無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有

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第8話

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マリウス王子視点

 聖女、いや元聖女フィーレが自らを封印して、護衛リカルドが去って数日が経つ。
 リカルドはフィーレを運ぶことができたようで、聖女の部屋には何も残っていなかった。

 城の大広間に貴族達を集めて――父上、ローノック王が皆に宣言する。

「聖女フィーレは護衛リカルドと共に姿を消した……聖女の立場が嫌になったのだろう」

 報告すると集まっていた貴族達がざわめき、兵士長ジェノスが前に出る。

「そうですか……新たな聖女様は、どうしますか?」

 これは事前の打ち合わせ通りで、俺が頷いて返答する。

「公爵令嬢のアビリコが、夢で声が聞こえ聖女の魔法を学んだとと聞いた……彼女なら問題ないだろう!」

「アビリコ様ですか!?」

 平和になった今、聖女は誰でも構わない
 そう考えていたのに、宰相が不安そうな表情を浮かべながら叫ぶ。

 新たな聖女を用意すると事前に伝えているも、アビリコなのは想定外だった様子だ。
 そこまで驚かれるのは想定外で、父上が尋ねる。
 
「なにか問題でもあるのか?」

「いえ……アビリコ様はその、魔法の成績があまりよろしくありません」

 聖女の候補者を調べていたから……成績を知っている宰相が心配しながら報告した。
 心配性な奴だと考えながら、俺は陛下に助言する。

「父上……それなら新たな聖女になってから、アビリコが不満を漏らすことはないでしょう」

「マリウスの言う通りだ! これより新たな聖女を祝う式の準備を行う!」

 アビリコは成績が悪いから、将来が不安になっていた。
 聖女の座を与えれば喜んで受け取るし、それによる不満を口にすることはないだろう。

 父上の宣言を聞いて、貴族達は準備に取りかかろうと動き出す。
 不満そうな反応をする者が数人いたが、宰相の発言を気にしているせいだ。

 そして――兵士長ジェノスが内心呆れていることも、俺にはわかっている。
 宰相とジェノスは聖女が弱くなることを不安にしているが、そもそも聖女は不必要なのだ。

 アビリコを聖女にして――俺がそのアビリコと婚約すれば、次期国王は間違いない。

「フィーレは無能な聖女だったが、聖女の地位を自ら捨ててくれるとは……最後は役に立ってくれた」

 思わず呟きながら、俺はこれからの輝かしい未来を想像する。
 そして――希望の未来が絶望の未来になっていくことを、後に知ることとなっていた。
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