ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

順調な旅路と気になるそれ 2

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「た、助かったぞ!二人とも!!」
「流石でございます、お二方」

 ギリギリの所を助けられたエヴァンは、その感謝を二人へと叫ぶ。
 エヴァンをスライムの魔の手から救えずとも、その命までは奪わせないと急いでいたアビーも、助けられた彼の姿にすぐにナイフを仕舞うと、彼らへとお礼の言葉と共に深く頭を下げていた。

「気にすんなって、それが仕事なんだからよ。しかし出ねぇな、宝箱。俺の感覚じゃ、そろそろ出そうな感じなんだけどな」
「そうだね、僕もそう思うけど・・・」

 お礼を言ってくる二人の視線がむず痒いのか、その視線から逃れるように顔を背けたエルトンは、周りを見渡すと出現する気配のない宝箱に嘆息を漏らしている。
 ケネスもそれに同意すると、先ほど放っていた自らのナイフを拾い集めていた。

「ま、先に進んでたら、いつか出んだろ。さっさと先に進もうぜ!」
「うむ、そうだな!私も早く、その宝箱とやらを見てみたいぞ!」

 出現する気配のない宝箱に残念そうな表情を見せたエルトンも、すぐにその気分を切り替えると先に進もうと提案していた。
 そんな彼の声にエヴァンは力強く応えると、早く早くと足を急がしている。
 先へと足を急がせ、まだ見ぬ宝箱やダンジョンの姿に期待を膨らませているエヴァンの姿は、つい先ほどまで命の危機に見舞われていた人のものとは思えない。

「ほら、アビー!キルヒマンも、さっさと先に進むぞ!」
「はい、坊ちゃま」

 もはや先導する筈のエルトンすらも追い抜いていきそうな勢いのエヴァンに、アビーも務めて冷静な表情のまま、かなりの速度の早足でそれに付き従っていく。
 そんな二人の姿を目にすれば、エルトンとケネスの二人もそれをほっとく訳にはいかず、慌ててその前へと回っていた。

「・・・さっきのあれは、ヴェロニカ達の仕掛けだったのか?思わず庇おうとしてしまったが・・・それにしては温かったような気がするな。それにしても・・・」

 エヴァンに引っ張られるように先に進んでいく一行に、カイは一人置いていかれてしまっていた。
 彼は先ほどの出来事が、ヴェロニカ達の仕掛けであったのかどうか気になっているようだった。
 確かに先ほどの部屋の魔物の構成は、普段のものよりも強力な魔物達が揃っているように感じられた。
 そんな状況で勇者であるエヴァンが危険な目に遭えば、それを仕掛けだと解釈するのも当然かもしれない。
 しかし果たして、本当にそうなのだろうか。
 このダンジョンの主であるカイは、ダンジョンの大雑把な方針を決めるのが主な仕事であり、細かい調整や設定などは部下であるヴェロニカ達に任せている。
 そのため知らなかったのだ、今回の部屋の魔物が設定されている配置の中で十分に起こりうる、ただの強力な配置であった事を。

「勇者様は何故、戦おうとしなかったんだ?う~ん、あの程度の魔物は戦うまでもないって事なのか?それにしては、悲鳴を上げていたような気もしたが・・・」

 そんな事よりも、カイには気になる事があった。
 それは魔物がその身に迫ったにもかかわらず、その背中に括りつけた聖剣を抜こうとしなかった勇者、エヴァンの振る舞いについてだ。
 彼は魔物がその間近にまで迫ったにもかかわらず決して戦おうとはせず、あまつさえ悲鳴すら上げていたように見えた。
 勇者の命をヴェロニカ達の魔の手から守ると決意したカイにも、流石にその振る舞いには気に掛かることがあった。

「まぁ、勇者といってもまだ子供だからな・・・そういう事もあるんだろう。しかし一度くらい、その力をお目に掛かりたいものだな」

 そんな疑問も、エヴァンの年齢を考えれば仕方ない事かと納得する事も出来る。
 そうして自らの内に生じた疑問にかたをつけたカイは、また別の事に興味を抱いていた。
 それは勇者の実力をその目で確認してみたいという、彼の個人的な欲求であった。
 今でこそ、のっぴきならない事情でその命を守る事を重要視している勇者であったが、カイは本来その力を伸ばし育てる手助けをしたいと願っていたのだ。
 その力を目にしたいと願うのは、当然といえるだろう。

「心配しなくても、この先見る機会は幾らでもあるか」

 先ほどの危機は、冒険者二人の働きによって何とか回避する事が出来た。
 しかしこの先、ヴェロニカ達の仕掛けは確実に激しくなっていくだろう。
 そうなればエヴァンも、いつまでも傍観を決め込む事は出来なってくる筈だ。
 そんな確実にやってくる筈の未来を思い描いては、カイは一人楽しみだと頷いていた。

「キルヒマン、何をやっているのだ!置いていってしまうぞ!」
「あ、すみませーん!今行きまーす!」

 その場に留まり、一人ぶつぶつと考え事をしていたカイに、もう随分と先に進んでしまっているエヴァンが声を掛けてくる。
 彼はそれに返事を返すと、小走りでそちらへと駆け寄っていく。
 その口元には、これからの出来事に期待する笑みがうっすらと覗いていた。
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