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37 これ以上の胃痛はご勘弁
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――立場に縛られなくていい。
その言葉が私の中で何度も何度も反響する。
これまでずっと立場に縛られて生きてきた。
王族として恥ずかしくないように。
いい女王になる為に。
誰にも足元をすくわれないように。
やりたいこと、したいこと全部諦めて。
『女王になる』ただそれだけの為に、必死に努力して生きてきた。
それは王族として生まれたから仕方のないことだと、最初から諦めていたし納得もしていた。
なのに、王妃殿下はそれがまるで当たり前のように「好きにしていい」と私に言った。
無責任に「自由にすればいい」と、私に囁く者はこれまでにも何人かいた。
でもそれは私に気に入られようとして言っているだけで、その言葉に責任を持つ者なんて誰一人もいなかった。
だから生まれて初めてだった。
責任ある立場の人間に、そんなことを言われるのは。
「リーゼロッテ王妃殿下、どうして私にそんなことを?」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
嬉しくてそうなっているのか、驚いてそうなっているのか自分でもわからない。
「フランツェスカさん、貴女は少し真面目すぎるわ。それじゃ息が詰まって仕方がないでしょう? それに貴女ならたとえ自由にしたとしても、間違った道は歩かない。私はそう思うの」
「王妃殿下は私を買いかぶりすぎです、私は間違ってばかり。結局は女王になれなかった……約束したのに」
「買いかぶってなんかないわ。貴女は聞いていた通り聡明なお嬢さんだったし、今もなにも間違えていない」
「聞いてたって……その、やっぱり……?」
「ふふっ、たぶん貴女の想像通りよ?」
「……お父様、ですか」
……あのクソ親父の名前を口に出しただけで、胃の奥がキリキリする。
まさか、ここに来てまでその影を感じることになるとは思っていなかった。
「ええ。やっぱり貴女は聞いていた通りね」
王妃殿下の柔らかな笑みが、ほんの少しだけ意地悪に見えたのは気のせいだろうか。
多分気のせい、きっときのせい。
これ以上胃痛を増やしたくない。
「どうして……だってあの人は、私に『もう用はない』って言ったんですよ!? それに戦場に私を送る時も『生きて帰れ』とか『帰りを待ってる』の一言もなくて……! 『行ってこい』だけだった。なのに……!」
……思い出した瞬間。
胸の奥がぐちゃぐちゃにかき回された。
今でもはっきりと覚えている。
『生まれるべきじゃなかった』
あの言葉と無関心な表情。
それなのに、なに勝手に人の事を他国の人間にペラペラと喋っているのでしょうあの人は。
身勝手にもほどがある。
「それはご本人に直接会って、お聞きしてみたらいかがかしら? 私の口からはなんとも……ね?」
……直接、会って聞けと?
あのクソ親父に?
喉がカラカラに渇く。
死ぬほど嫌だ。
でも……たぶん、それは避けては通れない。
だからいつかきっと、話さなくてはいけない。
「……とりあえず。今はこちらの問題解決が先です。ということで私もこれからレイチェルの元へ行こうと思います」
「あら、話を逸らすのね? 可愛いわぁ……」
「話を逸らしたのではありません。物事には優先順位というものがありましてですね、今はこちらを優先するだけです。父のことはまた……落ち着いたら考えます」
「ふふっ、ムキになっちゃって可愛い。ほんと聞いていた通りの負けず嫌いな子ね! いいわ、私もついて行ってあげましょう。クラウスやフリードになにか言われたら私が盾になってあげる。可愛い娘の為だもの……私、ずっと娘が欲しかったのよね」
「自分でそのくらいどうとでもできますが……王妃殿下、ありがとうございます。あと、あの人といったいなにを話したのですか。今度詳しく教えてくださいませ」
ゆっくり話す時間なんてなかったはず。
和平交渉もいつの間に行われていたのか、全くわからないですし。
「ふふっ、それは内緒」
