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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
勇者はそれ故に迷わない
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「あれー?助けに来たんだけどなぁ・・・何かボク、相手にされてない感じ?」
意気揚々と助けに駆けつけたリタは、自分を無視して繰り広げられる激闘に阻害感を感じてしまっていた。
今までどのダンジョンや魔物を前にしても、この聖剣を掲げれば誰しもが目の色を変えて襲ってきたものであった。
しかしこの場では何故か誰も彼女の方を見ようとはせずに、ある一点に向かって殺到していくようだった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・リ、リタ!いきなり飛び出してはいけないと、いつも言っているでしょう!!危ないじゃないです、か・・・・あれ、おかしいですね。あの魔物達は、何故こちらにやってこないのです?」
リタのすぐ後ろにまで迫っていたマーカスも、その最後に一気に加速しては飛び込んでいった彼女の背中までは追いつけはしない。
一人魔物の群れの中へと突っ込んでいったリタに、慌てて追いついたマーカスは乱れた息を必死に整えては、彼女にそんな危ない真似は控えるように苦言を呈している。
彼はどうにか呼吸の整った身体を起こすと、すぐに戦闘態勢を取ろうとしていたが、当然いる筈だと思っていた魔物の姿が周辺にない事に不思議そうな表情をみせていた。
「う~ん、何でなんだろう?何か、ボクの事なんか目に入らない感じなんだよね」
「はぁ・・・そんな事もあるんですね」
リタと共に冒険し、その戦いにもずっと付き従ってきたマーカスは、だからこそその見慣れない光景に対して間の抜けた感想を漏らしていた。
リタに群がる魔物達から必死に彼女の背中を守り、その傷を癒す事が日常であった彼からすれば、この光景はまさに異世界に入り込んでしまったかのような違和感のある景色なのだろう。
彼もまさかこの光景が、勇者を狙う魔物達によって作られているとは思いもしない筈だ。
ましてやその勇者がリタではなく、ただ彼女に憧れてそのコスプレをしている少年によって作られているなど。
「しかしですね、リタ。彼らが危ない状況なのは間違いないんでしょう?助けに行かなくていいんですか?」
魔物達がリタに向かって我先を争っては襲い掛かってこないこの状況には、確かに違和感がある。
しかしその違和感とは関係なく、今その魔物達に襲い掛かられている冒険者達の一行が、この向こうにはいる筈なのだ。
リタはそもそも彼らを助けるためにここへと飛び込んだ筈なのに、何故そんなにものんびりとしているのかと、マーカスは純粋に疑問を感じ彼女へとそれを問い掛けていた。
「だって大丈夫そうだし、ボクが行かなくてもいいかなって」
「えっ!?そ、そうなんですか?とてもそうは見えませんが・・・それどころか今すぐ助けに入らないと不味いような・・・」
マーカスの疑問に、リタは意外な返答を返す。
彼女は魔物の群れに取り囲まれ、今にも押し潰されてしまいそうな冒険者の一行を前に、彼らは大丈夫だと言ってのけたのだ。
そんなリタの言葉に驚くマーカスは、彼女と魔物達に取り囲まれている冒険者の一行を交互に見比べては信じられないという表情を作っている。
それは欠片ほども危機感を感じさせない表情のリタのそれとはまさに対照的なもので、彼は最悪一人でも助けに向かおうとジリジリとそちらへと足を向けているようだった。
「マーカス君も感じない?何かこう・・・向こうから、ぞわぞわーってオーラみたいなのが漂ってくるのを」
リタが感じている気配とは、一体何なのであろうか。
少なくともこの場には、そんな存在など姿かたちもない筈なのに。
「そ、そんなもの感じる訳がないじゃないですかっ!!貴方が行かないのなら、私一人でも行きますよ!!勇者が人を見捨てたなんて評判が立ったら、大問題なんですから!!」
