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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
夜の国 1
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エウロペ大陸の内側に存在する広大な内海、かつてその沿岸地域を全て支配下に治めた帝国を讃えて皇海と呼ばれるその海の東端に位置する国に、夜の国と呼ばれている国家があった。
しかしその国が真実、国としての体裁を保っているのかは誰も知らない。
何故ならその国が、他のどの国とも国交を持つことがなく、それどころか一度足を踏み入れて帰った者がいないからだ。
そんな御伽噺のような奇妙な噂を持つ国も、それがヴァンパイアが支配する領域だと知れば、それがあながち噂ではないと理解することが出来る。
その夜の国に今、足を踏み入れようとする者の姿があった。
「・・・やれやれ、ようやくついたか。んん~、やっぱ懐かしの我が家の空気はうまいね」
まるで騙し絵のように、夜の国とその一歩外を出た領域では、はっきりとその景色が変わっていた。
線を引いたように切り替わり、どんよりとした雲が立ち込める夜の国の領域には、もはやまともな日差しすら差し込まない。
そんな淀んだ空気が漂う場所で、背筋を伸ばしてはリラックスした様子を見せる男は、そのぱさぱさの金髪を掻き毟っては周りの景色を懐かしむように眺めていた。
『エルベルト、エルベルト、帰ってきたのか?あぁ、今はフィリップだったか?』
「エルベルトで構いませんよ、我が主」
背筋を伸ばし、長旅のコリを解していた金髪の男、フィリップ・コーニングはどこかから聞こえてきた声に視線を彷徨わせている。
見れば彼の耳元にはどこから現れたのか、パタパタと羽ばたいている蝙蝠の姿があった。
どうやらどこかから響いてきたように聞こえた声も、その蝙蝠を介して聞こえてきたようだ。
その姿を目にしたフィリップは、即座にその場に跪くと、恭しく頭を垂れ最敬礼の仕草をみせていた。
『お主こそ、そう畏まることはない。妾の事はいつものように、アーデちゃんと呼べばよい』
「では、アーデルヘイト様と」
『うぅん、いけずじゃのぅエルベルトは』
自らの使い魔の前で跪くフィリップの姿を目にしたのか、その向こう側の声の主はもっと砕けた態度でよいと呼び掛けていた。
その声に身体を起こし、膝についた汚れを払ったフィリップは僅かに楽な姿勢を取っている。
しかし彼は、その言葉遣いまでも改めることはなかった。
そんな彼の態度に向こう側の声の主、アーデルヘイトは寂しそうに声を転がせる。
その声は心底残念そうな響きを帯びていたが、それを聞いてもフィリップは態度は決して変わることはない。
何故なら、彼は知っているからだ。
童女のような可愛らしい声を響かせるその声の主が、この夜の国の主、偉大なるアーデルヘイト・ファン・ベルヘンその人であると。
「早速でございますが、報告に移らさせてもらってよろしいでしょうか?」
『うん?えぇと・・・今回はどこに行ってもらったのじゃったか・・・おぉ!そうそう、あそこであったな・・・あの・・・』
「クラディスの地に赴任した、カイ・リンデンバウムなるダンジョンマスターについてです」
今は上機嫌に話しているこの声の主が、その気になれば使い魔越しでもこちらを殺すことが出来る。
そんな圧倒的な力を持つ存在であると片時も忘れることのないフィリップは、なるべく手早く仕事を終えてしまおうと報告を急ぐ。
彼の言葉にアーデルヘイトが見せたボケが、果たして本気だったのか、冗談だったのかはフィリップには分からない。
しかし対応を間違えば命がないと分かっている彼は、至って無難に情報を捕捉することでその場を凌いでいた。
『おおっ!!そうじゃったそうじゃった!では、早速・・・んんっ!?こ、これ、お主達止めぬか!今はエルベルトと・・・ぅん!』
フィリップの言葉に、彼をどこへ派遣していたのか思い出したアーデルヘイトは、早速とばかりにその結果を求めていた。
しかしそれも、突如響き渡った彼女の嬌声によって、そんな空気ではなくなってしまう。
彼女は必死にそれを齎したであろう存在に対して注意していたが、どうやらそんな言葉では彼女達は止まらなかったようで、再び艶っぽい声が響いてきていた。
「・・・また、致しておられるのですか?」
『ち、違うのじゃ!!これは決して、妾から求めた訳ではなく・・・娘共がどうしてもと言うから、仕方なくじゃな・・・うぅん!?や、止めぬか、今は・・・ぁんっ!』
そんなアーデルヘイトの声に、流石のフィリップも僅かに呆れたような声を漏らしている。
フィリップのそんな声に慌てたアーデルヘイトは、必死に自分から誘った訳ではないと否定するが、その止まる事のない嬌声にそれが説得力を持つことはなかった。
『や、止めろというておるのにっ!ぅぅん!?―――いい加減に、止めぬかお主達』
「っ!?」
