290 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
勇者リタ・エインズリーの最後 2
しおりを挟む
「うぅ・・・マーカス、君・・・ボクは、ボクは・・・」
それでも生きたいと願うのは、間違っているだろうか。
大切だった、必要だった人を見捨てても、生き残りたいと願うことは許されないだろうか。
だってもう、死んでるよ。
そう囁いた心が、優しいと感じるのは、それだけボクが生きたいと願っているから。
逃げたいと叫んだ心に、聖剣アストライアだけが脈打つようにして、それを否定していた。
その眩い光を放つ剣は、それでも勇者かと輝いている。
そんな願いを、望みを抱く者はそれを手にするに相応しくないと、焼きつくほどにそれは光を放つ。
それはまるで、ボクの存在自体を罰する光のようだった。
「ぁぁ・・・ぁぁ・・・ぁあぁぁあぁああああぁぁっぁぁっ!!!」
それでも、それを手を伸ばしたのは、ボクが勇者だからではない。
生きたいと叫んだ心は、助けたいと望んだボクを許してくれる。
脈打つように輝いた聖剣アストライアは、そんなボクに力を貸すように、暖かくこの身を包んでくれていた。
そうしてボクはきっと、この時ようやく勇者となったのだ。
『何だ?光が・・・はははっ!!!おいおい、どうしたよ!!それがお前の真の姿かぁ?勇者様よぉ!!!』
その暖かな光は、まるで一つの世界をその手にしているかのように、無限の力をこの身体へと流れ込ませている。
それが光だと、瞬いたボクには分からない。
それでもその光はきっと、目の前に立ち塞がる真っ赤な炎と対極を為す輝きとなっているのだろう。
『真っ直ぐ向かってくるだけかぁ?それじゃ、今までと変わらねぇぞ!!』
スローモーションのように流れていく景色は、あまりに速く動いてしまっているからか。
いつか目の前まで迫っていた鬼の姿に、眩く輝いていた光がその形を変えてしまったかのように歪んでいる。
何か軋みを上げるように悲鳴を上げるそれが、力の奔流のぶつかり合いなのだとして、この手の平から伝わるそれは決して途絶えることはない。
だからボクは負けないのだ、そう信じて剣を振るう。
『っ、速!?ちぃ!!?』
鬼が振るった拳を両断するように振るった刃は、僅かに逸れてその指を削ぎ落とすだけで終わる。
それがその身体から吹き上がる、オーラのような力の奔流によるものか、それとも彼の咄嗟の反応によるものかは分からない。
そしてそんな事は、どうでもいいのだ。
一撃で仕留めきれないなら、その命を奪うまでこの刃を振るうだけなのだから。
『くっ、マジか!?がぁぁっ!!』
振り上げた刃を戻す軌道は、瞬く光に不自然な模様を描く。
それはこの腕の力が無理矢理、捻じ曲げた軌跡だろう。
再び振るえる位置に戻った剣は、踏み込んで、より命に近い場所へと狙いを定める。
それはこの小柄な身体にも届く、鬼の腹だ。
そうして奔った刃は、確実にその肉を切り裂いていた。
『舐めるなぁぁぁっ!!!』
深く切り裂いたはずの肉も、その筋肉の鎧に内臓を露出させるまでには届かない。
それはその瞬間に僅かに腰を引いて見せた、鬼の反応によるものかもしれない。
致命傷には届かなかった一撃に、追撃を放とうとしていたボクの腕はしかし、雄叫びを上げた鬼によって弾かれてしまっていた。
振り切った速度を加速するように振るわれた鬼の腕に、この身体はそのまま流されてしまっている。
それならそれで、構わない。
この回転の勢いはきっと、今度こそその命に届くのだから。
『させるかよ!!』
「っ!?」
しかしそれを見逃すほど、目の前の鬼は甘くはない。
ボクが足を着けていた地面ごと蹴り上げるようなその蹴りは、軽々とこの身体を空中へと巻き上げていた。
ぐるりと回った視界に、この身体が上下逆さまになってしまっている。
それは元々狙っていた剣の軌道を逸らしてしまうが、それでもこの腕を止める事は出来ない。
奔った刃の軌跡は、きっとその鬼のどこかを切りつけるだろう。
『だから・・・やらせねぇって言ってんだろうがぁぁぁっ!!!』
しかし、その狙いは叶う事はない。
この身体を蹴り上げた鬼は、その巻き上げたボクの足を掴むと、それを軽々と持ち上げてしまう。
それを足に奔った痛みと、変わっていく視界によって気付いても、もはや抵抗する暇すらなかった。
持ち上げられ、その発生源へと近くなった雄叫びは耳を劈く。
しかしその痛みすら、すぐに感じなくなってしまった。
それはこの身体が、その雄叫びと共に地面へと叩きつけられたからであった。
『おらおら、どうしたぁ!!俺の身体は、首は、心臓はここにあるぞぉ!!!それで切りつけてみろやぁぁぁ!!!』
その痛みと衝撃は、意識の消失と覚醒を繰り返させる。
地面へと叩きつけられる強烈な衝撃は、軽々とこの意識を消し飛ばすが、ざらざらと切り裂かれた肌の痛みが、すぐにその失ったものを取り返させてしまっていた。
しかし覚醒を繰り返す意識も、その間隔は短く浅い。
とてもではないが何か出来そうもないその間隔に、この身体はただ擦り切れていってしまっていた。
「ぅぁ・・・・・・ぁ・・・」
『あぁ?何だって?』
この唇から漏れている呻き声は、もはや意識が発している声ではない。
それは血と、唾液が漏れ出していく過程で発する、副産物でしかないだろう。
その空気が漏れ出すような音を耳にした鬼は、それを聞き取ろうとこの身体を高く持ち上げては、その発生源へと耳を近づけていた。
それでも生きたいと願うのは、間違っているだろうか。
大切だった、必要だった人を見捨てても、生き残りたいと願うことは許されないだろうか。
