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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
カイ・リンデンバウムは全てを見通し指示を出す 3
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『ク、クライネルト様!クライネルト様!!』
言葉を失い黙りこくるダミアンとヴェロニカに、セッキの笑い声だけが空しく響く最奥の間に、どこから焦ったような声が響いてくる。
それはこの部屋の至る所に浮かんでいる、モニターの一つから聞こえてくる声であろう。
声の出所を探ってそちらに目を向けてみれば、それはどうやら先ほどカイの捜索に向かわせたゴブリン達が何か報告しようと声を上げているようだった。
「・・・何?今はそれ所じゃないのだけど・・・」
『お、おられましたか、クライネルト様!じ、実は・・・さきほどリンデンバウム様の御姿をお見かけしたのです!!』
「何ですって!?」
気だるそうに顔を上げたヴェロニカの目の周辺が赤いのは、彼女が密かに涙を流していたからか。
落ち込んだテンションを、そのまま引き摺っている彼女の対応はぞんざいそのものだ。
圧倒的な権力者にそんな対応をされてしまえば、下っ端がビビッてしまうのも仕方のない話だろう。
しかしそのゴブリンは言葉に詰まりながらも、報告だけはしっかりと上げていた。
それはその情報がとても、とても重大なものであったからだ。
「そ、それは一体何時の・・・それよりもどこで見かけたの!?カイ様は何をしていらしたの!?早く、早く教えなさい!!」
待ち望んだ主人の情報に、飛びついたヴェロニカの勢いは激しい。
その先ほどの気だるい態度とのあまりのギャップに、モニターの向こうのゴブリン達は驚き言葉を失ってしまっている。
そんな彼らの様子などお構いなしに、ヴェロニカは一刻も早く情報を寄越せと捲くし立てていた。
「えぇい!落ち着かんか、ヴェロニカ!!あの者も怯えておろう!こら、セッキ!お主も手伝わんかい!!」
「あいよっと。ほら、姐さん落ち着いて!そんな剣幕で迫られちゃ、俺だって黙っちまうよ」
報告を上げてきたゴブリン達が映っているモニターへと齧りついているヴェロニカを、何とか落ち着かせようとダミアンが彼女の身体へと飛び掛っている。
しかしその小さな身体では、興奮しいきり立っているヴェロニカを止める事など出来ようもない。
振り落とされそうな身体を、その猫特有の身軽さで何とかしがみつかせたダミアンは、近くに突っ立っていたセッキへと救援を求める。
ダミアンの言葉に軽く応えたセッキがヴェロニカの肩に手を添えると、流石の彼女もあっさりとその場から引き剥がされていってしまっていた。
「セッキ、そこで押さえておれよ!えーっと、こうじゃったかな?よしよし、いけそうじゃ。それで・・・お主達は、どこでカイ様の姿を見たのじゃ?あの御方はどこで何をしていたのじゃろうか?」
『その声は、ヘ、ヘンゲ様ですか?その・・・カイ様を見かけたのは、このダンジョンのすぐ近くです!カイ様は見知らぬ人間達と、このダンジョンに向かっているようでした!』
ヴェロニカを押さえる役目をセッキへと任せたダミアンは、モニターの前へと立つと報告を上げてきたゴブリン達へと問い掛けている。
普段冷静で穏やかながらも、自分達の事を捨て駒としか認識していない事を隠そうともしないヴェロニカに比べれば、まだダミアンは話しやすい相手だろうか。
いいやそれは、今の正気ではないヴェロニカと比べたらの話でしかない。
捨て駒程度の価値を認めてくれるヴェロニカと違い、ダミアンは表面上は穏やかでも心の中ではどんな事を考えているのか分からない存在であった。
そんな存在の機嫌までも、損なう訳にはいかない。
モニターに映っているゴブリンは背筋を震わせながらも、何とか必要な情報を搾り出す事に成功していた。
「カイ様がこのダンジョンに・・・?随分とお早いお帰りじゃの、一体何をしてらしたのか・・・まぁ、よい。ご苦労だった、もう下がってよいぞ」
『ははっ、失礼致します!』
