婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです

第１８話

レヴォク視点

　数日後――商人スミスが、ガルク家の屋敷にやって来る。

　スミスは短い黒髪で、細目で常に笑っているような顔をする長身の青年だ。

　幻獣を何体も倒したことがあると聞いていたが、あの時の俺は嘘だと考えてしまう。

　もし本当に幻獣を倒しているのなら……最悪の事態を避けることができそうだ。

　部屋にスミスを呼んで現状を話してから、俺は頼む。

「スミスは幻獣を何体も倒したことがあるのだろう……それなら、数日後やって来る複数の幻獣、ドラゴンを対処してくれないだろうか？」

　もし魔法道具の鈴が説明とは違う結果になったのなら、スミスは現れた幻獣を倒すと俺に話したことがある。

　それが本当のことなら――スミスの力で、全てが解決するかもしれない。

　期待して尋ねるも、スミスは首を左右に振る。

「無茶を言わないでください……幻獣は1頭なら倒せますけど、複数を同時に相手にすることはできませんよ」

「なにっっ！？　前に何体も倒したと言ったではないか！！」

「合計に決まっているでしょう。鈴を何度も鳴らして複数のドラゴンを呼んだのは、レヴォク様の落ち度です」

　困惑しながら話すスミスに、俺は動揺するしかない。

　最後の希望を失った俺は蹲り、激昂して叫ぶ。

「ぐぅっっ――っ！？　スミスは、魔法道具の鈴を何度も鳴らした俺のせいだと言いたいのか！？」

「その通りです。欲張り過ぎましたね……まあ、対処する方法がないわけでもありません」

「本当か！　その方法を教えろ！」

「教えるのは構いませんけど、失敗したら最悪の事態になります。それでもよろしいですか？」

「何もしなければ終わるのなら、行動するしかないだろう！」

　そう言って――俺はスミスから、現状を打破するための方法を聞く。

　もし失敗すれば俺の人生が終わる程リスクの大きい内容で――それでも、俺はその方法をとるしかなかった。