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16 歓迎
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それからシュヴァルツヴァルトの国王に案内されたのは、公務で使われる謁見の間などではなく、王族の私的な空間にある応接間だった。
白を基調とした落ち着いた雰囲気の応接間。
中は控えめながらも一目で上質とわかる調度品が置かれており、居心地が良く整えられていた。
だけどなぜか部屋に入ると甘い香りが部屋いっぱいに漂っており、上品なこの空間には不釣り合いだなと感じさせた。
「ようこそ、シュヴァルツヴァルトへ。私はリーゼロッテ……フリードの母です。貴女にお会いできる日を心待ちにしておりました」
そしてそこにはリーゼロッテ王妃が一人、旧友でも迎えるようなにこやかな笑みを浮かべて待っていたのです。
「モルゲンロート国第一王女、フランツェスカ・モルゲンロートです。このたび和平の締結に伴い貴国に嫁ぐこととなりました。この縁が両国の未来へと繋がりますよう……微力ながら尽力いたします」
いくつか用意していた挨拶の言葉。
「あら、しっかりとしたお嬢さんね。けれど遠慮はしないで。これから私達は家族に、貴女は私の娘になるのですもの」
「え……」
また、どうして。
どう返したらいいのかわからない。
「長旅ですもの、さぞかし疲れたことでしょう。このあとはゆっくりと部屋で休むといいわ、食事も侍女に部屋に運ばせますからね」
「そうだな、明日も休息にあててゆっくりするといい。国境超えは寒かっただろう? 馬車の中ではあまり眠れなかったのではないか?」
労いの言葉。
クソ親父はそんな言葉、私に一言もかけなかった。
戦場に送る時ですらなにもなかった。
そして最後に言いやがったのは「お前にはもう用がない」だった。
それなのにどうして。
どうして敵国だったシュヴァルツヴァルトの国王や王妃が私にそんな風に優しくするのか。
しかも、この言葉には裏があるのではないかと疑う余地もないくらいとても自然に。
本当に私のことを心配して、労ってくれているみたいで……頭が混乱してしまう。
「国王陛下、王妃殿下、過分なご配慮ありがとうございます。フリード王太子殿下がご配慮下さったので、多少は馬車で眠ることができました」
……いや多少どころか、ぐっすりよく眠れました。
北でもよく野営していましたし、私の身体は寒さにはもう慣れっこになってしまっている。
それに馬車の中にクッションや毛皮をシュヴァルツヴァルトの騎士達が運び込んでくれたおかげで、王宮のベッドより快適でした。
寒くてよく眠れなかったのは馬車の外で野営をしていた、フリード王太子でしょう。
「そうか? それならばよいが……少し温かいものでも用意させよう。モルゲンロートとは違いシュヴァルツヴァルトは寒いからな、温かいスープはどうだ? 甘いものが欲しければそこに焼き菓子やらを用意させている、全部そなたの為に用意させたものだから遠慮せずたくさん食べなさい」
「あ、いえ……お茶だけでもう十分……」
応接間に入った瞬間から部屋に漂っていた甘い香りは、私のために用意されていた焼き菓子だったらしい。
その気配りに心が追い付かない。
「……母上、私にもなにかないのですか? お会いするのは久々ですが……」
「ああ、フリード。母は貴方に一言、いいたいことがあります」
「なんですか……?」
「貴方、フランツェスカさんの輿入れの日程を勝手に早めたそうね?」
「予定が空いてたので。迎えに行くなら早い方がいいと思いまして……」
「いったいなにを考えているの!? 嫁入りの準備をするのにどれだけの時間がかかると思っているの! それに嫁入り先は他国なのですよ、お別れだってあったでしょうに……! 早めるなんて……」
「え、あ……すいません」
「そうだぞフリード。お前はもっと相手の都合を考えろ、モルゲンロートに迎えに行くのは来週の予定だったはずだろう? 先ぶれも出さず、勝手に騎士を引き連れて行くとは……」
「いや、ぐずぐずするなとおっしゃったのは……父上でしょう?」
「その話とこれは、全く話が違うだろう!」
なんというか。
親子で言い争うその姿が微笑ましくも、少しだけ羨ましい。
そしてシュヴァルツヴァルトの使節団到着が予定よりもずいぶん早かったのは、フリード王太子の独断だったらしい。
「ああそれと……フリードとフランツェスカさん、二人に一つ言っておかなければならないことがあります」
「次はなんですか?」
「はい?」
「貴方達二人の婚姻は両国の和平の為に結ばれた契約という側面は確かにあります。けれど結婚する以上……お互いを尊重し、そして愛し合う夫婦にならなければなりませんよ」
王妃殿下のその言葉に、私の隣に座るフリード王太子の肩がビクリと跳ねたのがわかった。
……リーゼロッテ王妃殿下。
残念ですが、あなたのご子息様はすでに私に。
『愛するつもりはない』とか『恋人を作ってもいい』
とか色々と、宣っています。