リタが語る気配など欠片ほども感じる事の出来ないマーカスは、一刻も早く追い込まれている冒険者達を助けようと、そちらへと足を向けている。
その一行に対してリタほどに愛着のない彼からすれば、彼らはそうまでして助けたいと思う存在ではない。
しかしここで勇者が窮地に陥った冒険者を見捨てたという噂が立ってしまうと、それを上の者から責められるのは他ではない彼なのだ。
そんな立場にある彼が、この目の前の状況を見過ごせる筈もない。
一向に動こうとする気配のないリタに痺れを切らしたマーカスは、もはや一人でも助けに向かうとそちらへと駆け出し始めていた。
「う~ん、大丈夫だと思うんだけどなぁ・・・」
彼らには危険がないと何故かはっきりと確信しているリタはしかし、マーカスを一人で魔物の群れへと突っ込ませる訳にもいかず、のんびりとしたペースでそちらへと歩みを進めていた。
しかしその動きは、とてもではないがこれから戦場へと向かう者のそれではない。
彼女のそのゆっくりとした動きでは、戦場へとつく頃には戦闘そのものが終わってしまいそうであった。
「勇者様!!勇者様、お助けください!!!」
その時、響いた声は間違いようのないほど助けを求めていた。
そしてそれは、勇者という特別な存在に向かってだ。
そんな声に反応しない者が、果たして勇者と呼ばれるだろうか。
当然、違う。
「はーい、今行きまーす!!」
助けを求める必死な声に対して、リタが返した返事は軽い。
しかしその決断は早く、迷いもない。
返した返事と同時に駆け出し始めた彼女はすぐに全速力へと到達し、その猛烈なスピードをそのまま乗せて一気に飛び跳ねていた。
「あっ!?ちょっと、リタ!!また勝手に突っ込んで!!行くなら行くと先に・・・あぁ、もう!!」
勢いに乗ったまま大きく飛び跳ねたリタは、一瞬の内に先を走っていたマーカスを追い越していく。
自分の頭上を飛び越えては、魔物達の中心へと降り立っていく彼女の姿を見送ったマーカスは、苛立ちに頭を掻き毟ると、さらにスピードを速めてそちらへと駆け出してゆく。
その顔には疲れきった哀愁と、どこか僅かな安堵が浮かんでいた。
意気揚々と助けに駆けつけたリタは、自分を無視して繰り広げられる激闘に阻害感を感じてしまっていた。
今までどのダンジョンや魔物を前にしても、この聖剣を掲げれば誰しもが目の色を変えて襲ってきたものであった。
しかしこの場では何故か誰も彼女の方を見ようとはせずに、ある一点に向かって殺到していくようだった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・リ、リタ!いきなり飛び出してはいけないと、いつも言っているでしょう!!危ないじゃないです、か・・・・あれ、おかしいですね。あの魔物達は、何故こちらにやってこないのです?」
リタのすぐ後ろにまで迫っていたマーカスも、その最後に一気に加速しては飛び込んでいった彼女の背中までは追いつけはしない。
一人魔物の群れの中へと突っ込んでいったリタに、慌てて追いついたマーカスは乱れた息を必死に整えては、彼女にそんな危ない真似は控えるように苦言を呈している。
彼はどうにか呼吸の整った身体を起こすと、すぐに戦闘態勢を取ろうとしていたが、当然いる筈だと思っていた魔物の姿が周辺にない事に不思議そうな表情をみせていた。
「う~ん、何でなんだろう?何か、ボクの事なんか目に入らない感じなんだよね」
「はぁ・・・そんな事もあるんですね」
リタと共に冒険し、その戦いにもずっと付き従ってきたマーカスは、だからこそその見慣れない光景に対して間の抜けた感想を漏らしていた。
リタに群がる魔物達から必死に彼女の背中を守り、その傷を癒す事が日常であった彼からすれば、この光景はまさに異世界に入り込んでしまったかのような違和感のある景色なのだろう。
彼もまさかこの光景が、勇者を狙う魔物達によって作られているとは思いもしない筈だ。
