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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
パスカル・キルヒマンの受難 3
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「ひ、ひぇぇぇ・・・こ、怖いよぉ・・・」
メルクリオの背後で所在無さげにふらふらと彷徨っているニコレッタだけが、そんな彼らのやり取りに怯え、悲鳴を漏らしているようだった。
「それで・・・その必要がないとは、どういう事だバンディネッリ?」
「そのままの意味でございますよ、閣下。裏ならば私が取っておきました。向こうの教会も何やら忙しいようですよ。無論、二つの宗派両方ともね」
薄ら寒いやり取り終えたイライアスは、ようやく本題について彼へと問い掛ける。
その言葉にメルクリオは丁寧に頭を下げると、にっこりと笑いながら彼がやろうとしている事は既に、自分がやっておきましたと宣言していた。
「勇者と聖剣の喪失による、パワーバランスの変化か・・・あれを有していたのは、どちらの派閥だったか?確かに、報告書の内容とも一致するが・・・バンディネッリ、貴様もかつてはあの男の部下だった男だ。どうして、それが偽りでないと言える?」
既に裏を取ってあると話すメルクリオの言葉に、イライアスはある程度の納得を示している。
しかし彼は同時に、メルクリオの発言は信用は置けないとも考えていた。
メルクリオはつい一ヶ月ほど前まで、カイ・リンデンバウムの下で働いていた男だ。
そんな男の発言を、どうして信用することが出来るだろうか。
「言えませんね、勿論」
「ならば―――」
イライアスの指摘に、メルクリオはあっさりと降参を認めると、肩を竦めている。
そんな彼の振る舞いに、イライアスはそら見たことかと畳みかけようとするが、その試みは叶うことはない。
「しかし、こうも言えます。結果は同じだと」
「・・・何だと?」
見せた弱みにすかさず畳みかけようとしていたイライアスの言葉を遮るように、メルクリオは不敵な笑顔を見せてはそっと囁いていた。
彼の見せた表情と囁いた言葉の意味が分からないイライアスは、それに思わず問い掛けてしまう。
それこそが望んだ反応だと、メルクリオはその笑みをさらに深くしていた。
「閣下、先ほど裏を取ると仰いましたが。それには我が商会の者を使うのでは?それならば、結果は同じですよ。それとも、自らの部下を使って情報を集めますか?それは構いませんが・・・一体、どれほどの時間が掛かることか・・・リンデンバウム様は今、海の向こうにおられるのですよ?」
メルクリオはイライアス達が裏を取るために情報を集めるならば、自らの商会を使うだろうと話している。
それは恐らく、紛れもない事実であろう。
空を自由に駆け回れる従業員を多数抱え、この大陸の情報を一手に集めている彼の商会以上に素早く情報を集められる組織など存在しない。
それどころか、普段から彼らの存在に甘えきっていたイライアス達には、それ以外に独自の伝など存在しないに等しかった。
「くっ、そういう事か・・・しかし他にも手が・・・うむむ」
メルクリオの長い口上に、ようやく彼の言いたい事を理解したイライアスは、悔しそうに唇を噛んでいる。
彼は何とか他の手段がないかと考えを巡らせるが、考えれば考えるほどそれ以外手段はないという結論に思い至り、段々と声を詰まらせていってしまう。
「ご理解いただけたようで、何よりです。では私は用事がありますので、これで」
「え、えっ!?メ、メルクリオ様!?え、えっと・・・その、し、失礼します!!」
イライアスの様子に、自らが言いたい事は言い終わったと満足したメルクリオは、すっと身を翻すとそのままその場から飛び去っていく。
彼のそんな突然の行動に、その場に置いていかれてしまったニコレッタは、激しく戸惑いを見せている。
しかしそんな彼女も深く頭を下げ、彼らに別れを告げると慌ててメルクリオの後を追っては飛び去っていっていた。
「食えない男め・・・後一歩、こちらに踏み込んでいればその首落とせたものを・・・」
飛び去っていったメルクリオの後姿を眺めるイライアスは、その口元に手を当てては口惜しそうに何事かを呟いている。
そんな彼の身体からは細く、目に見えないほどに細かい糸が無数に伸びていた。
それは良く見ればこの部屋の到る所へと伸びており、彼の感情に応えるようにガタガタと僅かに胎動しているようだった。
「ダンメンハイン様、よろしかったのですか?あのような者の言葉を信用なされて」
「よろしいも何も、そうするしかなかろう。あぁ、だがそうだな・・・」
どこか怒り抑えているように見えるイライアスに、パスカルは恐る恐るお伺いを立てている。
パスカルの当たり前の事をもう一度聞き返す言葉に、イライアスは煩わしそうに首を振るが、彼はその時何やら思いついたようであった。
「では、お前が行ってこい」
「・・・は?」
