嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有

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第2話

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「婚約を破棄するだと!? ミリスは何を言っている!?」

 先に婚約を破棄したいと言った癖に、私が賛同するとジノザが取り乱す。
 こうなることは想定外だったようで、教室もざわめいていた。

 立場の差から、私が何も言い返せず従い続けるとジノザは思っていたはず。
 困惑しているジノザに、私は説明する。

「何を言っていると言いましたが、先に婚約を破棄したいと言ったのはジノザ様の方ですよ」

「俺はお前が苦しむ姿を見たかっただけだ!」

 焦りからか本心を話し出すジノザだけど、これは教室にいる生徒達も予想できていることだ。

 今までの私なら謝罪して、改善点を言わされている。
 それなのに言い返したのは予想外だからか、教室の人達は私の発言に興味を持っていた。

「もう半年も私は注意されてきました。これはジノザ様の言う通り、婚約者に相応しくなかったということです」

「そ、それは――」

「――この場で侯爵家の貴方が婚約を破棄したいと言ったのですから、それは本心なのでしょう」

 ジノザが「婚約を破棄したい」と何度も言ってきたけど、今までの私は我慢し謝っていた。

 貴族の人達がいるこの場で婚約破棄したいと告げたのなら、私が賛同すれば本当に婚約を破棄できる。
 教室にいる人達が証人となってくれるから、ジノザは「婚約を破棄したいと言っていない」と嘘をつくこともできない。

 こうなると本当に婚約が破棄されると理解したようで、焦りながらジノザが叫ぶ。

「婚約を破棄したいというのは本心だ! だが……貴様は、それでいいのか?」

「どういうことですか?」

 いいのかと聞かれたら当然いいんだけど、ジノザはなにか閃いたようだから聞いておきたい。

 尋ねてみると、ジノザは周囲の生徒達を眺めてから話す。

「学園中に貴様の悪評は広まっている。その上で婚約破棄されたとなれば、更に評判が落ちるだろう」

「まあ、そうかもしれませんね」

 実際そうなりそだけど、それは最初だけだ。

 私が結果を出せば認められるし、そうなると元婚約者のジノザが苦しむ番となる。
 それをこの場で言う必要がないから、ジノザの発言に頷いておこう。

 その姿を見て気をよくしたのか、ジノザは笑みを浮かべる。
 勘違いをしていそうだけど、話は最後まで聞いておこう。

「今なら謝罪すれば許してやろう」

「どうしてそうなるのですか。評判が墜ちても構わないので、私はジノザ様との婚約を破棄します」

「ぐっっ……グライア侯爵家を敵に回すこととなるぞ!!」

 説得は無理とようやく悟ったジノザが、権力で私を脅してくる。

 これも予測できていたことで、今まで我慢してきた理由でもある。
 家族に迷惑をかけたくなかったから、私はジノザに従ってきた。

「何も言い返せないようだな。貴様は――」

「――ジノザよ。ミリスを脅すことは私が許さない」

 私が言い返さなかったのは、言い返してくれる人がいるからだ。

 クラスメイトのマルク第二王子が席から立ち上がり、私の前に来てくれる。
 今まで権力で脅せば問題ないと考えていた婚約者のジノザだけど、王子と対峙することになるのは予想外だったようだ。
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