ましてやその勇者がリタではなく、ただ彼女に憧れてそのコスプレをしている少年によって作られているなど。
「しかしですね、リタ。彼らが危ない状況なのは間違いないんでしょう?助けに行かなくていいんですか?」
魔物達がリタに向かって我先を争っては襲い掛かってこないこの状況には、確かに違和感がある。
しかしその違和感とは関係なく、今その魔物達に襲い掛かられている冒険者達の一行が、この向こうにはいる筈なのだ。
リタはそもそも彼らを助けるためにここへと飛び込んだ筈なのに、何故そんなにものんびりとしているのかと、マーカスは純粋に疑問を感じ彼女へとそれを問い掛けていた。
「だって大丈夫そうだし、ボクが行かなくてもいいかなって」
「えっ!?そ、そうなんですか?とてもそうは見えませんが・・・それどころか今すぐ助けに入らないと不味いような・・・」
マーカスの疑問に、リタは意外な返答を返す。
彼女は魔物の群れに取り囲まれ、今にも押し潰されてしまいそうな冒険者の一行を前に、彼らは大丈夫だと言ってのけたのだ。
そんなリタの言葉に驚くマーカスは、彼女と魔物達に取り囲まれている冒険者の一行を交互に見比べては信じられないという表情を作っている。
それは欠片ほども危機感を感じさせない表情のリタのそれとはまさに対照的なもので、彼は最悪一人でも助けに向かおうとジリジリとそちらへと足を向けているようだった。
「マーカス君も感じない?何かこう・・・向こうから、ぞわぞわーってオーラみたいなのが漂ってくるのを」
リタが感じている気配とは、一体何なのであろうか。
少なくともこの場には、そんな存在など姿かたちもない筈なのに。
「そ、そんなもの感じる訳がないじゃないですかっ!!貴方が行かないのなら、私一人でも行きますよ!!勇者が人を見捨てたなんて評判が立ったら、大問題なんですから!!」
リタが語る気配など欠片ほども感じる事の出来ないマーカスは、一刻も早く追い込まれている冒険者達を助けようと、そちらへと足を向けている。
その一行に対してリタほどに愛着のない彼からすれば、彼らはそうまでして助けたいと思う存在ではない。
しかしここで勇者が窮地に陥った冒険者を見捨てたという噂が立ってしまうと、それを上の者から責められるのは他ではない彼なのだ。
そんな立場にある彼が、この目の前の状況を見過ごせる筈もない。
一向に動こうとする気配のないリタに痺れを切らしたマーカスは、もはや一人でも助けに向かうとそちらへと駆け出し始めていた。
「う~ん、大丈夫だと思うんだけどなぁ・・・」
彼らには危険がないと何故かはっきりと確信しているリタはしかし、マーカスを一人で魔物の群れへと突っ込ませる訳にもいかず、のんびりとしたペースでそちらへと歩みを進めていた。
しかしその動きは、とてもではないがこれから戦場へと向かう者のそれではない。
彼女のそのゆっくりとした動きでは、戦場へとつく頃には戦闘そのものが終わってしまいそうであった。
「勇者様!!勇者様、お助けください!!!」
その時、響いた声は間違いようのないほど助けを求めていた。
そしてそれは、勇者という特別な存在に向かってだ。
そんな声に反応しない者が、果たして勇者と呼ばれるだろうか。
当然、違う。
「はーい、今行きまーす!!」
助けを求める必死な声に対して、リタが返した返事は軽い。
しかしその決断は早く、迷いもない。
返した返事と同時に駆け出し始めた彼女はすぐに全速力へと到達し、その猛烈なスピードをそのまま乗せて一気に飛び跳ねていた。
「あっ!?ちょっと、リタ!!また勝手に突っ込んで!!行くなら行くと先に・・・あぁ、もう!!」
勢いに乗ったまま大きく飛び跳ねたリタは、一瞬の内に先を走っていたマーカスを追い越していく。
自分の頭上を飛び越えては、魔物達の中心へと降り立っていく彼女の姿を見送ったマーカスは、苛立ちに頭を掻き毟ると、さらにスピードを速めてそちらへと駆け出してゆく。
その顔には疲れきった哀愁と、どこか僅かな安堵が浮かんでいた。
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