ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

そうしてボクは産声を上げる 5

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『どうやら終わったようじゃの・・・やれやれ、わしの空間封鎖は余計なお世話じゃったか』
『そうでもないわよ?あれの魂が、どこかに引っ張られようとするのを確かに感じたもの。貴方の働きがなければ、今回の事は実現しなかったかもしれない・・・本当に感謝しているわ、ダミアン』

 ゾンビと化したリタの姿に、ダミアンは自らの苦労が徒労であったと肩を解すように動かしている。
 その苦労が命を賭すほどのものであったとは、ヴェロニカには知る由もない。
 それでも彼女は、ダミアンに対して心からの感謝を告げていた。
 それは彼女がリタに止めを刺した際に、その魂がどこかへと飛んで行ってしまうのを感じたからだろう。
 ダミアンによって封鎖された空間に、それはすぐに糸が切れてしまったように動かなくなってしまったが、それがなければ彼女の魂は何処かへと消えていってしまっただろう。
 それではこれからの主人の計画に差し障りが出てしまうと肝を冷やしたヴェロニカからすれば、ダミアンの働きは感謝しても仕切れるものではなかった。

『ふむ、それならばよいが。しかし、その技法は当に失われたと思ったが・・・やれやれ、用心はしておくものじゃて』
『確か三代前の勇者にははっきりと復活した記述があって、二代前の勇者も一度復活したと思われる形跡があるのだったかしら?先代の勇者にはその形跡がないと言う話だったけど・・・それってどれくらい前の話?』
『およそ、百年ほど前の話じゃな』

 生まれて二十年を少し過ぎたばかりのヴェロニカには、当時の事は分からない。
 しかし千年、いや万年生きたとも言われる化け猫であるダミアンは、それを実際に目にしたかのように語っていた。
 いや、実際に彼はそれを目にしてきたのだろう。
 遠い目をした彼の瞳には、はっきりとした郷愁の感情が浮かんでいた。

『百年前ね・・・確か、かの狂王トラウゴットが殺されたのだったかしら?その時は彼に虐げられていた魔物達も、勇者に協力したという話を聞くものね。それなら、一度も復活する事なく役目を果たせたとしても、おかしくはないのかしら?』
『しかし彼の者は、そのすぐ後に先代様に殺されておる。それを考えれば復活してもおかしくはないと思ったのじゃがな・・・』
『百年前と言えば、向こうで教会がごたついた時期じゃなかったかしら?それで、それどころではなかったと考えられない?』
『ふむ・・・宗派の分裂か。当時はそれほど大事にはならなかったが、今の状況を見ればその時に技術が持ち出されたと考えるべきかも知れんな』

 勇者の魂の行方について、ヴェロニカとダミアンはそれぞれの知識を持ち寄っては推論を交している。
 そんな彼らの様子を、リタは虚ろな瞳でただただぼんやりと眺め続けていた。

『まぁ、それは後でも良いじゃろう。今はこれをどうするかじゃ。他の僕と同じように、そこに仕舞ってはおかんのか?』

 いつまでも続いてしまいそうな議論に、ダミアンは適当に終止符を打つと、そこにぼんやりと佇んでいるリタへと視線を向けていた。
 彼はどうやらそこに佇み続けている彼女の姿自体に疑問があるようで、それをヴェロニカへと問い掛ける。
 確かにヴェロニカが支配下に置いているアンデッドは、リタ以外その場には姿を見せておらず、彼女の影の中で大人しくしているようだった。

『それは、その・・・カイ様が戻られるまで、ここに出しておいては駄目かしら?あの御方のお考えどおりに仕事をこなしただけとはいえ、やはり成果を直接目にして褒めてもらいたいの』
『ふぉっふぉっふぉっ、そうかそうか!!これは悪い事を聞いてしまったの!よいよい、そうするとええ!』

 ダミアンの指摘に、ヴェロニカは恥ずかしそうにその身体をくねくね悶えさせると、正直にその理由を白状していた。
 ヴェロニカはどうやら、彼女の主人であるカイに褒めてもらいたくて、その成果であるリタをその場に残らせていたようだ。
 そんな彼女の微笑ましい理由に、ダミアンは思わず笑い出すと、そんな野暮なことを聞いてしまった自分を反省するようにおでこを叩いている。
 大袈裟な笑い声を上げては自らの事を揶揄しているかのような振る舞いをみせるダミアンに、ヴェロニカは静かに頬を膨らませると、その僅かに赤らめた顔にじっとりとした瞳を乗せていた。

『さてさて・・・ではわしは、セッキの様子で見てくるとしよう。ヴェロニカ、お主はこの場を整えておいておってくれ。いつカイ様がお戻りになってもよいようにな』
『・・・分かりました!!こちらは私が何とかするので、ご心配なく!!』
『ふぉっふぉっふぉっ!心配など、ちっともしておらんて』

 自らの可愛らしい振る舞いを笑われて、機嫌を損ねてしまったヴェロニカに居心地の悪さを感じたのか、ダミアンはその場からさっさと立ち去ろうと足を急がせる。
 そんなダミアンの背中に、ヴェロニカはぷんすかという擬音が似合うような動きで、両手を振るっては言葉を投げつけていたが、それは彼の笑い声を高くするだけ。
 ダミアンが去った後も一人、ヴェロニカは不満を発散させるように手足を暴れさせていたが、それもやがて静寂へと帰っていく。
 その中で、リタの手の平だけがただ、聖剣によって焼かれ続けていた。
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