ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

食い違う思惑 1

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「いっくよーーー!!そーーーれっ!!」

 そんな間の抜けた声を上げながら、降ってきた存在が彼らにとって一番の脅威であるなどと、誰が考えただろうか。
 しかし事実として、間違いなくそれはそうした存在であった。

『何だ、何かが光って・・・うぎゃぁああぁぁっ!!?』
『どうしたっ!?何が・・・ひぃぃぃっっ!!?』

 瞬いた光が鋭過ぎれば、それが攻撃であったと認識するのも難しくなる。
 切れぬものなど存在しないと謳われる剣の刃は、それに切られたものの認識すらも切り裂いて、痛みをすぐには届けない。
 それでも断ち切られた腕や足が崩れて落ちれば、その吹き出る血潮によって痛みを知ることは出来る。
 そうしてようやく自らが切り伏せられたと気がついた魔物達は、それぞれに悲痛な悲鳴を上げ始めていた。

「よし、どうにか間に合ったみたいだね!ボクが来たからには、もう大丈夫だよ君達!!」

 エヴァンへと襲いかかっていた魔物達を蹴散らし、その周辺の安全を確保したリタは、その魔物達からの返り血を浴びてすらいない聖剣を肩へと担ぐと、彼らにもう大丈夫だと宣言していた。

「えっ!?な、何が・・・き、君は一体?」
「ん?ボクは呼ばれたから来たんだよ?君じゃないの、ボクを呼んだのは?」

 絶体絶命の状態がいきなり救われたとしても、それが上空から突然降ってきた少女の手によったとなれば、事態を飲み込めないのも無理のない話しだ。
 混乱した様子で突然目の前に現れたリタに対して、何者かと尋ねるエヴァンは、彼女を警戒しているアビーによって守られている。
 彼の問い掛けに首を傾げたリタは、君が呼んだんじゃないのかと逆に聞き返していた。

「おい、大丈夫か!!」
「何故、まだここにいるんですか!?すぐに逃げてくださいと・・・き、君は」

 エヴァン達が絶体絶命の状況にある事に気付いたのは、何も助けを請われたリタだけではない。
 彼らが逃げるために時間を稼いでいた冒険者の二人、エルトンとケネスもいつまで経ってもそこから離れようとしない彼らに、その危機を察してこの場へと駆けつけてきていた。
 そんな二人が目にしたのは、既に危機が過ぎ去ったこの場所と、そこに降り立った少女の姿であった。

「あー、お兄さん達!やっほやっほ!助けに来たよー!」

 彼女の姿を目にして固まってしまったエルトン達と違い、彼らの姿を目にしたリタは嬉しそうに手を振っている。
 彼女はもはやその場に危険がないように振る舞い、気軽な様子で彼らの下へと駆け寄っていく。
 事実そんな無防備な彼女の振る舞いにも、周り佇む魔物達は誰も彼女に手を出そうとはしないようだった。

「凄ぇな、これが勇者の―――」
「それは不味いって、エルトン!!」
「あぁ?今更何だよ?もうそれ所じゃねぇだろ?」
「それは、そうかもしれないけど・・・」

 たった一撃の攻撃で、彼らが散々苦労していた魔物達を蹴散らしてしまったリタの実力に、エルトンは素直に感心の声を漏らしている。
 しかしその言葉には、この場では言ってはならない単語が含まれていた。
 そんな彼の口を慌てて塞いだケネスに、エルトンはもはや今はそれ所ではないと呟く。
 確かに絶体絶命の状態は超えたとはいえ、今もまだ魔物達の大群に囲まれている状態なのは間違いないのだ。
 そんな状況でエヴァンのお遊びに付き合っても、それで命を失えば貰える筈の報酬も意味を成さなくなる。
 そうであるならば、今はまずこの場を切り抜ける事を優先すべきだろう。
 そう語るエルトンの言葉に、ケネスも納得を示すしかなかった。

「ふっふ~ん、そうでしょそうでしょ!結構凄いんだよねー、ボクって!」

 ケネスが慌てて遮った筈の言葉もリタは聞き逃す事はなく、それできっちりと調子に乗っては胸を反らしている。
 普段ぐちぐちと文句ばっかりを零してくる神官と、逆におべっかばかりを述べてくる者達に囲まれている彼女からすれば、エルトンのそんな素直な賞賛は殊更嬉しいものであった。

「どうなってるんだ、これ?あの子は一体、誰なんだ?そういえば、村でも見かけたような・・・あの二人の知り合いの冒険者か?いや、今はそれよりも」

 ようやく願い続けてきたものがお目にかかれそうな、まさにその瞬間にそれを掻っ攫っていった少女の姿に、カイは訳が分からないと疑問を漏らしている。
 ましてや群がる魔物達を一撃で蹴散らした少女が、そんなこと気にも留めていないと談笑する姿を目にすれば、その光景を頭が理解する事を拒んでも仕方のないことであろう。
 カイはその少女の正体を探ろうと一瞬思考を巡らし始めていたが、彼には今それよりも優先しなければならない事があった。

『レクスにニック!お前達、今の内に勇者に攻撃出来るか!?別に無理をする必要はない、彼に剣を抜かせるだけでいいのだ!』

 乱入してきた少女によって蹴散らされてしまったためか、エヴァンの下へと群がっていた魔物達は明らかにその勢いを失ってしまっている。
 そんな状態では、彼らにエヴァンを襲うことなど出来はしないだろう。
 しかし危機的状態が過ぎ去った今の時間は凪ぎへと入っており、緩んだ気は敵の急襲になど備えてはいない。
 そんな今ならば、たった二人のゴブリンにでも勇者の喉元に手が届くだろう。
 ましてやそれが、ニックとレクスという手練れの二人であるならば尚更。

『ゆ、勇者にですか?しかしあれは・・・』
『いや、無理だろあれは。俺達じゃ、近づけもしないと思うぜ?大体、剣ならとっくに抜いてるだろ?』

 しかしカイのそんな言葉にも、その二人のゴブリンは明らかに乗り気ではない様子をみせていた。
 彼らは何故か揃って同じ方向に目を向けては、先ほど飛び込んできた少女を見詰めている。
 そんな二人の様子に、カイは一体何を言っているんだという態度で、エヴァンの方を指し示していた。

『お前達、何を言ってるんだ?別にあの少女を相手にする必要はないんだぞ?勇者と、あそこの少年と戦って欲しいだけなのだが・・・?』
『えっと、そのですね・・・リンデンバウム様は、我々に勇者と戦って欲しいのですよね?そうなると、我々はあの少女と戦う事になると思うのですが・・・?』
『・・・?』

 エヴァンが勇者だと思い込んでいるカイの目には、リタがその手に持っている聖剣の輝きが映らないらしい。
 そんなカイの素っ頓狂な言葉にも、圧倒的に下っ端なレクスには真正面から否定する事は出来ない。
 そのため彼はなるべく遠回りに言葉を濁しては、カイにリタこそが勇者だと伝えようと頑張るが、それはカイの頭を斜めに傾けるばかり。
 一向に噛み合いそうにない二人をよそに、件の少女へとエヴァン本人が歩み寄ろうとしていた。
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