ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

メルクリオ・バンディネッリとそのメイド達 2

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「っ!?ニコちゃん、何で邪魔するの!!?離せー!!私はここから逃げたいんだー!!!」
「駄目です!!私が離したらビオちゃん先輩はメルクリオ様の所に行くじゃないですか!!絶対に離しません!!!」
「ちーがーうーのー!!!私はここから逃げたいのー!!何で分かってくれないの、ニコちゃーん!!」
「やれやれ、騒がしいですね」

 メルクリオが差し出す手紙から逃げようとしているビオンダは、彼女を制止しようとしているニコレッタと絡み合って、うまくその場から動くことが出来ない。
 ビオンダは必死にもはやメルクリオの手から手紙を奪う気などないと主張しているが、ニコレッタは聞く耳を持たない。
 そんな彼女達のやり取りに、メルクリオは呆れたように肩を竦めさせていた。

「・・・内容、気になる」
「内容ですか?何て事のない、近況報告ですよ。ですがそうですね・・・これからは少し、忙しくなるかもしれませんね」

 そんな状況にギャーギャーと騒ぎ散らかしている二人の同僚を尻目に、エウラリアは一人冷静にその手紙の内容が気になると呟いていた。
 彼女の低く落ち着いた声は不思議とその騒がしさに掻き消されることはなく、メルクリオの耳へ届く。
 そしてそんな彼の言葉も、すぐ耳元で騒いでいる二人の声に掻き消されることはなかった。

「・・・ふぅん。でも何だか、メルクリオ様嬉しそう」

 これから忙しくなるという主人の言葉にも、エウラリアは対して興味無さそうに流している。
 それは要領の良い彼女にとって、仕事が増えることなど大して負担にもならないからだろう。
 彼女はそれよりも、どこかウキウキと楽しそうにしているメルクリオの様子の方が気になるようだった。

「そう見えますか?ふむ・・・確かに、そうかもしれませんね。久しぶりに胸が高鳴っていることは否定出来ません。この高鳴りは・・・そう、あの方に出会った時以来ですね」

 エウラリアの言葉に自らの口元を押さえたメルクリオは、その口角が自然と上がっていってしまっているのに気付くと、納得したように呟きを漏らしていた。
 自らでも誤魔化しきれない高鳴りに、彼はどこか遠い目をするとそこに郷愁の姿を探している。
 そこに彼が見ていたのは、いつか出会った奇妙な男の姿であった。

「・・・エラに、出来る事、ある?」
「そうですね・・・では今から手紙を書くので、これをミラモンテス兄弟の所に届けてくれませんか?」
「・・・分かった」

 遠い、遠い郷愁に浸っていたメルクリオも、控えめに声を掛けてきたエウラリアの存在に気がつけば、現実にも戻ってくる。
 現実に戻ったメルクリオはエウラリアの言葉に僅かに思考を巡らせると、すぐに手元を広げては手紙を書き始める。
 それはこことは別の場所で今も戦い続けているかつての同僚へと、今彼が知った事実を告げるものだろう。
 我らの主人がやったぞ、と。

「お願いします。あぁそういえば、向こうの戦況はどうなっています?」
「・・・また、膠着状態になったって、聞いた」
「そうですか、では支援物資の手配もお願いします。武具の類は控えめに、食料をメインで・・・ね。彼らが戦いに勝った後に、難癖をつけられては困りますから」
「・・・うん、りょーかい」

 端的な事実だけをしたためたためか、手早く手紙を書き上げたメルクリオは、それをエウラリアへと手渡している。
 彼はそれを手渡す際に、向こうの戦況もエウラリアに尋ねている。
 それに淀みなく応えたエウラリアに満足そうに頷いたメルクリオは、すぐにその対応する指示も追加で下していた。
 それは、彼が始めからその情報を掴んでいたから出来る事だろう。
 戦乱を治めた後の統治にまで気を遣う彼の言動に、エウラリアは若干呆れたような半眼で了解を返していた。

「貴方達も、いつまで遊んでいるのですか?いい加減、仕事に戻りなさい」

 手紙を手に、任された仕事へと向かっていくエウラリアの姿を見送ったメルクリオは、今だに近くで騒いでいる彼女の同僚二人に対して、呆れたように視線を向ける。
 そこにはニコレッタに縛られジタバタと暴れまわっているビオンダと、彼女を捕まえては一仕事終えたと誇らしそうにしているニコレッタの姿があった。

「わ、私は悪くないぞー!!ニコがー、ニコちゃんが私をー!!」
「安心してください、メルクリオ様!ビオちゃん先輩は、こうして私が縛っておきましたから!!」

 メルクリオからのお咎めに私は悪くないと、ビオンダはその短い手足をジタバタと暴れさせては主張している。
 確かにその状態で、仕事に向かうのは不可能だろう。
 しかし彼女の目の前には、まさに今仕事を達成したと満足感を漂わせながら、額に浮かんだ汗を拭っているニコレッタの姿があった。
 彼女のそのやり遂げた表情に、果たして今仕事をしていないのはどちらであろうか。
 客観的に見ても、それはビオンダの方のように思われた。

「・・・彼女は、ウーヴェの話し相手に良いかもしれませんね。ニコレッタ、ついて来なさい。少し遠出しますよ」
「は、はい!分かりました、メルクリオ様!」

 ニコレッタの天然っぷりは、今後の仕事に支障をきたすものかもしれない。
 しかしその性格は、人によっては癒しを感じるものだろう。
 彼女の振る舞いにその波長を感じ取ったメルクリオは、一人寂しく山奥で暮らしているウーヴェの話し相手に彼女がぴったりだと考え、その遠出に同行するように命令を下す。
 メルクリオの指示に慌てて彼へと駆け寄ったニコレッタは、その手に握っていた紐の先端をどこかへと放ってしまう。
 その放物線を、その先で縛られている少女は絶望したような表情で眺めていた。

「ちょ、ちょっと待ってよ!!ニコちゃん!!メルクリオ様ー!!!私を置いてかないでー!!!」

 皆が立ち去った後に一人、メルクリオの執務室に残され縛られているビオンダは、ジタバタと必死に手足を暴れさせながら自分の存在をアピールしている。
 彼女が縛り付けられているのは、来客用の椅子だろうか。
 そのしっかりとした作られた椅子は小柄な彼女には大き過ぎて、その足が床へと届くこともない。
 そんな状況では、彼女はそれをゴトゴトと揺り動かしては、ちょっとずつずらしていくことしか出来ないだろう。

「誰かー!!誰かいませんかー!!!ねぇ、聞こえる!?誰か、誰か助けてー!!!」

 普段はボケているにもかかわらず、こんな時だけはきっちりと扉を閉めていったニコレッタに、防音のしっかりとしたこの部屋からは彼女の叫びも漏れる事はない。
 そんな訳で、彼女がそこから解放されるのは、随分先の話であった。
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