そう言って微笑んだリーゼロッテ王妃殿下は、ほんの少しだけ亡くなった母に似ているような気がしました。
――立場に縛られなくていい。
その言葉が私の中で何度も何度も反響する。
これまでずっと立場に縛られて生きてきた。
王族として恥ずかしくないように。
いい女王になる為に。
誰にも足元をすくわれないように。
やりたいこと、したいこと全部諦めて。
『女王になる』ただそれだけの為に、必死に努力して生きてきた。
それは王族として生まれたから仕方のないことだと、最初から諦めていたし納得もしていた。
なのに、王妃殿下はそれがまるで当たり前のように「好きにしていい」と私に言った。
無責任に「自由にすればいい」と、私に囁く者はこれまでにも何人かいた。
でもそれは私に気に入られようとして言っているだけで、その言葉に責任を持つ者なんて誰一人もいなかった。
だから生まれて初めてだった。
責任ある立場の人間に、そんなことを言われるのは。
「リーゼロッテ王妃殿下、どうして私にそんなことを?」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
嬉しくてそうなっているのか、驚いてそうなっているのか自分でもわからない。
「フランツェスカさん、貴女は少し真面目すぎるわ。それじゃ息が詰まって仕方がないでしょう? それに貴女ならたとえ自由にしたとしても、間違った道は歩かない。私はそう思うの」
「王妃殿下は私を買いかぶりすぎです、私は間違ってばかり。結局は女王になれなかった……約束したのに」
「買いかぶってなんかないわ。貴女は聞いていた通り聡明なお嬢さんだったし、今もなにも間違えていない」
「聞いてたって……その、やっぱり……?」
「ふふっ、たぶん貴女の想像通りよ?」
「……お父様、ですか」
……あのクソ親父の名前を口に出しただけで、胃の奥がキリキリする。
まさか、ここに来てまでその影を感じることになるとは思っていなかった。
「ええ。やっぱり貴女は聞いていた通りね」
王妃殿下の柔らかな笑みが、ほんの少しだけ意地悪に見えたのは気のせいだろうか。
多分気のせい、きっときのせい。
これ以上胃痛を増やしたくない。
「どうして……だってあの人は、私に『もう用はない』って言ったんですよ!? それに戦場に私を送る時も『生きて帰れ』とか『帰りを待ってる』の一言もなくて……! 『行ってこい』だけだった。なのに……!」
……思い出した瞬間。
胸の奥がぐちゃぐちゃにかき回された。
今でもはっきりと覚えている。
『生まれるべきじゃなかった』
あの言葉と無関心な表情。
それなのに、なに勝手に人の事を他国の人間にペラペラと喋っているのでしょうあの人は。
身勝手にもほどがある。
「それはご本人に直接会って、お聞きしてみたらいかがかしら? 私の口からはなんとも……ね?」
……直接、会って聞けと?
あのクソ親父に?
喉がカラカラに渇く。
死ぬほど嫌だ。
でも……たぶん、それは避けては通れない。
だからいつかきっと、話さなくてはいけない。
「……とりあえず。今はこちらの問題解決が先です。ということで私もこれからレイチェルの元へ行こうと思います」
「あら、話を逸らすのね? 可愛いわぁ……」
「話を逸らしたのではありません。物事には優先順位というものがありましてですね、今はこちらを優先するだけです。父のことはまた……落ち着いたら考えます」
「ふふっ、ムキになっちゃって可愛い。ほんと聞いていた通りの負けず嫌いな子ね! いいわ、私もついて行ってあげましょう。クラウスやフリードになにか言われたら私が盾になってあげる。可愛い娘の為だもの……私、ずっと娘が欲しかったのよね」
「自分でそのくらいどうとでもできますが……王妃殿下、ありがとうございます。あと、あの人といったいなにを話したのですか。今度詳しく教えてくださいませ」
ゆっくり話す時間なんてなかったはず。
和平交渉もいつの間に行われていたのか、全くわからないですし。
「ふふっ、それは内緒」
そう言って微笑んだリーゼロッテ王妃殿下は、ほんの少しだけ亡くなった母に似ているような気がしました。
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