カイがこのダンジョンに帰ってきているという報告に、ダミアンは首を傾げては不思議そうに顎を撫でている。
カイがこのダンジョンから失踪したのは、今朝早くの事だ。
そして今の時間は、お昼をまわって少し経ったというぐらいで、そんな短い時間の中で果たして我らの主人は何をしていたのかと、ダミアンは疑問を感じているようだった。
「へぇ、旦那帰ってくんのか。良かったじゃないか、姐さん」
「ま、まだ分からないじゃない!最後に一言、別れの挨拶を言いに来たのかもしれないし・・・」
「だからそれは、心配し過ぎだって姐さん!旦那はそんな薄情な奴じゃないってよ!」
ゴブリンとダミアンの通話を、ヴェロニカを押さえつけながら聞いていたセッキは、その内容にもう安心だと彼女に語りかけている。
しかしそんなセッキの言葉にもヴェロニカはふらふらと視線を彷徨わせては、無理やりにも不安の種を探しているようだ。
そんな彼女にセッキはカイはそんな奴じゃない断言しているが、そんな言葉が彼女の耳に届く事はなさそうであった。
「そ、そんな事より!カイ様はどこに!?入口から帰ってくるのかしら?いいえ、やはり隠し通路から・・・!」
セッキの励ましの言葉を聞き流したヴェロニカは、そんな事よりも一刻も早くカイの姿を見つけようと、モニターの操作を急いでいる。
彼女は素早く端末を操作すると、カイが帰ってくるであろうルートが映っているモニターを自らの見やすい位置へと移動させていた。
「見知らぬ人間と一緒って話しだから、正面の入り口からじゃないか?」
「ほぅ、お主がそのような事を言うとはの。わしもそこが気になっておったのじゃ。カイ様は一体、どんな人間共とこのダンジョンにやってきたのかと・・・思うに、そこに今回のあの御方の狙いがあると思うのじゃ」
焦りすぎているためか、視野が狭窄してしまっているヴェロニカに、セッキが先ほど得た情報から推測される当たり前の事実を突っ込んでいた。
そんな彼の姿に感心したような声を漏らしたダミアンは、彼の目の付け所を褒め称えている。
確かに先ほど報告してきたゴブリンは、カイが見知らぬ人間達と一緒だと話していた。
ダミアンにはその者達こそが、カイがこんなにも早くにダンジョンに帰ってきた理由だと考えているようだった。
言葉を失い黙りこくるダミアンとヴェロニカに、セッキの笑い声だけが空しく響く最奥の間に、どこから焦ったような声が響いてくる。
それはこの部屋の至る所に浮かんでいる、モニターの一つから聞こえてくる声であろう。
声の出所を探ってそちらに目を向けてみれば、それはどうやら先ほどカイの捜索に向かわせたゴブリン達が何か報告しようと声を上げているようだった。
「・・・何?今はそれ所じゃないのだけど・・・」
『お、おられましたか、クライネルト様!じ、実は・・・さきほどリンデンバウム様の御姿をお見かけしたのです!!』
「何ですって!?」
気だるそうに顔を上げたヴェロニカの目の周辺が赤いのは、彼女が密かに涙を流していたからか。
落ち込んだテンションを、そのまま引き摺っている彼女の対応はぞんざいそのものだ。
圧倒的な権力者にそんな対応をされてしまえば、下っ端がビビッてしまうのも仕方のない話だろう。
しかしそのゴブリンは言葉に詰まりながらも、報告だけはしっかりと上げていた。
それはその情報がとても、とても重大なものであったからだ。
「そ、それは一体何時の・・・それよりもどこで見かけたの!?カイ様は何をしていらしたの!?早く、早く教えなさい!!」
待ち望んだ主人の情報に、飛びついたヴェロニカの勢いは激しい。
その先ほどの気だるい態度とのあまりのギャップに、モニターの向こうのゴブリン達は驚き言葉を失ってしまっている。
そんな彼らの様子などお構いなしに、ヴェロニカは一刻も早く情報を寄越せと捲くし立てていた。
「えぇい!落ち着かんか、ヴェロニカ!!あの者も怯えておろう!こら、セッキ!お主も手伝わんかい!!」
「あいよっと。ほら、姐さん落ち着いて!そんな剣幕で迫られちゃ、俺だって黙っちまうよ」
報告を上げてきたゴブリン達が映っているモニターへと齧りついているヴェロニカを、何とか落ち着かせようとダミアンが彼女の身体へと飛び掛っている。
