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第四章
欲を受け止める*
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前話のあらすじ
ディックとフォリスに男の欲について教えてもらったルカは、再度ユリウスの部屋へと向かいます。
――――――――――――――――――――――
夕食後、自室で一人になったユリウスは、自己嫌悪の極致に達していた。
ルカを怖がらせてしまった。
あんなに何度も、無理には事に及ぶまいとかたく決めていたのに。ルカに我慢しなくていいと言われ、都合のいいように解釈してルカを押し倒した。最悪だ。最低最悪だ。
これでは王都でルカを襲ったあのハルムとかいう希少種と同じではないか。
しかも自分はもう、女にがっつくほどの年でもない。王都にいた若い頃は、悪友にも恵まれそれなりに経験もある。女と見れば目の色を変えるほど飢えてはいない。それなのに。
「あー。くそっ」
ユリウスは叫んで両拳を枕に打ちつけた。ぽすっと気の抜けた音がして、ユリウスの放った拳は枕に吸い込まれる。
今日はルカはもう、俺のベッドには潜り込んでこないだろうな。
王都へ向かう時から王都滞在中(エメレンスのところへ行っている数日を除いて)も、帰りの道中でも、ずっとルカと一緒のベッドだった。
ルカを怯えさせておいて、それでもまだルカがベッドに潜り込んでこないだろうかと期待している自分がいる。そしてまたキスがしたいと思う浅ましさ。
ほんの拾いものだったはずのルカが、今ではユリウスにとって何にも代えがたい存在だ。側にいられないのは何よりつらい。
明日、全力でルカに謝ろう。
お願いだから側にいてくれと、避けないでくれと懇願しよう。ルカのいない一人寝は、半身が欠けたようでつらい。
がちゃっ。
ノックもなしに勢いよく扉が開いた。ベッドに腰掛けて項垂れていたユリウスは、突然入ってきたルカの姿に目を見張った。つい今しがた焦がれていた姿だけに、思わず抱きしめたくなる自分を抑える。先にルカの様子に気を配った。
「ルカ。どうした?」
ルカは駆けてきたのか、息がきれている。肩で息をしながら、入ってきた勢いのまま、ベッドに腰掛けるユリウスのところまで走ってくると、ぶつかるように抱きついてきた。
「どうしたルカ」
怒っているだろうとばかり思っていたルカの思わぬ行動に、ユリウスは戸惑った。それでも背をそっと撫で、ルカの息が整うのを待った。
「あの、あのね。ユリウス。わたし」
息の落ち着いたルカは、ユリウスから体を離すと「見てて」と言うや、着ていたワンピースをいきなりばさりと脱ぎ捨てた。
「何してる? いきなりどうした」
薄いシュミーズ一枚の姿になったルカは、ユリウスの困惑を無視して、最後の砦であるシュミーズとショーツも脱ぐ。何が起ころうとしているのか。全く理解できない。ルカはユリウスの前で、隠すことなく体を晒した。見てはいけないと思うものの、目も反らせない。思った以上に白い肌に、しっとりとした艶のある黒髪。ルカの黒い瞳がユリウスを見ている。
ユリウスはごくりと息をのみ、抗えずに視線を下へと辿った。ほっそりとした首、鎖骨、肩。拾ったときより膨らんだ乳房。薄い色をした小さな突起、腰にかけて緩やかな曲線を描く線。下生えはなく、すらりと細い足が伸びている。足首はきゅっと締まり、裸足の指も白くて細い。何もかもが華奢で頼りなげだ。でも、抱きしめれば確かな存在としてルカを感じられることを、ユリウスは知っている。
ユリウスの視線を全て受け止め、ルカは再びユリウスに抱きついてきた。ユリウスは、呆然としてルカに抱きつかれるままに動きを止めた。自分の胸に、さきほど見たルカの膨らみが触れている。開いた足の間にルカの体がすっぽりとはまり、内股にルカの双丘が触れている。トラウザーズ越しでもわかる、その柔らかな感触に、ユリウスはますます混乱する。