なので今後私たちが愛し合う夫婦になることは絶対にないでしょう。
それからシュヴァルツヴァルトの国王に案内されたのは、公務で使われる謁見の間などではなく、王族の私的な空間にある応接間だった。
白を基調とした落ち着いた雰囲気の応接間。
中は控えめながらも一目で上質とわかる調度品が置かれており、居心地が良く整えられていた。
だけどなぜか部屋に入ると甘い香りが部屋いっぱいに漂っており、上品なこの空間には不釣り合いだなと感じさせた。
「ようこそ、シュヴァルツヴァルトへ。私はリーゼロッテ……フリードの母です。貴女にお会いできる日を心待ちにしておりました」
そしてそこにはリーゼロッテ王妃が一人、旧友でも迎えるようなにこやかな笑みを浮かべて待っていたのです。
「モルゲンロート国第一王女、フランツェスカ・モルゲンロートです。このたび和平の締結に伴い貴国に嫁ぐこととなりました。この縁が両国の未来へと繋がりますよう……微力ながら尽力いたします」
いくつか用意していた挨拶の言葉。
「あら、しっかりとしたお嬢さんね。けれど遠慮はしないで。これから私達は家族に、貴女は私の娘になるのですもの」
「え……」
また、どうして。
どう返したらいいのかわからない。
「長旅ですもの、さぞかし疲れたことでしょう。このあとはゆっくりと部屋で休むといいわ、食事も侍女に部屋に運ばせますからね」
「そうだな、明日も休息にあててゆっくりするといい。国境超えは寒かっただろう? 馬車の中ではあまり眠れなかったのではないか?」
労いの言葉。
クソ親父はそんな言葉、私に一言もかけなかった。
戦場に送る時ですらなにもなかった。
そして最後に言いやがったのは「お前にはもう用がない」だった。
それなのにどうして。
どうして敵国だったシュヴァルツヴァルトの国王や王妃が私にそんな風に優しくするのか。
しかも、この言葉には裏があるのではないかと疑う余地もないくらいとても自然に。
本当に私のことを心配して、労ってくれているみたいで……頭が混乱してしまう。
「国王陛下、王妃殿下、過分なご配慮ありがとうございます。フリード王太子殿下がご配慮下さったので、多少は馬車で眠ることができました」
……いや多少どころか、ぐっすりよく眠れました。
北でもよく野営していましたし、私の身体は寒さにはもう慣れっこになってしまっている。
それに馬車の中にクッションや毛皮をシュヴァルツヴァルトの騎士達が運び込んでくれたおかげで、王宮のベッドより快適でした。
寒くてよく眠れなかったのは馬車の外で野営をしていた、フリード王太子でしょう。
「そうか? それならばよいが……少し温かいものでも用意させよう。モルゲンロートとは違いシュヴァルツヴァルトは寒いからな、温かいスープはどうだ? 甘いものが欲しければそこに焼き菓子やらを用意させている、全部そなたの為に用意させたものだから遠慮せずたくさん食べなさい」
「あ、いえ……お茶だけでもう十分……」
応接間に入った瞬間から部屋に漂っていた甘い香りは、私のために用意されていた焼き菓子だったらしい。
その気配りに心が追い付かない。
「……母上、私にもなにかないのですか? お会いするのは久々ですが……」
「ああ、フリード。母は貴方に一言、いいたいことがあります」
「なんですか……?」
「貴方、フランツェスカさんの輿入れの日程を勝手に早めたそうね?」
「予定が空いてたので。迎えに行くなら早い方がいいと思いまして……」
「いったいなにを考えているの!? 嫁入りの準備をするのにどれだけの時間がかかると思っているの! それに嫁入り先は他国なのですよ、お別れだってあったでしょうに……! 早めるなんて……」
「え、あ……すいません」
「そうだぞフリード。お前はもっと相手の都合を考えろ、モルゲンロートに迎えに行くのは来週の予定だったはずだろう? 先ぶれも出さず、勝手に騎士を引き連れて行くとは……」
「いや、ぐずぐずするなとおっしゃったのは……父上でしょう?」
「その話とこれは、全く話が違うだろう!」
なんというか。
親子で言い争うその姿が微笑ましくも、少しだけ羨ましい。
そしてシュヴァルツヴァルトの使節団到着が予定よりもずいぶん早かったのは、フリード王太子の独断だったらしい。
「ああそれと……フリードとフランツェスカさん、二人に一つ言っておかなければならないことがあります」
「次はなんですか?」
「はい?」
「貴方達二人の婚姻は両国の和平の為に結ばれた契約という側面は確かにあります。けれど結婚する以上……お互いを尊重し、そして愛し合う夫婦にならなければなりませんよ」
王妃殿下のその言葉に、私の隣に座るフリード王太子の肩がビクリと跳ねたのがわかった。
……リーゼロッテ王妃殿下。
残念ですが、あなたのご子息様はすでに私に。
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なので今後私たちが愛し合う夫婦になることは絶対にないでしょう。
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