・・そうではなくてだな―――」 

 何とか抹殺ではなく、撃退程度に計画を変更させようと試みたカイの行いは、より注意深くそれを殺す決意へと彼らを促している。
 自らの思惑がうまく伝わらなかった事に、カイは慌てて否定の言葉を続けるが、それは果たして彼らにうまく伝わるだろうか。
 少なくとも、その言葉は最後まで言い切る前に、他の誰かによって遮られてしまっていた。

「然り然り。折角カイ様が呼び寄せた獲物を、ここで逃がしてしまっては元も子もないからのぅ・・・ん?カイ様、何か仰られましたか?」
「んん?ま、まぁ大した事では・・・ん?ちょっと待て、私が呼び寄せたとは何の話しだ?」

 カイの動揺した言葉を遮って声を発したのは、ヴェロニカの考えに賛同するダミアンであった。
 彼はその立派な体毛を擦りながら、カイが折角呼び寄せた獲物を万が一にも逃がしてはならないと話している。
 ダミアンという自分よりも圧倒的に頭のいい存在の発言に、慌ててその場を譲ったカイも、その内容にはどうしても引っかかる部分があった。
 勇者を自分が呼び寄せたとは、一体何の話であろうか。

「これはこれは、ご謙遜を・・・これまでの行いは、全てこのためであったのでありましょう?いやはやこのダミアンを持ってしても、カイ様のお考えの深さには遠く及びません」
「ダミアンの言う通りでございます。まさか冒険者を集め、彼らに過剰なまでの施しを与えていたのにはこのような狙いがあったとは・・・このヴェロニカ、感嘆の至りでございます」

 このダンジョンの頭脳と呼んでもいい、ヴェロニカとダミアンの二人が口々に、カイの深い考えについて賞賛の言葉を述べていた。
 彼らはカイのこれまでの不可解な行動の全ては、このためにあったのだと語っている。
 そしてそれは間違いなく、正しい。
 招き入れた勇者を抹殺するという、そのたった一つの相違を除いては。

「そ、そうか・・・なるほどなるほど。ふふふ・・・ばれてしまっては仕方がないな、実はそういう計画であったのだよ」

 彼らの言葉に、ようやく自分が勇者を招き寄せた事になっていると理解したカイは、慌ててそれを受け入れては全て計画通りと笑みを見せている。
 ここでそんな事はただの偶然だと暴露してしまえば、彼らの信望を失いかねない。
 そう思わせるほどに、彼らは眩しい尊敬の瞳をカイへと向けていた。

「やはり、そうでございましたか!しかし、一体どこから・・・いえ、これは失礼致しました。勿論最初からでございますね?」
「それはそうであろうよ。カイ様のこと、ここに赴任された当初からそれを考えておられた筈・・・いや、もしかするとここに来られる前から・・・?」

 計画通りとニヤリと笑って見せるカイの姿は、いかにも策士といった風貌を備えていた。
 その振る舞いにヴェロニカは感動に両手を組み合わせ、ダミアンはその余りに深い智謀に恐れ戦いている。
 カイのその振る舞いが、実はただの保身だといっても、果たして彼らは信じるだろうか。
 それほどまでに彼らは、カイの振る舞いに心酔し、その頭脳に巨大な影の姿を見ていた。

「だが実はだな・・・私が考えていた計画は、お前達のとは違って―――」

 彼らの信望は果たして、その計画の変更を許すほどのものだろうか。
 カイは尊敬を瞳を向けてくる部下達に向かって、彼らの計画の変更を持ちかけようとしていた。
 それもこの部屋へと近づいてくる乱暴な足音によって、掻き消されてしまう。
 そういえばこの部屋には一人、姿の見えない部下がいる。
 そいつは彼の部下の中でも一際大柄で、ここにいればすぐに目に入るというのに。

「旦那!旦那ぁ!!聞いたぜ、旦那ぁ!!!勇者をこのダンジョンに呼び寄せたんだってな!!」
「お、おぅ・・・セッキか。確かにそうなのだが、実はな・・・」

 この部屋へと大声を上げながら押し入ってきたセッキは、自らに課せられた役目を放棄している。
 しかし彼の嬉しそうな表情に、それを指摘するというのは野暮というものだろう。
 何より心底嬉しそうな表情のまま、こちらへと猛烈な勢いで詰め寄ってくるセッキの圧力に、カイがそんな事を言える訳がないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...