251 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
そして彼はそう囁いた 2
しおりを挟む
「そ、それはだな・・・その、なんというか・・・」
「わざわざ自分が手を下すまでもない、そう仰りたいのございましょう?坊ちゃま」
「そ、それだ!そうアビーの言う通り、私自ら手を下すまでもない相手だからな、彼らに任せているのだ!勿論、彼らに手が終えない敵が現れたら、私自ら手を下すのもやぶさかではないぞ?その時はこうズバッとだな・・・一刀両断にしてやるのだ!!」
適当な言い訳が思い浮かばず、視線を彷徨わせる事しか出来ずにいたエヴァンに、アビーが素早く助け舟を出していた。
彼女はこれまで現れた敵程度では、エヴァン自ら手を下すまでもないと語っている。
アビーの言葉にこれ幸いと飛びついたエヴァンは、彼女が話していないことまで大袈裟に話し、決して戦えないのではないのだと猛烈にアピールしている。
エヴァンが自らの力強さのアピールのために掲げた両腕はしかし、寧ろその細い手足に彼の華奢さを強調してしまっていた。
「しかしですね・・・」
「いやいや、キルヒマンさんよぉ。こりゃ、勇者の坊ちゃんの言う通りだぜ?俺らはあくまで露払いよ。本当にやばい奴が現れてからが、勇者様の出番ってもんだろ?」
「そ、そうそう!エルトンの言う通りですよ!雑魚の処理は僕達に任せて、レイモンド様には御力を温存していてもらわないと!」
尚も食い下がろうとしていたカイに、意外な人が口を挟んではエヴァンへと援護射撃をしている。
エヴァンの言葉に同調し、その発言を補強する言葉を述べたエルトンは、カイにもうそれ以上は口を出すなと凄んで見せている。
そんな相棒の意外な機転に、一瞬驚きの表情を見せたケネスは慌ててそれに同調すると、相棒の言葉は間違っていないと主張していた。
「うむ!二人の言う通りなのだ!キルヒマンも、それでいいな?」
「はぁ・・・分かりました」
自分以外の全ての人が同じ意見を主張する中、自分だけが一人別の意見を述べ続けるのは難しい。
エルトンとケネスの擁護を受けて、完全にその立場を確固たるものにしたエヴァンに、もう聞いてくるなと言われれば、カイももはや黙るしかない。
今だにどこか納得いかない様子を見せるカイも、そんな圧力に屈しては納得の言葉を呟いていた。
「駄目じゃないですか、キルヒマンさん!あんな事聞いちゃ!貴方も理解した上で、今回の事に参加したんでしょう?」
「理解・・・?それは・・・レイモンド様が勇者だという事を、ですか?」
カイが納得示した事で満足したのか、彼から離れていったエヴァンと入れ替わるように、ケネスが彼の下へと近づいては耳元で囁いてくる。
その内容はカイの先ほどまでの発言を叱責するもので、カイにある事実の確認を求めるものであった。
それは彼らが共有している筈の、ある約束事を改めて確認するものであったが、それに心当たりのないカイは、取りあえず真っ先に思いついた秘密といえなくもない事実についてを口にしていた。
「そうです!レイモンド様が勇者だという事です!それを守ってくれないと、困りますよ!」
「なるほどなるほど・・・分かりました。これからは気をつけます、すみませんでした」
「いえ、分かってくれればいいんです。その、くれぐれも気をつけてくださいよ?レイモンド様の、勇者様のご気分を害さないように!」
カイが適当に口走った事実は、意外なほどに正鵠を得ている。
確かにケネスが言いたかった事も、エヴァンが勇者であるという事を周りで守ろうという事であった。
ケネスの言葉に、カイは先ほどの振る舞いが勇者の気分を害する行動だったの解釈し、納得を示している。
そんなカイの態度にケネスも、彼がエヴァンが勇者であると周りが必死に守り、盛り立てているのだと理解してくれたと考え、その気分を害してはいけないとだけ言い残して去っていく。
その背中を見送りながら、カイは一人ようやく事態が飲み込めたと深く頷いていた。
「そうか、そうだよな。勇者が為すべきなのは大物の討伐だけで、雑魚の処理ではないものな。あんな程度の相手では、やる気にならなくても当然か。悪い事をしてしまったのかもしれないな、反省しないと」
カイはケネス達の言葉に、エヴァンが本当に手を下すまでもないから、その力を振るわなかったのだと解釈していた。
そんな彼は勇者であるエヴァンに、失礼な事を言ってしまったと反省している。
しかしカイが勇者の力を、その目にしたいという事実は、もはや動かせような欲求となってしまっていた。
「う~ん、しかしどうしても戦っている所が見たいな・・・うん、そうだ。ヴェロニカ達を動かして、少し刺激してみるか。うまく事が運べば、勇者様に恩を売る事が出来るかもしれないしな」
勇者が実際に戦っている所をどうしても見てみたいカイは、ヴェロニカ達を動かしてでも、それを実現させようと思い立つ。
彼は一人一行から離れると、壁に向かって手を伸ばす。
そして、ヴェロニカ達へと静かに命令を下していた。
「手緩いのではないか、ヴェロニカ。手加減は許さん、全力でやれ」
と。
「わざわざ自分が手を下すまでもない、そう仰りたいのございましょう?坊ちゃま」
