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第5話
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マルクスと話し合ってから、数日が経っていた。
準備はできつつあるようだけど、私は城に呼び出されてしまう。
アシェルの部屋に到着すると、エミリーの姿はなかった。
部屋の扉を閉めると、アシェルは私に向かって数枚の紙を渡す。
その紙には、パーティで行う私の言動が書かれていた。
「それが台本だ。来週あるパーティで、エミリーはそこに書かれた通り動いてもらう」
「……捏造した罪について、書かれていませんね」
「俺の命令で、何人か学園の貴族達が協力してくれることとなっている。今お前が知ってしまうと、不自然な行動をとるかもしれないからな」
アシェルに協力する貴族の人達については、マルクスがもう把握している。
台本は主に私の行動だけが書かれているから、台本といっても数枚しかなかった。
「そうですか……私は、この台本通り動く予定になっているのですね」
「ああ。もう罪は捏造してある。台本通りにすれば、妾でも今まで通り俺の傍においてやろう」
それは私がいなければ、アシェルにとって都合が悪いからだ。
本当はキアラと婚約したいけど、親同士が公爵令嬢の私と婚約するように決める。
そうなると余程の理由がなければキアラと婚約できず、その理由を作ろうとしていた。
そこまでわかるけど、アシェルがキアラを好きになった理由がわからない。
パーティの後では聞けないだろうから、私は今この場で聞くことにしていた。
「アシェル殿下には、聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「キアラ様を婚約者にすると、いつから考えていたのでしょうか?」
「学園に入学した時から、俺はキアラのことを愛していた――お前との婚約が決まり、別れたくないからキアラと話し合って決めたことだ」
最初は私が気に入らなかったと言っていたけど、婚約する前からキアラのことが好きだったようだ。
婚約が決まっても関わっていない理由に納得して、私は部屋から出て行く。
私が拒んでいない様子だからか、アシェルは思い通りになると確信していそう。
普通なら拒むことで、受け入れているように演技していると思わないことに驚いていた。
屋敷に戻る馬車の中で、1人になった私は呟く。
「受け取った紙にはアシェルとキアラと私の台詞しか書かれていないから、これは証拠にならないでしょう」
今すぐに破きたいけど、何度か練習させようとしてくるかもしれない。
婚約を破棄する時までは、持っておく必要がありそうだ。
この間にも、マルクスは私のために行動してくれる。
そして――1週間が経ち、パーティがはじまろうとしていた。
準備はできつつあるようだけど、私は城に呼び出されてしまう。
アシェルの部屋に到着すると、エミリーの姿はなかった。
部屋の扉を閉めると、アシェルは私に向かって数枚の紙を渡す。
その紙には、パーティで行う私の言動が書かれていた。
「それが台本だ。来週あるパーティで、エミリーはそこに書かれた通り動いてもらう」
「……捏造した罪について、書かれていませんね」
「俺の命令で、何人か学園の貴族達が協力してくれることとなっている。今お前が知ってしまうと、不自然な行動をとるかもしれないからな」
アシェルに協力する貴族の人達については、マルクスがもう把握している。
台本は主に私の行動だけが書かれているから、台本といっても数枚しかなかった。
「そうですか……私は、この台本通り動く予定になっているのですね」
「ああ。もう罪は捏造してある。台本通りにすれば、妾でも今まで通り俺の傍においてやろう」
それは私がいなければ、アシェルにとって都合が悪いからだ。
本当はキアラと婚約したいけど、親同士が公爵令嬢の私と婚約するように決める。
そうなると余程の理由がなければキアラと婚約できず、その理由を作ろうとしていた。
そこまでわかるけど、アシェルがキアラを好きになった理由がわからない。
パーティの後では聞けないだろうから、私は今この場で聞くことにしていた。
「アシェル殿下には、聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「キアラ様を婚約者にすると、いつから考えていたのでしょうか?」
「学園に入学した時から、俺はキアラのことを愛していた――お前との婚約が決まり、別れたくないからキアラと話し合って決めたことだ」
最初は私が気に入らなかったと言っていたけど、婚約する前からキアラのことが好きだったようだ。
婚約が決まっても関わっていない理由に納得して、私は部屋から出て行く。
私が拒んでいない様子だからか、アシェルは思い通りになると確信していそう。
普通なら拒むことで、受け入れているように演技していると思わないことに驚いていた。
屋敷に戻る馬車の中で、1人になった私は呟く。
「受け取った紙にはアシェルとキアラと私の台詞しか書かれていないから、これは証拠にならないでしょう」
今すぐに破きたいけど、何度か練習させようとしてくるかもしれない。
婚約を破棄する時までは、持っておく必要がありそうだ。
この間にも、マルクスは私のために行動してくれる。
そして――1週間が経ち、パーティがはじまろうとしていた。
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