一体何がどうなっているのだ。
ついさきほどルカは怖がってユリウスに噛みついたところではないか。それが、これは一体……。
「ル、ルカ?」
ユリウスは困惑し、顔を見ようとルカの肩を持って引き剥がした。間近でのぞくと、ルカの瞳は潤んではいたが、さきほどのような怯えの色はない。目が合うとルカは唇を寄せてきた。
しっとりと柔らかな唇が、ちゅっと小さく触れる。それだけでユリウスの体は敏感に反応した。足の間に収まったルカにもすぐにわかったようだ。ユリウスの足の間を見ると、そこにそっと触れてきた。
「おい、ルカ」
ユリウスはルカの手をつかみ、今度こそ強引にルカの体を引き剥がした。これ以上はまずい。本当の本当に我慢ができなくなる。さきほどあれだけ後悔したところなのに、今度こそ決定的にやらかしてしまう。
ユリウスは焦ってルカを離したが、ルカは離された手を握りしめ、不満そうにユリウスを睨んだ。
「触ったら気持ちいいんじゃないの?」
「待てルカ。話が全く見えん。何がしたい?」
「ユリウスと夜伽がしたい」
それを聞いてユリウスははぁと息を吐き出した。
「さっきあれほど怖がってたじゃないか。いきなりどうした?」
「別に怖がってなんかない」
「強がる必要はないぞ。尻にいれられたくないとあれほど嫌がっていたじゃないか。さっきは悪かった。もう二度とあんなことはしない」
「そうじゃない!」
ルカは怒ったように頬を膨らませた。
「ほんとに怖くもなかったし、嫌でもなかった。ただ、ちょっとびっくりしただけで……。でももう大丈夫。ちゃんとわかったから。お尻じゃないんでしょ? だからユリウスはほんとに我慢しなくていいから。ユリウスの欲はわたしが受け止める」
「待てルカ。本当にわかって言っているのか?」
「わかってるよ。ディックとフォリスに見せてもらったから」
「あいつら……」
ルカの前ではするなと釘をさしたところだったのに。これは説教が必要なようだ。
ユリウスが立ち上がると「どこ行くの?」とルカが腰に抱きついてくる。ユリウスは掛布を裸のルカに被せた。
「あいつらに文句の一つも言ってやらんと気が済まん」
「違う。わたしが見せてって頼んだの」
「それでもだ」
「待ってよユリウス」
扉のノブに手をかけたユリウスに、ルカは掛布を剥ぎ取ると後ろからユリウスの腰に腕を回した。
「お願い、ユリウス。ユリウスと夜伽がしたい。ちゃんと受け止めるから。だから」
「今度は泣いても途中でやめてやらんぞ」
「うん」
「かなり痛いかもしれんぞ。俺とおまえでは体格差がありすぎるからな。相当つらいかもしれん」
「それでもいい」
「子ができてもいいのか?」
「子供はあんまり見たことないからわからない。でもたぶん好きだから大丈夫」
「生涯俺だけだと誓えるか? 他に好きな奴ができても、もう離してやらんぞ」
「ユリウスだけが好きだよ」
「…………」
ユリウスはがしがしと頭をかいた。腰に触れたルカの柔らかな温もりがたまらない。溜まりに溜まった欲が、行き場を見つけて歓喜している。けれどだめだ。ルカの言葉を鵜呑みにするな。頭の冷静な部分がブレーキをかける。ルカはまだ幼い。いくらディックとフォリスの交わりを見たからと言って、百パーセント理解できたわけではない。また怖がらせるぞ。それも今度は徹底的に。今ルカに触れたら、途中でやめられる自信が全くない。
落ち着け。落ち着くんだ、ユリウス。
自分を押し留めようと深呼吸したユリウスの股間に、ルカの細い指が触れた。
ユリウスは体を跳ねさせ、後ろを振り返った。
こちらを見上げるルカの目は、意外なほど落ち着いていて、振り返ったユリウスの目を真っ直ぐに見返した。
「ユリウス、大好き」
ルカはユリウスの胸に頭を預け、手をのばすとユリウスのトラウザーズに手をかけた。ベルトを外そうと苦戦している。ユリウスは、そのルカの手をつかみ、裸のルカを抱き上げた。
もう、心は引き返せないところまで進んでいた。
ディックとフォリスに男の欲について教えてもらったルカは、再度ユリウスの部屋へと向かいます。
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ルカを怖がらせてしまった。
あんなに何度も、無理には事に及ぶまいとかたく決めていたのに。ルカに我慢しなくていいと言われ、都合のいいように解釈してルカを押し倒した。最悪だ。最低最悪だ。
これでは王都でルカを襲ったあのハルムとかいう希少種と同じではないか。
しかも自分はもう、女にがっつくほどの年でもない。王都にいた若い頃は、悪友にも恵まれそれなりに経験もある。女と見れば目の色を変えるほど飢えてはいない。それなのに。
「あー。くそっ」
ユリウスは叫んで両拳を枕に打ちつけた。ぽすっと気の抜けた音がして、ユリウスの放った拳は枕に吸い込まれる。
今日はルカはもう、俺のベッドには潜り込んでこないだろうな。
王都へ向かう時から王都滞在中(エメレンスのところへ行っている数日を除いて)も、帰りの道中でも、ずっとルカと一緒のベッドだった。
ルカを怯えさせておいて、それでもまだルカがベッドに潜り込んでこないだろうかと期待している自分がいる。そしてまたキスがしたいと思う浅ましさ。
ほんの拾いものだったはずのルカが、今ではユリウスにとって何にも代えがたい存在だ。側にいられないのは何よりつらい。
明日、全力でルカに謝ろう。
お願いだから側にいてくれと、避けないでくれと懇願しよう。ルカのいない一人寝は、半身が欠けたようでつらい。
がちゃっ。
ノックもなしに勢いよく扉が開いた。ベッドに腰掛けて項垂れていたユリウスは、突然入ってきたルカの姿に目を見張った。つい今しがた焦がれていた姿だけに、思わず抱きしめたくなる自分を抑える。先にルカの様子に気を配った。
「ルカ。どうした?」
ルカは駆けてきたのか、息がきれている。肩で息をしながら、入ってきた勢いのまま、ベッドに腰掛けるユリウスのところまで走ってくると、ぶつかるように抱きついてきた。
「どうしたルカ」
怒っているだろうとばかり思っていたルカの思わぬ行動に、ユリウスは戸惑った。それでも背をそっと撫で、ルカの息が整うのを待った。
「あの、あのね。ユリウス。わたし」
息の落ち着いたルカは、ユリウスから体を離すと「見てて」と言うや、着ていたワンピースをいきなりばさりと脱ぎ捨てた。
「何してる? いきなりどうした」
薄いシュミーズ一枚の姿になったルカは、ユリウスの困惑を無視して、最後の砦であるシュミーズとショーツも脱ぐ。何が起ころうとしているのか。全く理解できない。ルカはユリウスの前で、隠すことなく体を晒した。見てはいけないと思うものの、目も反らせない。思った以上に白い肌に、しっとりとした艶のある黒髪。ルカの黒い瞳がユリウスを見ている。
ユリウスはごくりと息をのみ、抗えずに視線を下へと辿った。ほっそりとした首、鎖骨、肩。拾ったときより膨らんだ乳房。薄い色をした小さな突起、腰にかけて緩やかな曲線を描く線。下生えはなく、すらりと細い足が伸びている。足首はきゅっと締まり、裸足の指も白くて細い。何もかもが華奢で頼りなげだ。でも、抱きしめれば確かな存在としてルカを感じられることを、ユリウスは知っている。
ユリウスの視線を全て受け止め、ルカは再びユリウスに抱きついてきた。ユリウスは、呆然としてルカに抱きつかれるままに動きを止めた。自分の胸に、さきほど見たルカの膨らみが触れている。開いた足の間にルカの体がすっぽりとはまり、内股にルカの双丘が触れている。トラウザーズ越しでもわかる、その柔らかな感触に、ユリウスはますます混乱する。
一体何がどうなっているのだ。
ついさきほどルカは怖がってユリウスに噛みついたところではないか。それが、これは一体……。