しかしその小さな身体では、興奮しいきり立っているヴェロニカを止める事など出来ようもない。
振り落とされそうな身体を、その猫特有の身軽さで何とかしがみつかせたダミアンは、近くに突っ立っていたセッキへと救援を求める。
ダミアンの言葉に軽く応えたセッキがヴェロニカの肩に手を添えると、流石の彼女もあっさりとその場から引き剥がされていってしまっていた。
「セッキ、そこで押さえておれよ!えーっと、こうじゃったかな?よしよし、いけそうじゃ。それで・・・お主達は、どこでカイ様の姿を見たのじゃ?あの御方はどこで何をしていたのじゃろうか?」
『その声は、ヘ、ヘンゲ様ですか?その・・・カイ様を見かけたのは、このダンジョンのすぐ近くです!カイ様は見知らぬ人間達と、このダンジョンに向かっているようでした!』
ヴェロニカを押さえる役目をセッキへと任せたダミアンは、モニターの前へと立つと報告を上げてきたゴブリン達へと問い掛けている。
普段冷静で穏やかながらも、自分達の事を捨て駒としか認識していない事を隠そうともしないヴェロニカに比べれば、まだダミアンは話しやすい相手だろうか。
いいやそれは、今の正気ではないヴェロニカと比べたらの話でしかない。
捨て駒程度の価値を認めてくれるヴェロニカと違い、ダミアンは表面上は穏やかでも心の中ではどんな事を考えているのか分からない存在であった。
そんな存在の機嫌までも、損なう訳にはいかない。
モニターに映っているゴブリンは背筋を震わせながらも、何とか必要な情報を搾り出す事に成功していた。
「カイ様がこのダンジョンに・・・?随分とお早いお帰りじゃの、一体何をしてらしたのか・・・まぁ、よい。ご苦労だった、もう下がってよいぞ」
『ははっ、失礼致します!』
カイがこのダンジョンに帰ってきているという報告に、ダミアンは首を傾げては不思議そうに顎を撫でている。
カイがこのダンジョンから失踪したのは、今朝早くの事だ。
そして今の時間は、お昼をまわって少し経ったというぐらいで、そんな短い時間の中で果たして我らの主人は何をしていたのかと、ダミアンは疑問を感じているようだった。
「へぇ、旦那帰ってくんのか。良かったじゃないか、姐さん」
「ま、まだ分からないじゃない!最後に一言、別れの挨拶を言いに来たのかもしれないし・・・」
「だからそれは、心配し過ぎだって姐さん!旦那はそんな薄情な奴じゃないってよ!」
ゴブリンとダミアンの通話を、ヴェロニカを押さえつけながら聞いていたセッキは、その内容にもう安心だと彼女に語りかけている。
しかしそんなセッキの言葉にもヴェロニカはふらふらと視線を彷徨わせては、無理やりにも不安の種を探しているようだ。
そんな彼女にセッキはカイはそんな奴じゃない断言しているが、そんな言葉が彼女の耳に届く事はなさそうであった。
「そ、そんな事より!カイ様はどこに!?入口から帰ってくるのかしら?いいえ、やはり隠し通路から・・・!」
セッキの励ましの言葉を聞き流したヴェロニカは、そんな事よりも一刻も早くカイの姿を見つけようと、モニターの操作を急いでいる。
彼女は素早く端末を操作すると、カイが帰ってくるであろうルートが映っているモニターを自らの見やすい位置へと移動させていた。
「見知らぬ人間と一緒って話しだから、正面の入り口からじゃないか?」
「ほぅ、お主がそのような事を言うとはの。わしもそこが気になっておったのじゃ。カイ様は一体、どんな人間共とこのダンジョンにやってきたのかと・・・思うに、そこに今回のあの御方の狙いがあると思うのじゃ」
焦りすぎているためか、視野が狭窄してしまっているヴェロニカに、セッキが先ほど得た情報から推測される当たり前の事実を突っ込んでいた。
そんな彼の姿に感心したような声を漏らしたダミアンは、彼の目の付け所を褒め称えている。
確かに先ほど報告してきたゴブリンは、カイが見知らぬ人間達と一緒だと話していた。
ダミアンにはその者達こそが、カイがこんなにも早くにダンジョンに帰ってきた理由だと考えているようだった。
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