だってもう、死んでるよ。
そう囁いた心が、優しいと感じるのは、それだけボクが生きたいと願っているから。
逃げたいと叫んだ心に、聖剣アストライアだけが脈打つようにして、それを否定していた。
その眩い光を放つ剣は、それでも勇者かと輝いている。
そんな願いを、望みを抱く者はそれを手にするに相応しくないと、焼きつくほどにそれは光を放つ。
それはまるで、ボクの存在自体を罰する光のようだった。
「ぁぁ・・・ぁぁ・・・ぁあぁぁあぁああああぁぁっぁぁっ!!!」
それでも、それを手を伸ばしたのは、ボクが勇者だからではない。
生きたいと叫んだ心は、助けたいと望んだボクを許してくれる。
脈打つように輝いた聖剣アストライアは、そんなボクに力を貸すように、暖かくこの身を包んでくれていた。
そうしてボクはきっと、この時ようやく勇者となったのだ。
『何だ?光が・・・はははっ!!!おいおい、どうしたよ!!それがお前の真の姿かぁ?勇者様よぉ!!!』
その暖かな光は、まるで一つの世界をその手にしているかのように、無限の力をこの身体へと流れ込ませている。
それが光だと、瞬いたボクには分からない。
それでもその光はきっと、目の前に立ち塞がる真っ赤な炎と対極を為す輝きとなっているのだろう。
『真っ直ぐ向かってくるだけかぁ?それじゃ、今までと変わらねぇぞ!!』
スローモーションのように流れていく景色は、あまりに速く動いてしまっているからか。
いつか目の前まで迫っていた鬼の姿に、眩く輝いていた光がその形を変えてしまったかのように歪んでいる。
何か軋みを上げるように悲鳴を上げるそれが、力の奔流のぶつかり合いなのだとして、この手の平から伝わるそれは決して途絶えることはない。
だからボクは負けないのだ、そう信じて剣を振るう。
『っ、速!?ちぃ!!?』
鬼が振るった拳を両断するように振るった刃は、僅かに逸れてその指を削ぎ落とすだけで終わる。
それがその身体から吹き上がる、オーラのような力の奔流によるものか、それとも彼の咄嗟の反応によるものかは分からない。
そしてそんな事は、どうでもいいのだ。
一撃で仕留めきれないなら、その命を奪うまでこの刃を振るうだけなのだから。
『くっ、マジか!?がぁぁっ!!』
振り上げた刃を戻す軌道は、瞬く光に不自然な模様を描く。
それはこの腕の力が無理矢理、捻じ曲げた軌跡だろう。
再び振るえる位置に戻った剣は、踏み込んで、より命に近い場所へと狙いを定める。
それはこの小柄な身体にも届く、鬼の腹だ。
そうして奔った刃は、確実にその肉を切り裂いていた。
『舐めるなぁぁぁっ!!!』
深く切り裂いたはずの肉も、その筋肉の鎧に内臓を露出させるまでには届かない。
それはその瞬間に僅かに腰を引いて見せた、鬼の反応によるものかもしれない。
致命傷には届かなかった一撃に、追撃を放とうとしていたボクの腕はしかし、雄叫びを上げた鬼によって弾かれてしまっていた。
振り切った速度を加速するように振るわれた鬼の腕に、この身体はそのまま流されてしまっている。
それならそれで、構わない。
この回転の勢いはきっと、今度こそその命に届くのだから。
『させるかよ!!』
「っ!?」
しかしそれを見逃すほど、目の前の鬼は甘くはない。
ボクが足を着けていた地面ごと蹴り上げるようなその蹴りは、軽々とこの身体を空中へと巻き上げていた。
ぐるりと回った視界に、この身体が上下逆さまになってしまっている。
それは元々狙っていた剣の軌道を逸らしてしまうが、それでもこの腕を止める事は出来ない。
奔った刃の軌跡は、きっとその鬼のどこかを切りつけるだろう。
『だから・・・やらせねぇって言ってんだろうがぁぁぁっ!!!』
しかし、その狙いは叶う事はない。
この身体を蹴り上げた鬼は、その巻き上げたボクの足を掴むと、それを軽々と持ち上げてしまう。
それを足に奔った痛みと、変わっていく視界によって気付いても、もはや抵抗する暇すらなかった。
持ち上げられ、その発生源へと近くなった雄叫びは耳を劈く。
しかしその痛みすら、すぐに感じなくなってしまった。
それはこの身体が、その雄叫びと共に地面へと叩きつけられたからであった。
『おらおら、どうしたぁ!!俺の身体は、首は、心臓はここにあるぞぉ!!!それで切りつけてみろやぁぁぁ!!!』
その痛みと衝撃は、意識の消失と覚醒を繰り返させる。
地面へと叩きつけられる強烈な衝撃は、軽々とこの意識を消し飛ばすが、ざらざらと切り裂かれた肌の痛みが、すぐにその失ったものを取り返させてしまっていた。
しかし覚醒を繰り返す意識も、その間隔は短く浅い。
とてもではないが何か出来そうもないその間隔に、この身体はただ擦り切れていってしまっていた。
「ぅぁ・・・・・・ぁ・・・」
『あぁ?何だって?』
この唇から漏れている呻き声は、もはや意識が発している声ではない。
それは血と、唾液が漏れ出していく過程で発する、副産物でしかないだろう。
その空気が漏れ出すような音を耳にした鬼は、それを聞き取ろうとこの身体を高く持ち上げては、その発生源へと耳を近づけていた。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。
まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。
しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。
怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる