ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
235 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

カイ・リンデンバウムは全てを見通し指示を出す 2

しおりを挟む
「ねぇ、ダミアン。フィアナにどうにか、カイ様を連れて帰ってもらえるように頼めないかしら?ここに姿がないということは、あの子はカイ様の護衛にいっているのでしょう?」

 カイが黙ってここを去ってしまったかもしれないという不安を振り払う事の出来ないヴェロニカは、フィアナに彼を連れ戻してもらえないかと考えていた。
 通常ならばこの最奥の間でヴェロニカのお手伝いをしている彼女の姿は、今日は見られない。
 であるならば彼女は、カイの護衛へと向かっているのだろう。
 幾多の魔法を使いこなすダミアンであれば、今どこにいるかも分からない彼女とも連絡する手段を有しているかもしれない。
 そう考えたヴェロニカは、藁にも縋る思いでダミアンへとそれを頼んでいたのだった。

「それはそうじゃが・・・しかし、あの子がそれに従うかどうか」

 その手段がなくはないと匂わせるダミアンはしかし、それでもフィアナを動かすのは難しいと難色を示している。
 普段は周りの言う事をよく聞く彼女であったが、主人への忠誠心は人一倍強いのも確かであった。
 そんな彼女がダミアンやヴェロニカからの頼みであったとしても、主人の意に沿わぬ行動をするとは思えない。
 ダミアンの態度にそれを悟ったヴェロニカは、悔しそうに唇を噛み締めていた。

「おいおい、何か暗いなぁ!どうしちまったんだ、姐さん?」

 打つ手のない状況に、ヴェロニカは黙りこくってしまう。
 そんな暗い空気が漂うこの部屋に、無遠慮な足音と大声が響く。
 その大柄な身体をのっそりとこの部屋へと割り込ませてきたセッキは、俯いては暗い表情を見せているヴェロニカに対して、気軽な面持ちで声を掛けていた。

「セッキ!貴方、持ち場は・・・いえ、もうそんな事もどうでもいいことね」
「?本当にどうしちまったんだ、姐さん?いつもはもっと怒って、こう・・・喚き散らすだろう?」

 自らの持ち場を離れて、この最奥の間へと足を踏み入れたセッキに対して、ヴェロニカは咄嗟に叱りつけようとしていたが、すぐにそれももはやどうでもいいと再び俯いてしまう。
 彼女の怒鳴りつけられるのを待ち受けて、部屋の入口に僅かに身を屈めていたセッキは、いつまでもやってこないそれに拍子抜けしたような表情を見せていた。
 彼は何とも言えない表情で後頭部をボリボリと掻くと、俯いたままのヴェロニカの下へと歩み寄っていく。
 セッキの巨体にその圧力が感じられるほどの距離に彼が近づいても、ヴェロニカの表情が変わることはなかった。

「なぁ、爺さん。こりゃ、一体どうしちまったんだ?」
「ほれ、今朝方カイ様が姿を消したじゃろう?それじゃよ」
「あぁん?そんなのいつもの事じゃねぇか?」

 もはや何やら一人でぶつぶつと呟きだしたヴェロニカからは、碌な返事は貰えないと悟ったセッキは、彼女へと哀れんだ瞳を向けているダミアンへとこの状況の説明を求めていた。
 ダミアンはセッキにヴェロニカが今の状態に至った経緯を簡単に説明するが、それを聞いても彼は呆れた表情をするばかりであった。

「今回は少し事情が違うのじゃよ。この前、カイ様に我らが考えた勇者抹殺計画について説明したじゃろう?それに対してカイ様が不満を抱いたのではと、ヴェロニカは考えおるのじゃよ」
「ふ~ん、そうなのか?別に悪い計画じゃなかったと思うがな?」
「わしもそうは思うが・・・ほれ、今回の計画はカイ様が以前から考えておられた肝いりの計画じゃろう?当然求めるレベルも高くなってくるのじゃが、ヴェロニカはその期待に応えられなかったと気に病んでおるのよ」

 カイが突然姿を消す事は、もはやいつもの事であった。
 そんな程度の事でここまで落ち込んでいるのかと呆れた表情を見せるセッキに、ダミアンは今回は少し事情が違うと、彼女を擁護している。
 しかしダミアンの説明を聞いても、セッキはどこかぴんと来ていないような表情をその顔に浮かべていた。

「そういうもんかね?別に旦那も、そんな不満そうにゃしてなかったと思うが・・・ま、正直俺には全然分からねぇ話だったから、ほとんど聞いてなかったんだがな!がっはっはっは!!」

 ダミアンの丁寧な説明にも、セッキが良く分かっていなさそうな表情を見せていたのは、彼がそもそもその計画について理解していなかったからだ。
 今まで適当に分かっている振りをしていたと正直に白状した彼は、豪快に笑い飛ばしてはそれを気にもしていないという態度を見せている。
 そんな彼の姿に、ダミアンは呆れ果てたように大きく口を開いていた。

「お主は・・・まったく!少しは頭も使わんか!!この筋肉馬鹿めがっ!!」
「はっはっは!そりゃ、俺にとっちゃ褒め言葉だぜ爺さん!それに勇者とは戦えるんだろ?俺にとっちゃ、それだけ知れりゃ十分だからよ、他の事なんてどうでも良くてな!がっはっはっは!!」

 何も考えていなかったと堂々と宣言するセッキに、頭を抱え込んで俯いてしまったダミアンは、再び顔を上げる彼の事を怒鳴りつけていた。
 ダミアンからそんな風に叱りつけられても、セッキは気にした様子すら見せない。
 彼にとってみれば、ダミアン達の計画など始めからどうでも良く、ただただ勇者と戦える事が楽しみで仕方なかったのだ。
 その事を言葉にする事で改めて戦意が漲ってきたのか、筋肉をミチミチと鳴らしては興奮した様子を見せているセッキに、もはや処置なしとダミアンは再び頭を抱えてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。

まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。 しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。 怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...