「ル、ルカ?」
ユリウスは困惑し、顔を見ようとルカの肩を持って引き剥がした。間近でのぞくと、ルカの瞳は潤んではいたが、さきほどのような怯えの色はない。目が合うとルカは唇を寄せてきた。
しっとりと柔らかな唇が、ちゅっと小さく触れる。それだけでユリウスの体は敏感に反応した。足の間に収まったルカにもすぐにわかったようだ。ユリウスの足の間を見ると、そこにそっと触れてきた。
「おい、ルカ」
ユリウスはルカの手をつかみ、今度こそ強引にルカの体を引き剥がした。これ以上はまずい。本当の本当に我慢ができなくなる。さきほどあれだけ後悔したところなのに、今度こそ決定的にやらかしてしまう。
ユリウスは焦ってルカを離したが、ルカは離された手を握りしめ、不満そうにユリウスを睨んだ。
「触ったら気持ちいいんじゃないの?」
「待てルカ。話が全く見えん。何がしたい?」
「ユリウスと夜伽がしたい」
それを聞いてユリウスははぁと息を吐き出した。
「さっきあれほど怖がってたじゃないか。いきなりどうした?」
「別に怖がってなんかない」
「強がる必要はないぞ。尻にいれられたくないとあれほど嫌がっていたじゃないか。さっきは悪かった。もう二度とあんなことはしない」
「そうじゃない!」
ルカは怒ったように頬を膨らませた。
「ほんとに怖くもなかったし、嫌でもなかった。ただ、ちょっとびっくりしただけで……。でももう大丈夫。ちゃんとわかったから。お尻じゃないんでしょ? だからユリウスはほんとに我慢しなくていいから。ユリウスの欲はわたしが受け止める」
「待てルカ。本当にわかって言っているのか?」
「わかってるよ。ディックとフォリスに見せてもらったから」
「あいつら……」
ルカの前ではするなと釘をさしたところだったのに。これは説教が必要なようだ。
ユリウスが立ち上がると「どこ行くの?」とルカが腰に抱きついてくる。ユリウスは掛布を裸のルカに被せた。
「あいつらに文句の一つも言ってやらんと気が済まん」
「違う。わたしが見せてって頼んだの」
「それでもだ」
「待ってよユリウス」
扉のノブに手をかけたユリウスに、ルカは掛布を剥ぎ取ると後ろからユリウスの腰に腕を回した。
「お願い、ユリウス。ユリウスと夜伽がしたい。ちゃんと受け止めるから。だから」
「今度は泣いても途中でやめてやらんぞ」
「うん」
「かなり痛いかもしれんぞ。俺とおまえでは体格差がありすぎるからな。相当つらいかもしれん」
「それでもいい」
「子ができてもいいのか?」
「子供はあんまり見たことないからわからない。でもたぶん好きだから大丈夫」
「生涯俺だけだと誓えるか? 他に好きな奴ができても、もう離してやらんぞ」
「ユリウスだけが好きだよ」
「…………」
ユリウスはがしがしと頭をかいた。腰に触れたルカの柔らかな温もりがたまらない。溜まりに溜まった欲が、行き場を見つけて歓喜している。けれどだめだ。ルカの言葉を鵜呑みにするな。頭の冷静な部分がブレーキをかける。ルカはまだ幼い。いくらディックとフォリスの交わりを見たからと言って、百パーセント理解できたわけではない。また怖がらせるぞ。それも今度は徹底的に。今ルカに触れたら、途中でやめられる自信が全くない。
落ち着け。落ち着くんだ、ユリウス。
自分を押し留めようと深呼吸したユリウスの股間に、ルカの細い指が触れた。
ユリウスは体を跳ねさせ、後ろを振り返った。
こちらを見上げるルカの目は、意外なほど落ち着いていて、振り返ったユリウスの目を真っ直ぐに見返した。
「ユリウス、大好き」
ルカはユリウスの胸に頭を預け、手をのばすとユリウスのトラウザーズに手をかけた。ベルトを外そうと苦戦している。ユリウスは、そのルカの手をつかみ、裸のルカを抱き上げた。
もう、心は引き返せないところまで進んでいた。
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