「そ、それだ!そうアビーの言う通り、私自ら手を下すまでもない相手だからな、彼らに任せているのだ!勿論、彼らに手が終えない敵が現れたら、私自ら手を下すのもやぶさかではないぞ?その時はこうズバッとだな・・・一刀両断にしてやるのだ!!」
適当な言い訳が思い浮かばず、視線を彷徨わせる事しか出来ずにいたエヴァンに、アビーが素早く助け舟を出していた。
彼女はこれまで現れた敵程度では、エヴァン自ら手を下すまでもないと語っている。
アビーの言葉にこれ幸いと飛びついたエヴァンは、彼女が話していないことまで大袈裟に話し、決して戦えないのではないのだと猛烈にアピールしている。
エヴァンが自らの力強さのアピールのために掲げた両腕はしかし、寧ろその細い手足に彼の華奢さを強調してしまっていた。
「しかしですね・・・」
「いやいや、キルヒマンさんよぉ。こりゃ、勇者の坊ちゃんの言う通りだぜ?俺らはあくまで露払いよ。本当にやばい奴が現れてからが、勇者様の出番ってもんだろ?」
「そ、そうそう!エルトンの言う通りですよ!雑魚の処理は僕達に任せて、レイモンド様には御力を温存していてもらわないと!」
尚も食い下がろうとしていたカイに、意外な人が口を挟んではエヴァンへと援護射撃をしている。
エヴァンの言葉に同調し、その発言を補強する言葉を述べたエルトンは、カイにもうそれ以上は口を出すなと凄んで見せている。
そんな相棒の意外な機転に、一瞬驚きの表情を見せたケネスは慌ててそれに同調すると、相棒の言葉は間違っていないと主張していた。
「うむ!二人の言う通りなのだ!キルヒマンも、それでいいな?」
「はぁ・・・分かりました」
自分以外の全ての人が同じ意見を主張する中、自分だけが一人別の意見を述べ続けるのは難しい。
エルトンとケネスの擁護を受けて、完全にその立場を確固たるものにしたエヴァンに、もう聞いてくるなと言われれば、カイももはや黙るしかない。
今だにどこか納得いかない様子を見せるカイも、そんな圧力に屈しては納得の言葉を呟いていた。
「駄目じゃないですか、キルヒマンさん!あんな事聞いちゃ!貴方も理解した上で、今回の事に参加したんでしょう?」
「理解・・・?それは・・・レイモンド様が勇者だという事を、ですか?」
カイが納得示した事で満足したのか、彼から離れていったエヴァンと入れ替わるように、ケネスが彼の下へと近づいては耳元で囁いてくる。
その内容はカイの先ほどまでの発言を叱責するもので、カイにある事実の確認を求めるものであった。
それは彼らが共有している筈の、ある約束事を改めて確認するものであったが、それに心当たりのないカイは、取りあえず真っ先に思いついた秘密といえなくもない事実についてを口にしていた。
「そうです!レイモンド様が勇者だという事です!それを守ってくれないと、困りますよ!」
「なるほどなるほど・・・分かりました。これからは気をつけます、すみませんでした」
「いえ、分かってくれればいいんです。その、くれぐれも気をつけてくださいよ?レイモンド様の、勇者様のご気分を害さないように!」
カイが適当に口走った事実は、意外なほどに正鵠を得ている。
確かにケネスが言いたかった事も、エヴァンが勇者であるという事を周りで守ろうという事であった。
ケネスの言葉に、カイは先ほどの振る舞いが勇者の気分を害する行動だったの解釈し、納得を示している。
そんなカイの態度にケネスも、彼がエヴァンが勇者であると周りが必死に守り、盛り立てているのだと理解してくれたと考え、その気分を害してはいけないとだけ言い残して去っていく。
その背中を見送りながら、カイは一人ようやく事態が飲み込めたと深く頷いていた。
「そうか、そうだよな。勇者が為すべきなのは大物の討伐だけで、雑魚の処理ではないものな。あんな程度の相手では、やる気にならなくても当然か。悪い事をしてしまったのかもしれないな、反省しないと」
カイはケネス達の言葉に、エヴァンが本当に手を下すまでもないから、その力を振るわなかったのだと解釈していた。
そんな彼は勇者であるエヴァンに、失礼な事を言ってしまったと反省している。
しかしカイが勇者の力を、その目にしたいという事実は、もはや動かせような欲求となってしまっていた。
「う~ん、しかしどうしても戦っている所が見たいな・・・うん、そうだ。ヴェロニカ達を動かして、少し刺激してみるか。うまく事が運べば、勇者様に恩を売る事が出来るかもしれないしな」
勇者が実際に戦っている所をどうしても見てみたいカイは、ヴェロニカ達を動かしてでも、それを実現させようと思い立つ。
彼は一人一行から離れると、壁に向かって手を伸ばす。
そして、ヴェロニカ達へと静かに命令を下していた。
「手緩いのではないか、ヴェロニカ。手加減は許さん、全力でやれ」
と。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。
まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。
しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。
怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる