ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

ボス戦 2

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『あぁ?んなこと言ってねぇで、さっさと殺して・・・って、不味いんだったなそういえば。連れがいたら、生き証人だったかなんだったかにするんだっけか・・・』

 ぐだぐだと文句を零す二人のトロールに、セッキは黙ってさっさといってこいと怒鳴りつけようとしていた。
 しかしそれでは不味いと途中で気がついた彼は、慌てて口を噤んでいる。
 勇者にもし連れがいるならば、それは生かして返せというのは、彼がヴェロニカに散々言い聞かされた事であった。
 それが果たして、どういった効果を狙った事であるかは彼には皆目見当がつかなかったが、折角勇者が連れを連れているこの状況に、それを無視すれば酷い事になるということだけは分かっていた。

『おし!てめぇら、よく聞け。あいつはボコボコにしてもいいが、殺すんじゃねぇぞ。殺さねぇように手加減して、ボコボコにするんだ。それなら、てめぇらもちったぁ楽しめんだろ!』
『こ、殺さずボコボコ?ど、どういう事だで?おで、全然分かんねぇよ』
『そうだでそうだで!おでだぢには難しすぎるよぉ、兄貴ぃ!!』

 圧倒的に実力の劣る相手でも、それを殺さないように手加減しながら戦うという条件を与えれば、それなり難しい相手となる。
 それなら少しは楽しめるだろうというセッキの言葉に、二人のトロールは彼が言っている意味が分からないと暴れていた。

『ちっ、うっせぇなぁ!!黙って従いやがれ!それが出来りゃ、てめぇらの働きを姐さんも旦那だって認めてくれるってもんだ!ちったぁ、気張りやがれ!!』
『旦那?旦那も褒めてくれるの、兄貴?』
『そ、それならおで頑張る!頑張るよ、兄貴!!』

 こんなにも強いセッキが頭を垂れるヴェロニカやカイは、その二人のトロールにとって神にも等しい存在だ。
 そんな存在からお褒めの言葉を賜るかも知れないというセッキの言葉は、彼らをやる気にさせるには十分なものであった。

「ま、不味くないですか?トロールが二体に、あれは・・・もしかすると、噂に聞く鬼とか言う怪物なのでは?話に聞いただけで、あれがどれくらい強いか分かりませんが・・・この雰囲気、私達では手に負えない相手なのでは・・・?」

 戦意を昂ぶらせるように雄叫びを上げている二体のトロールの姿に、マーカスは怯えるように徐々に後ろへと下がっている。
 彼が彼らの会話している声を聞き取ることが出来たのならば、その案外間抜けな内容に拍子抜けしていたかもしれない。
 しかし彼にそれを聞き取ることは叶わず、ただただ恐ろしい怪物達が、なにやら獲物を前に舌なめずりしてるようにしか見えていなかった。

「・・・リタ?聞いていますか?」

 噂でしか聞いた事ない鬼という生き物が、どれほど脅威であるかは彼には分からない。
 しかし目の前にいるその存在が、圧倒的なほどに強者であることはこの肌が感じていた。
 それにトロール自体も、普通はパーティを組んだ冒険者が総出で掛かって討伐するような強大な魔物なのだ。
 それが二体もおり、しかもそれが普通のトロールよりも戦い慣れした雰囲気を放っている。
 そんな状況に、マーカスは既に逃げることを決めたように逃げ腰な態度をとっていたが、肝心のリタが彼のそんな声にも一向に反応する様子がなかった。
 それが何故かは、すぐに分かる。

『っと!まったく・・・行儀が悪いなぁ、お嬢ちゃんよぉ!!』
「ちぃっ!」

 リタがマーカスの言葉に反応しなかったのは、彼女が既に臨戦態勢に入っており、セッキ達の様子をつぶさに観察しては、その隙を窺っていたからだ。
 無言のままに飛び出した彼女が、その隙をついて刃を振り下ろしても尚、セッキはそれを余裕で躱してみせる。
 彼女はそれでも諦めずに追撃を狙っていたが、それはまだまだ余裕そうなセッキによって軽く弾き飛ばされて阻止されてしまっていた。

「な、何をやっているんですか、あなたは!?あんな奴と無理に戦わなくても、逃げればいいのです!!私達は別に、このダンジョンを攻略に来たのではないのですから!」
「・・・マーカス君、それは無理だよ。あいつ、ボク達を逃がす気なんてないから。それに・・・」

 とっくに逃げ出すつもりでいたマーカスは、彼に相談もなく勝手に戦闘を開始してしまったリタに戸惑い食って掛かっていた。
 セッキに弾き飛ばされた勢いを利用してそれから距離を取り、マーカスの下まで帰ってきていたリタは、そんな考えは甘いと彼に返している。
 彼女の見立ては、恐らく間違ってはいないだろう。
 勇者との戦いを楽しむつもりのセッキではあったが、彼女がもし逃げようとすれば、その背中を容赦なく叩き潰す事を迷いはしない。
 最も彼女が先手を仕掛けたのは別の理由があったようだったが、それは彼女自身もうまく言葉に出来ない感覚の話であった。

『はっはぁ!嬢ちゃん、あんたの言う通りだぜ!!あんたらはここに来た時点で、もう逃げ場なんてないん・・・だよな?確か・・・うん、そうだったような気がするぞ!』

 ダンジョンの機能によって翻訳される言葉は、リタ達の会話を一方的にセッキへと伝えていた。
 彼はリタの発言を耳にしては、その通りだと高笑いを上げようとしていたが、それも途中で不安がよぎれば、うまく嗤えなくもなる。
 ヴェロニカ達が立案した計画の詳細など、まともに聞いてもいない彼からすれば、今まさにダミアンがリタ達の逃げ道を完全に塞いだ事など知る由もない。
 ただなんとなく勇者を追い詰め、逃げれなくする計画だということだけは憶えていたセッキは、それを頼りに彼女達がもう逃げることは出来ないのだと思うことにしたようだった。

「ほら、あいつもそう言ってる。多分だけど」
「た、確かに・・・しかし、勝てそうなんですか?私にはちょっと・・・荷が重いように感じるのですが・・・」

 セッキの勝ち誇ったような笑い声を聞いて、リタはそれがもはや自分達に逃げ場がないことを嘲笑っているのだと断定している。
 それは実際、間違ってはいない。
 お互いに通じない言葉が、セッキの最後に濁した表現を誤魔化して、ニヤリと笑った彼の表情だけを強調していた。
 それはどうやらマーカスにも同じように感じられたようで、逃げ腰な態度を改めることはない彼も、ここではもはや戦うことでしか生き残れないと考え始めていたようだった。
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