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12 想定外
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……想定外、だった。
ちょうど一年前。
モルゲンロートとの国境地帯に陣を敷いたシュヴァルツヴァルトの王太子フリードは、自軍の勝利を確信していた。
あと一押しでモルゲンロートは崩れる。
そしてシュヴァルツヴァルが勝利を手にする。
それが両国の共通認識だった。
だが崩壊目前だったモルゲンロート軍が土壇場で予想外の戦術を繰り出し、驚異的な粘りをみせた。
そしてそれから一年もの長い間、モルゲンロートはシュヴァルツヴァルトの猛攻に耐え続けた。
――結果。
両国はなんの成果も得られぬまま痛み分けという形で、和平交渉の場に立つことになった。
そして勝てるはずの戦いで勝利を逃したフリードに突き付けられたのは、
『和平の証としてモルゲンロートの王女を妃に迎え、愛すること』
という屈辱的な命令だった。
しかもその王女はなんと、第一王女だった。
こういった政略結婚で差し出されてくるのは、その国にとってあまり重要な位置にいない、二番目や三番目の王女が通例。
だからフリードは、
『その第一王女、なにかあるのでは? 今はいいですが将来王妃となるのにふさわしくないのでは?』
……と、言ってその縁談を断ろうとした。
だが、フリードの父でシュヴァルツヴァルトの国王クラウスに、
『こうなったのはお前がぐずぐずしていたからだ』
と、言われてしまっては……フリードはもうなにも言い返せなかった。
だからフリードは『他に用もあるし』と自分に言い聞かせて、敵国だったモルゲンロートまで王女を迎えにやって来た。
せめて扱いやすい性格であってくれ。
そう願いながら。
けれど、そこで待っていたのは――
「シュヴァルツヴァルトに到着いたしましたら、父と母に会っていただくことになると思います」
「はい」
国境でモルゲンロートの第三騎士団と別れた後。
向かいに座ったフランツェスカはフリードの存在など初めからそこになかったかのように、手にした本へと視線を落とし続けていた。
「結婚式は一週間後を予定しています、ウェディングドレスはこちらで用意しておりますのでサイズ直しだけしていただければ……」
「はい、承知しました」
フリードが話しかけてもフランツェスカは適当に返事を返し、視線を合わせることはない。
「その……フランツェスカ? 馬が好きなのですか? 先ほどの乗りこなし、とてもお上手で驚きました。私も馬が好きで……」
「……王太子殿下、ひとつお願いしてもよろしいですか?」
「はい、なんでしょう? 私にできることなら喜んでお手伝い……を」
「公私混同はお控えいただけませんか? 迷惑ですわ」
冷ややかに告げられたその言葉に、フリードは返す言葉を失った。
「……すいません」
これもまた……想定外だった。
まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。
『愛するつもりはない』
そう言って突き放してやれば、激昂してわめき散らすか泣いてすがってくるとフリードは思っていた。
そしてその反応を理由に、王太子妃に相応しくないとして破談に持ち込もうと、計画していたのに。
フランツェスカは違った。
泣き喚くどころか、これ幸いとでも言いたげに。
『ご安心ください、私も愛するつもりはありません』と、宣言して。
馬鹿にしたように薄く微笑んできた。
それに加えて、国民のあの反応。
まるで英雄のように、フランツェスカは国民から感謝と祝福を贈られていた。
この展開を、フリードはこれっぽっちも予想していなかった。
それにここまで無関心を貫かれ続けると、逆に気になってきてしまう。
だが『干渉するな』とか色々言ってしまった手前、これ以上踏み込めない。
どうしたものか……と、考えあぐねていると。
フランツェスカとフリードが乗る4頭立ての豪奢な馬車は、シュヴァルツヴァルト王宮へと到着したのだった。
……想定外、だった。
ちょうど一年前。
モルゲンロートとの国境地帯に陣を敷いたシュヴァルツヴァルトの王太子フリードは、自軍の勝利を確信していた。
あと一押しでモルゲンロートは崩れる。
そしてシュヴァルツヴァルが勝利を手にする。
それが両国の共通認識だった。
だが崩壊目前だったモルゲンロート軍が土壇場で予想外の戦術を繰り出し、驚異的な粘りをみせた。
そしてそれから一年もの長い間、モルゲンロートはシュヴァルツヴァルトの猛攻に耐え続けた。
――結果。
両国はなんの成果も得られぬまま痛み分けという形で、和平交渉の場に立つことになった。
そして勝てるはずの戦いで勝利を逃したフリードに突き付けられたのは、
『和平の証としてモルゲンロートの王女を妃に迎え、愛すること』
という屈辱的な命令だった。
しかもその王女はなんと、第一王女だった。
こういった政略結婚で差し出されてくるのは、その国にとってあまり重要な位置にいない、二番目や三番目の王女が通例。
だからフリードは、
『その第一王女、なにかあるのでは? 今はいいですが将来王妃となるのにふさわしくないのでは?』
……と、言ってその縁談を断ろうとした。
だが、フリードの父でシュヴァルツヴァルトの国王クラウスに、
『こうなったのはお前がぐずぐずしていたからだ』
と、言われてしまっては……フリードはもうなにも言い返せなかった。
だからフリードは『他に用もあるし』と自分に言い聞かせて、敵国だったモルゲンロートまで王女を迎えにやって来た。
せめて扱いやすい性格であってくれ。
そう願いながら。
けれど、そこで待っていたのは――
「シュヴァルツヴァルトに到着いたしましたら、父と母に会っていただくことになると思います」
「はい」
国境でモルゲンロートの第三騎士団と別れた後。
向かいに座ったフランツェスカはフリードの存在など初めからそこになかったかのように、手にした本へと視線を落とし続けていた。
「結婚式は一週間後を予定しています、ウェディングドレスはこちらで用意しておりますのでサイズ直しだけしていただければ……」
「はい、承知しました」
フリードが話しかけてもフランツェスカは適当に返事を返し、視線を合わせることはない。
「その……フランツェスカ? 馬が好きなのですか? 先ほどの乗りこなし、とてもお上手で驚きました。私も馬が好きで……」
「……王太子殿下、ひとつお願いしてもよろしいですか?」
「はい、なんでしょう? 私にできることなら喜んでお手伝い……を」
「公私混同はお控えいただけませんか? 迷惑ですわ」
冷ややかに告げられたその言葉に、フリードは返す言葉を失った。
「……すいません」
これもまた……想定外だった。
まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。
『愛するつもりはない』
そう言って突き放してやれば、激昂してわめき散らすか泣いてすがってくるとフリードは思っていた。
そしてその反応を理由に、王太子妃に相応しくないとして破談に持ち込もうと、計画していたのに。
フランツェスカは違った。
泣き喚くどころか、これ幸いとでも言いたげに。
『ご安心ください、私も愛するつもりはありません』と、宣言して。
馬鹿にしたように薄く微笑んできた。
それに加えて、国民のあの反応。
まるで英雄のように、フランツェスカは国民から感謝と祝福を贈られていた。
この展開を、フリードはこれっぽっちも予想していなかった。
それにここまで無関心を貫かれ続けると、逆に気になってきてしまう。
だが『干渉するな』とか色々言ってしまった手前、これ以上踏み込めない。
どうしたものか……と、考えあぐねていると。
フランツェスカとフリードが乗る4頭立ての豪奢な馬車は、シュヴァルツヴァルト王宮へと到着したのだった。
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