15 / 68
15 王家の一員
しおりを挟む
15
シュヴァルツヴァルトの国王がこの場にやってきたことにより、私を中傷していた貴族達の顔は途端に青ざめていった。
元々敵国だったとはいえ、和平条件によって輿入れしてきた王女に対するいわれなき中傷の数々。
中傷していた貴族達も流石に不味いと思ったのだろう、フリード王太子が怒りを顕した時よりも幾分か顔色が悪く見える。
「国王陛下? 娘、というのは……?」
ゆったりとした足取りで年配の貴族が前に進み出て、シュヴァルツヴァルトの国王に問いかけた。
国王に直答できるということは、この年配の貴族はおそらく高い地位にいる者。
「……今、言った通りだ。私はフランツェスカ・モルゲンロートを和平の駒ではなく、王家の一員として招き入れる。モルゲンロートとは国としての因縁もあるし、先日の戦で家族や友人を亡くした者もいるだろう。だが過去に囚われていてはなにも始まらない」
「ですが、それでは……納得できぬ者が出てます」
そして年配の貴族は忌々しそうな顔で一瞬私を見た後、再び国王へと向き直りました。
あまり良くは思われていないということが、それだけでわかります。
まあ、この国で私のことを良く思う人間なんて一人もいないでしょうが。
「和平とは互いに歩み寄る意志によって成されるもの。我々はモルゲンロートと和睦すると決めた、だからこれはその第一歩だと思ってもらいたい。私からはこれで以上だ! わかったならお前たちとっとと解散しろ! つまらんことばかり言って恥を晒すな!」
そう言って国王は手を振って貴族たちに解散を促した。
その言葉に渋々とでも言いたげに、集まった貴族達はその場から歩き出した。
だが去り際に小声で囁かれるのは不満と困惑の声で、中には拒絶の色を顔に浮かべる者もいました。
ですが、面と向かって国王に進言する勇気のある者はここには一人もいませんでした。
陰口しか叩けないなんて恥ずかしいですね。
「――父上、なんですかあれは」
「いや、本当は謁見の間で話すつもりだったんだがな……お前たちがなかなか来ないから来てみれば、アレだろう? 少し腹がたってな、若い娘によってたかって……あの馬鹿どもめ」
「いや、だからといって……」
シュヴァルツヴァルトの国王の先ほどの発言に対して、フリード王太子が咎めるような視線を投げる。
無理もありません。
確かに先ほどの発言は、一国の王として正気の沙汰とは思えない。
息子のフリード王太子もなにを考えているのかさっぱりわかりませんが、父親のシュヴァルツヴァルトの国王もいったいなにがしたいのか理解できません。
さっきの年配の貴族なんて国王にそう言われた瞬間、顔を真っ赤にしていて。
たいへん滑稽で面白かったのですが。
……あれは大丈夫でしょうか?
まあ私もあの貴族には睨みつけられましたので、心配してあげるような義理は全くありませんが。
かなりお年を召していらしたように見えましたので……今頃、息してますかね?
……それにしても。
どうしてシュヴァルツヴァルトの国王は私の事を『王家の一員』だと、そう易々と言えるのでしょうか。
会ったばかり。
しかも私は敵国の王女なのですよ?
それに。
あれはまるでお散歩中に拾ってきた子犬に「この子、うちの子ね!」とでも言うような雰囲気でしたけど。
そんな軽い雰囲気で済ませられるような簡単な問題では、決してないでしょうに。
実の父親ですら私の事を『和平の駒』として扱い、労いの言葉一つかけず送り出したのに。
どうして敵国の国王が私のことを娘として大事に扱い、労いの言葉をかけるのでしょう。
……私にはその理由がわかりませんでした。
シュヴァルツヴァルトの国王がこの場にやってきたことにより、私を中傷していた貴族達の顔は途端に青ざめていった。
元々敵国だったとはいえ、和平条件によって輿入れしてきた王女に対するいわれなき中傷の数々。
中傷していた貴族達も流石に不味いと思ったのだろう、フリード王太子が怒りを顕した時よりも幾分か顔色が悪く見える。
「国王陛下? 娘、というのは……?」
ゆったりとした足取りで年配の貴族が前に進み出て、シュヴァルツヴァルトの国王に問いかけた。
国王に直答できるということは、この年配の貴族はおそらく高い地位にいる者。
「……今、言った通りだ。私はフランツェスカ・モルゲンロートを和平の駒ではなく、王家の一員として招き入れる。モルゲンロートとは国としての因縁もあるし、先日の戦で家族や友人を亡くした者もいるだろう。だが過去に囚われていてはなにも始まらない」
「ですが、それでは……納得できぬ者が出てます」
そして年配の貴族は忌々しそうな顔で一瞬私を見た後、再び国王へと向き直りました。
あまり良くは思われていないということが、それだけでわかります。
まあ、この国で私のことを良く思う人間なんて一人もいないでしょうが。
「和平とは互いに歩み寄る意志によって成されるもの。我々はモルゲンロートと和睦すると決めた、だからこれはその第一歩だと思ってもらいたい。私からはこれで以上だ! わかったならお前たちとっとと解散しろ! つまらんことばかり言って恥を晒すな!」
そう言って国王は手を振って貴族たちに解散を促した。
その言葉に渋々とでも言いたげに、集まった貴族達はその場から歩き出した。
だが去り際に小声で囁かれるのは不満と困惑の声で、中には拒絶の色を顔に浮かべる者もいました。
ですが、面と向かって国王に進言する勇気のある者はここには一人もいませんでした。
陰口しか叩けないなんて恥ずかしいですね。
「――父上、なんですかあれは」
「いや、本当は謁見の間で話すつもりだったんだがな……お前たちがなかなか来ないから来てみれば、アレだろう? 少し腹がたってな、若い娘によってたかって……あの馬鹿どもめ」
「いや、だからといって……」
シュヴァルツヴァルトの国王の先ほどの発言に対して、フリード王太子が咎めるような視線を投げる。
無理もありません。
確かに先ほどの発言は、一国の王として正気の沙汰とは思えない。
息子のフリード王太子もなにを考えているのかさっぱりわかりませんが、父親のシュヴァルツヴァルトの国王もいったいなにがしたいのか理解できません。
さっきの年配の貴族なんて国王にそう言われた瞬間、顔を真っ赤にしていて。
たいへん滑稽で面白かったのですが。
……あれは大丈夫でしょうか?
まあ私もあの貴族には睨みつけられましたので、心配してあげるような義理は全くありませんが。
かなりお年を召していらしたように見えましたので……今頃、息してますかね?
……それにしても。
どうしてシュヴァルツヴァルトの国王は私の事を『王家の一員』だと、そう易々と言えるのでしょうか。
会ったばかり。
しかも私は敵国の王女なのですよ?
それに。
あれはまるでお散歩中に拾ってきた子犬に「この子、うちの子ね!」とでも言うような雰囲気でしたけど。
そんな軽い雰囲気で済ませられるような簡単な問題では、決してないでしょうに。
実の父親ですら私の事を『和平の駒』として扱い、労いの言葉一つかけず送り出したのに。
どうして敵国の国王が私のことを娘として大事に扱い、労いの言葉をかけるのでしょう。
……私にはその理由がわかりませんでした。
1,810
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる