嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有

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第1話

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「お前は嫌いなところが多すぎる。婚約を破棄したいものだ」

 私ミリス・ルミリカの婚約者ジノザ・グライアが、教室でそんなことを言い出した。

 婚約してから半年が経つけど、伯爵令嬢の私を侯爵令息のジノザは常に蔑んでいる。
 貴族の人が多い魔法学園だから、教室で私より自分の方が上と知らしめたいのでしょう。

 昼休みになってすぐの発言だから、私とジノザは生徒達に注目されている。
 立場の差を見せつけてジノザは楽しそうだけど、これは私にとっても好都合だ。

「嫌いなところが多すぎると言いましたが、それはジノザ様の命令によるものです」

「なんだと!? 俺のせいにするもりか!?」

 今まで耐えてきた私が言い返したことが理解できないのか、ジノザが驚きながら叫ぶ。

 実際に私が悪口を言われている理由は、ジノザの無茶な命令を聞いていたからだ。
 それなのにジノザは命令していることを隠し、私が全て悪いと学園の人達に思わせようとしている。

 生徒達から注目を浴びている中で、私は婚約者の愚行を知ってもらうため話すことにした。

「ジノザ様は先ほど「ミリスは授業中なのに意識が朦朧としている。その姿が醜くて嫌いだ」と言いましたが、それはジノザ様の命令で徹夜だったからです」

「うっっ……」

「私はジノザ様の命令で杖を強化していました。魔法の成績が向上しているのは、それが理由です」

 ここ最近ジノザの成績がよくなっている理由でもあるから、信じてくれる人がいるかもしれない。
 私は魔法道具の扱いに長けていて、昨日はジノザ様が扱う杖を強化していた。

 杖の強化は一週間以上かかると言ったのに、ジノザは3日でやれと命令し、徹夜したから私は寝不足となってしまう。
 それなのにジノザは杖の強化は誰にも話さず、私を見下していた。

 似たような出来事が婚約してから半年も行われて、私は我慢の限界になっている。
 この場で暴露されるとは考えていなかったジノザは、私の発言に怒り叫ぶ。

「ミリスは何を言っている!? お前の成績で杖の強化ができるわけないだろう!」

「成績に関しては、ジノザ様が「俺より成績が上になるな」と命令したからです」

「黙れ!! 自分の無知を婚約者のせいにしようとする。そんなところも嫌いだ!!」

 私は事実を話しているというのに、ジノザは認める気がない。

 もしこの場で全て認めて謝ってきたら、私は考えが変わっていたかもしれない。
 そんなことを考えながら、私は予定通り行動する。

「そうですか――それなら、婚約を破棄しましょう」

 婚約破棄はジノザが先に言い出したことで、私は賛同した形となる。

 16歳になって魔法学園に通ってから、私は婚約者ジノザのせいで行動を制限されていた。

 婚約を破棄してくれるのなら、ようやく自由に行動できる。
 それによって元婚約者ジノザが後悔することになるけど、私には関係ないことだ。
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