止めろと繰り返すアーデルヘイトの声に、一瞬の沈黙が訪れる。
その後に響いた彼女の怒声は鋭く、そしてそれと共に聞こえてきた、何か押し潰されるような鈍い音はさらに、重い。
予想された結末とはいえど、余りに生々しいその音に、フィリップは一瞬背中を跳ねさせ、そして今は静かに汗を垂らしていた。
しかしその国が真実、国としての体裁を保っているのかは誰も知らない。
何故ならその国が、他のどの国とも国交を持つことがなく、それどころか一度足を踏み入れて帰った者がいないからだ。
そんな御伽噺のような奇妙な噂を持つ国も、それがヴァンパイアが支配する領域だと知れば、それがあながち噂ではないと理解することが出来る。
その夜の国に今、足を踏み入れようとする者の姿があった。
「・・・やれやれ、ようやくついたか。んん~、やっぱ懐かしの我が家の空気はうまいね」
まるで騙し絵のように、夜の国とその一歩外を出た領域では、はっきりとその景色が変わっていた。
線を引いたように切り替わり、どんよりとした雲が立ち込める夜の国の領域には、もはやまともな日差しすら差し込まない。
そんな淀んだ空気が漂う場所で、背筋を伸ばしてはリラックスした様子を見せる男は、そのぱさぱさの金髪を掻き毟っては周りの景色を懐かしむように眺めていた。
『エルベルト、エルベルト、帰ってきたのか?あぁ、今はフィリップだったか?』
「エルベルトで構いませんよ、我が主」
背筋を伸ばし、長旅のコリを解していた金髪の男、フィリップ・コーニングはどこかから聞こえてきた声に視線を彷徨わせている。
見れば彼の耳元にはどこから現れたのか、パタパタと羽ばたいている蝙蝠の姿があった。
どうやらどこかから響いてきたように聞こえた声も、その蝙蝠を介して聞こえてきたようだ。
その姿を目にしたフィリップは、即座にその場に跪くと、恭しく頭を垂れ最敬礼の仕草をみせていた。
『お主こそ、そう畏まることはない。妾の事はいつものように、アーデちゃんと呼べばよい』
「では、アーデルヘイト様と」
『うぅん、いけずじゃのぅエルベルトは』
自らの使い魔の前で跪くフィリップの姿を目にしたのか、その向こう側の声の主はもっと砕けた態度でよいと呼び掛けていた。
その声に身体を起こし、膝についた汚れを払ったフィリップは僅かに楽な姿勢を取っている。
しかし彼は、その言葉遣いまでも改めることはなかった。
そんな彼の態度に向こう側の声の主、アーデルヘイトは寂しそうに声を転がせる。
その声は心底残念そうな響きを帯びていたが、それを聞いてもフィリップは態度は決して変わることはない。
何故なら、彼は知っているからだ。
童女のような可愛らしい声を響かせるその声の主が、この夜の国の主、偉大なるアーデルヘイト・ファン・ベルヘンその人であると。
「早速でございますが、報告に移らさせてもらってよろしいでしょうか?」
『うん?えぇと・・・今回はどこに行ってもらったのじゃったか・・・おぉ!そうそう、あそこであったな・・・あの・・・』
「クラディスの地に赴任した、カイ・リンデンバウムなるダンジョンマスターについてです」
今は上機嫌に話しているこの声の主が、その気になれば使い魔越しでもこちらを殺すことが出来る。
そんな圧倒的な力を持つ存在であると片時も忘れることのないフィリップは、なるべく手早く仕事を終えてしまおうと報告を急ぐ。
彼の言葉にアーデルヘイトが見せたボケが、果たして本気だったのか、冗談だったのかはフィリップには分からない。
しかし対応を間違えば命がないと分かっている彼は、至って無難に情報を捕捉することでその場を凌いでいた。
『おおっ!!そうじゃったそうじゃった!では、早速・・・んんっ!?こ、これ、お主達止めぬか!今はエルベルトと・・・ぅん!』
フィリップの言葉に、彼をどこへ派遣していたのか思い出したアーデルヘイトは、早速とばかりにその結果を求めていた。
しかしそれも、突如響き渡った彼女の嬌声によって、そんな空気ではなくなってしまう。
彼女は必死にそれを齎したであろう存在に対して注意していたが、どうやらそんな言葉では彼女達は止まらなかったようで、再び艶っぽい声が響いてきていた。
「・・・また、致しておられるのですか?」
『ち、違うのじゃ!!これは決して、妾から求めた訳ではなく・・・娘共がどうしてもと言うから、仕方なくじゃな・・・うぅん!?や、止めぬか、今は・・・ぁんっ!』
そんなアーデルヘイトの声に、流石のフィリップも僅かに呆れたような声を漏らしている。
フィリップのそんな声に慌てたアーデルヘイトは、必死に自分から誘った訳ではないと否定するが、その止まる事のない嬌声にそれが説得力を持つことはなかった。
『や、止めろというておるのにっ!ぅぅん!?―――いい加減に、止めぬかお主達』
「っ!?」
止めろと繰り返すアーデルヘイトの声に、一瞬の沈黙が訪れる。
その後に響いた彼女の怒声は鋭く、そしてそれと共に聞こえてきた、何か押し潰されるような鈍い音はさらに、重い。
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