ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
250 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

そして彼はそう囁いた 1

しおりを挟む
 しかし、それが叶う事はない。

「おっ、また出たな!こりゃ、幸先いいな!」
「幸先って言うには、もう結構戦ってきてるけどね」

 先ほどの戦いよりもさらにあっさりと敵を片付けてしまったエルトンは、その終わりに再び出現した宝箱を目にしては歓声を上げている。
 ケネスも彼の発言に突っ込みを入れはしていたが、その唇はどこかつり上がっており、嬉しそうな表情を隠せてはいなかった。

「おおっ、凄いではないか!どうだ?これはもう開けても構わないのか?」
「あ、大丈夫ですよ。もう一通り、チェックしたので」
「そうか!では、開けるぞ・・・おおっ!また入っていたぞ!!これは凄いのではないか?」

 出現した宝箱の存在に、早く開けたくて堪らないという様子のエヴァンが早速駆け寄ってきている。
 エヴァンの問い掛けに既に必要なチョックは済ませたと話すケネスは、彼のそんな反応を予測していたのだろう。
 ケネスから許可を貰ったエヴァンはそれに早速手を掛けると、中から先ほど見つけたのと同じ小ぶりなガラス瓶を掴み上げていた。

「流石でございます、坊ちゃま。坊ちゃまの威光が、このダンジョンにそのようなものを差し出させたのでございましょう」
「ふふふ・・・そうだろうそうだろう!私ほどの人間になると、こういったものも向こうから寄ってくるのだ!はーっはっはっは!!」

 エヴァンの幸運を褒め称えるアビーの言葉に、彼は殊更調子に乗っては背中を仰け反らせて高笑いを上げている。
 彼がのたまっている事が事実がどうかは分からないが、この出来事が幸運である事は間違いないだろう。
 訪れる冒険者が増えた事によって、このダンジョンは慢性的な魔力不足に陥っている。
 そのため出現する宝箱の量や、そこから出現するアイテムの質を大幅に落としている筈であった。
 にもかかわらず、エヴァンが手に入れたアイテムは、まさにこのダンジョンの目玉の品とも言えるものであり、それはまさに彼の豪運っぷりを物語っているといっても過言ではなかった

「勇者の坊ちゃんの威光が何だかは知らねぇが、運がいいのは確かだな」
「そうだね。こうも立て続けに当たりを引くなんて・・・こういうのを、持ってるって言うのかな?」

 エルトンとケネスの二人も、エヴァンとアビーのやり取りに呆れた様子を見せていても、その幸運については認めていた。
 彼らは生まれからして自分達とは違うエヴァンに、何か特別なものを感じているようだった。

「うむむ・・・しかしこうもたくさん見つけてしまうと、持ち歩くのにも苦労するな」
「あぁ?そんなもん勇者の坊ちゃんが持ってるこたぁねぇだろ。何のためにキルヒマンさんがついてきてると思ってんだよ?」

 宝箱から取り出したガラス瓶を両手に抱えたエヴァンは、もはや持ちきれないとそれに視線を落としながら困った表情を見せている。
 そんな彼の言葉に、エルトンは呆れた様子でカイの事を指し示していた。

「おぉ!そうだったな、キルヒマンがいたのだ!」

 カイがこの一行に同行しているのは、ダンジョンの案内するという役割もあったが、それ以上に荷物持ちとしてついてきているという側面が強かった。
 そんな彼の存在を思い出したエヴァンは、両手に抱えたガラス瓶を落とさないように注意しながら、トコトコと彼の下へと駆け寄っていく。

「では、キルヒマン。これを頼んでもいいか?大事なものだからな、壊さないように注意するのだぞ!」
「それは構わないのですが・・・その、聞いてもよろしいでしょうか?」

 治癒のポーションは確かに、貴重で高価な代物だ。
 しかしエヴァンほどの立場の人物であれば、それほど入手の難しいものでもないだろう。
 そんなアイテムをとても大事そうにエヴァンが扱っているのは、彼がそれだけこの冒険を楽しんでいるという証左であろう。
 しかし彼から治癒のポーションを受け取っているカイは、そんな事よりも彼に尋ねたい事があるようであった。

「何だ?別に構わないぞ?ん、もしかしてキルヒマンもこのポーションが欲しいのか?それなら心配しなくとも、ちゃんと皆に分配して―――」
「いえ、そうではなくてですね・・・その、勇者様は戦われないのですか?先ほどから冒険者のお二方ばかり戦われていますが・・・」

 どこか言いにくそうにしているカイの様子に、エヴァンはその質問が取り分の話だと察し、ちゃんと分け前は用意している笑顔で話そうとしていた。
 しかしカイが問いかけたかったのはそんな事ではなく、エヴァンが魔物を前にしてもその背中に括り付けた立派な大剣に、頑なに手を伸ばそうともしないという事についてであった。
 勇者の実力を一目でもいいので確認したいカイからすれば、それはとても放っておく事は出来ない疑問である。
 しかしそれを問い掛けられたエヴァンは急に言葉に詰まり、きょろきょろと瞳を彷徨わせ始めてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...