パスカル・キルヒマンはその時、目の前の魔王から言われた言葉の意味を理解することが出来なかった。
しかし彼は、すぐにその意味を理解する事になる。
そしてその時彼は、空の上を物凄いスピードで駆け抜ける事になるのだった。
メルクリオの背後で所在無さげにふらふらと彷徨っているニコレッタだけが、そんな彼らのやり取りに怯え、悲鳴を漏らしているようだった。
「それで・・・その必要がないとは、どういう事だバンディネッリ?」
「そのままの意味でございますよ、閣下。裏ならば私が取っておきました。向こうの教会も何やら忙しいようですよ。無論、二つの宗派両方ともね」
薄ら寒いやり取り終えたイライアスは、ようやく本題について彼へと問い掛ける。
その言葉にメルクリオは丁寧に頭を下げると、にっこりと笑いながら彼がやろうとしている事は既に、自分がやっておきましたと宣言していた。
「勇者と聖剣の喪失による、パワーバランスの変化か・・・あれを有していたのは、どちらの派閥だったか?確かに、報告書の内容とも一致するが・・・バンディネッリ、貴様もかつてはあの男の部下だった男だ。どうして、それが偽りでないと言える?」
既に裏を取ってあると話すメルクリオの言葉に、イライアスはある程度の納得を示している。
しかし彼は同時に、メルクリオの発言は信用は置けないとも考えていた。
メルクリオはつい一ヶ月ほど前まで、カイ・リンデンバウムの下で働いていた男だ。
そんな男の発言を、どうして信用することが出来るだろうか。
「言えませんね、勿論」
「ならば―――」
イライアスの指摘に、メルクリオはあっさりと降参を認めると、肩を竦めている。
そんな彼の振る舞いに、イライアスはそら見たことかと畳みかけようとするが、その試みは叶うことはない。
「しかし、こうも言えます。結果は同じだと」
「・・・何だと?」
見せた弱みにすかさず畳みかけようとしていたイライアスの言葉を遮るように、メルクリオは不敵な笑顔を見せてはそっと囁いていた。
彼の見せた表情と囁いた言葉の意味が分からないイライアスは、それに思わず問い掛けてしまう。
それこそが望んだ反応だと、メルクリオはその笑みをさらに深くしていた。
「閣下、先ほど裏を取ると仰いましたが。それには我が商会の者を使うのでは?それならば、結果は同じですよ。それとも、自らの部下を使って情報を集めますか?それは構いませんが・・・一体、どれほどの時間が掛かることか・・・リンデンバウム様は今、海の向こうにおられるのですよ?」
メルクリオはイライアス達が裏を取るために情報を集めるならば、自らの商会を使うだろうと話している。
それは恐らく、紛れもない事実であろう。
空を自由に駆け回れる従業員を多数抱え、この大陸の情報を一手に集めている彼の商会以上に素早く情報を集められる組織など存在しない。
それどころか、普段から彼らの存在に甘えきっていたイライアス達には、それ以外に独自の伝など存在しないに等しかった。
「くっ、そういう事か・・・しかし他にも手が・・・うむむ」
メルクリオの長い口上に、ようやく彼の言いたい事を理解したイライアスは、悔しそうに唇を噛んでいる。
彼は何とか他の手段がないかと考えを巡らせるが、考えれば考えるほどそれ以外手段はないという結論に思い至り、段々と声を詰まらせていってしまう。
「ご理解いただけたようで、何よりです。では私は用事がありますので、これで」
「え、えっ!?メ、メルクリオ様!?え、えっと・・・その、し、失礼します!!」
イライアスの様子に、自らが言いたい事は言い終わったと満足したメルクリオは、すっと身を翻すとそのままその場から飛び去っていく。
彼のそんな突然の行動に、その場に置いていかれてしまったニコレッタは、激しく戸惑いを見せている。
しかしそんな彼女も深く頭を下げ、彼らに別れを告げると慌ててメルクリオの後を追っては飛び去っていっていた。
「食えない男め・・・後一歩、こちらに踏み込んでいればその首落とせたものを・・・」
飛び去っていったメルクリオの後姿を眺めるイライアスは、その口元に手を当てては口惜しそうに何事かを呟いている。
そんな彼の身体からは細く、目に見えないほどに細かい糸が無数に伸びていた。
それは良く見ればこの部屋の到る所へと伸びており、彼の感情に応えるようにガタガタと僅かに胎動しているようだった。
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「よろしいも何も、そうするしかなかろう。あぁ、だがそうだな・・・」
どこか怒り抑えているように見えるイライアスに、パスカルは恐る恐るお伺いを立てている。
パスカルの当たり前の事をもう一度聞き返す言葉に、イライアスは煩わしそうに首を振るが、彼はその時何やら思いついたようであった。
「では、お前が行ってこい」
「・・・は?」
パスカル・キルヒマンはその時、目の前の魔王から言われた言葉の意味を理解することが出来なかった。
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