堅物辺境伯の溺愛〜虐げられた王宮奴隷は逃げ出した先で愛を知る〜

咲木乃律

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第五章

上手くできる気がしない

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 ディックに聞いた方法が衝撃的すぎて、ルカは夕食の間心ここにあらずで、ユリウスに大丈夫か?と心配されるほどだった。
 早々に食べ終えたユリウスは、ルカの隣に座ると「どうした?」と顔をのぞきこんできた。思わずユリウスの股へと視線を下ろしたが、俯いたと思ったユリウスはルカのあごを持って上向かせた。

「やっぱり元気がないな」

 ユリウスはルカの目をのぞき込む。

「えっと、あの」

 ルカはきょろきょろと辺りに視線を向けた。すぐ側にはカレル、リサ、アントンもいる。ユリウスとしたことはみんなにばれているのは知っているけれど、今ここでディックと話した内容を口にはできない。
 ルカは残りの食事を平らげると、ユリウスの腕を引いて立ち上がった。

「どこに行くんだ?」

「ユリウスの部屋」

 答えるとふわりと体が浮き上がった。

「大丈夫だよ、ユリウス」

「まぁいいだろ」

 ユリウスはルカを抱いたまま部屋へ戻った。最近ではルカの寝る場所はユリウスの寝室になっている。ルカの部屋にはルカの服が置いてあるだけで、今ではポポのゲージもユリウスの部屋にある。
 部屋に入るとポポがキキと鳴いた。ゲージに指を入れてちょっと遊んでやるとポポはくるくる回って枝を駆け上がった。
 その間ユリウスはずっとルカを抱いたままだ。ルカはゲージから指を抜き、ユリウスの腕から降りるとユリウスをベッドに腰掛けさせた。
 ともかくもディックに教えてもらったことをしてみよう。ユリウスの股の間に跪き、トラウザーズのベルトに手をかけるとユリウスはルカの手をつかんだ。

「なんだ? まだ月のものは終わってないだろう?」

「うん、そうなんだけど。ユリウスはセーエキ出したいかなと思って。上手くできるかわからないけど」

 なんとかベルトを外すとトラウザーズを寛げた。その手をユリウスはまたつかみ、更にルカの腰をつかむと引き上げ、自分の隣に座らせた。
 
「また、ディックに何か聞いたんだろう」

 呆れたようなユリウスの口調に、ルカはだってと俯いた。

「月のものがある間、ユリウスが我慢できなくて誰か他の人とするかもと思ったら嫌だったから」

 それを聞いて、はぁとユリウスは息をついた。

「俺はよほどルカに信用されていないようだな。いいか? 以前にも言ったがな。俺にはルカだけだ。ルカ以外の者とはこういうことはしないぞ。それでも不安か?」

「ほんとにしない? でもしたことはあるんだよね」

「ルカと会う前の話だ。俺もいい大人だからな。過去のことを言われるとどうしようもないんだがな。今とこれからのことを約束するのでは不満か?」

 ルカは首を振った。

「不満じゃない。わがまま言ってごめんなさい」

「そういうのはわがままとは言わん。俺には何でも話せ、ルカ。もやもやすることも、不安なことも一つずつ解決していってやるから」

「うん」

 ルカはベッドの上に膝で立つとユリウスに顔を近づけた。

「キスはしてもいい?」

「ああ」

 ユリウスはルカの後頭に大きな手を回すと自分の方へ引き寄せた。ちゅっと音を立てて、唇を吸われる。軽く口を開いてユリウスを迎え入れると、すぐに熱い舌が入ってきた。
 ユリウスはじっくりとルカの中を堪能していき、そっと唇を離した。

「それでルカ。一体ディックには何を聞いたんだ?」

 ルカが説明すると、ユリウスは額に手を当てた。

「あいつ、あれだけ釘を刺しておいたのにまた」

「わたしが聞いたからディックは親切に教えてくれただけだよ? 教えてもらったこと、してみようか?」

「いや、いい」

「どうして? ディックはとても気持ちいいって言ってた」

「いや、俺は口淫されるのは好まん。ああ、口でするのをそう言うんだがな」

「そうなんだ」

 がっかりしたというよりほっとした。ディックの言うように上手くできる気がしなかったから。あんな大きなもの、自分の口に入ると思えなかったし、それに加えて歯も当たらないようになんてとても無理だ。

「今ほっとしたろう。したくないことを無理にしなくてもいいんだぞ」

「だってユリウスのために何かしたいと思ったから」

「気持ちは嬉しいが無理はするな。俺はルカが側にいるだけでいいんだ」

「ユリウス」

 ルカは膝立ちしてユリウスの首に腕を回した。
 ポポがききっと鳴いた。もっと遊んでと言われたような気がして、ルカはベッドから降りるとポポのゲージを開けた。









***









 ポポと遊びだしたルカを見ながら、ユリウスは左の肩にそっと手を当てた。紋章が浮かび上がってからすでに四日ほど経つ。何かしら体に変化があるかもしれないと覚悟していたが、今のところ何もない。いつも通りだ。
 ルカの月のものがあければ、ユリウスはまたルカを抱くだろう。その時、以前はなかった肩の紋章にルカが気がつかないわけがない。
 カレルはなるべく秘してと言ったが、診察をするノルデンには早々にばれた。余計な心配をかけることにもなるので、ノルデンには正直に事の経緯を話した。
 ルカにも、話すべきなのだろうな。
 ユリウスはポポと戯れるルカを見ながら考えた。
 ルカは責任を感じるだろうか。感じるだろうな。間違いなく。また自分を責めるだろう姿が容易に想像できる。
 ユリウスはこうなる可能性をわかっていてルカを抱いたのだ。そこのところをよくよく説明して、納得させるしかないのだが。
 ルカがポポと遊んでやっているのか、ポポにルカが遊ばれているのか。まるで意思疎通できているかのようなポポとルカを眺めながら、話すならば早いうちに、今日にも話そうとユリウスは決めた。

 その日の夜、一緒にベッドに入った時にユリウスは話を切り出した。ルカの持っていたレガリアのこと、そのためにライニール王とオーラフ宰相がルカに執着していたこと、抱いた男のもとにレガリアが移ることがあることなど。王都でシミオンとエメレンスから聞いた話を説明した。
 話し始めてすぐに、大事な話だとわかったのだろう。ルカはところどころわからない点だけ聞き返しながら、最後まで真剣に耳を傾けていた。

「それで、まさかユリウスに?」

「ああ。ここに」

 ユリウスはシャツをはだけさせ、左肩を見せた。ルカが紋章に触れると、とくんと脈打つように一瞬熱くなった。
 
「……ごめんなさい」

 謝るだろうと思っていたが、やはりルカは謝った。ユリウスはルカを腕の中に囲い、頬を自分の胸に押し付けた。

「わかっていてやったことだ。ルカが謝る必要はない。責任も感じるなよ。レガリアが俺に移ったからといって、今までと何の違いもないんだ」

「……わかった」

 ルカは小さく呟いたが、本当に納得はしていないのだろう。

「俺を信じろ。ルカ」

 どれほど言葉を尽くしてもルカは自分を責めることをやめないだろう。ユリウスはだからそう言って、抱きしめてやる以外に方法を思いつけなかった。

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