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62 その為に私は戻ってきた
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まるで子どもの喧嘩のような二人の言い合い。
見ているぶんには微笑ましいですし、ずっと眺めていたいような気もします。
ですが今は、それよりも先にやらなければいけないことがある。
だから二人を止めようと、私は口を開きかけた。
――その時。
縄で縛ったままの父が、第三騎士団の騎士に抱えられてちょうど王宮内に運ばれてきたのです。
「姫様。こちら……どういたしましょう?」
「どこか適当な部屋にでも運びましょうか。その辺に転がしておくと邪魔になりますので」
「かしこまりました」
その姿を見て、アクセルは。
「…………ねぇ、フランツェスカ?」
「はい、どういたしました?」
「いま……なにかすごいものが、見えたような……気がするんだけど? それは……なに?」
私と同じ紫色の目が、クソ親父のその姿に釘付けになっていた。
「これは……私の父です」
「父って……もしかして前国王!? 退位後、どこかに姿をくらましたっていう……」
「はい、その前国王です」
「いや……でも、どうしてこの状態? いったいなにが……」
「モルゲンロートに戻るのが嫌だと言って、逃げようとしたので仕方なく」
「だからってこれ? フランツェスカ……もしや君、なにか恨みが……」
「これは本当に仕方なくです、他意はありません」
もちろん恨みはありますが。
こういった形で復讐するつもりはありません。
この程度じゃ、全然足りませんし。
「……フランツェスカ。念のためにもう一度聞くけど、これ……本当に退位した前モルゲンロート国王?」
そしてアクセルは困惑したようにため息をついてから、私の方へと向き直った。
「残念ながら……」
「残念ながらって言っちゃったねぇ、ご本人の前で……」
アクセルが頭を抱えたその瞬間。
猿ぐつわ越しにクソ親父が「んー!」と抗議の声を上げる。
その姿に。
アクセルは引きつった顔で後ずさった。
「あまりお気になさらず、ほおっておいても大丈夫ですよ」
私はそう答えた。
……実際、気にする必要はない。
縛ってあるので、なにもできないし。
猿ぐつわしてあるから、なにも話せないし。
「いや、これは流石に気にすると思うよ? だってこれは……」
「言いたいことはわかりますが、これは自業自得です。そして私はその行いに対する相応の扱いをしているだけです」
「それにしたって、やる事がえげつない」
「そうです?」
「……フランツェスカ。君は今まで色々と大変だったんだね?」
「それは、まあ……それなりに」
「よし、わかった。今日から私は全力でフランツェスカを応援する」
急に真面目な顔をしたアクセルが、そう言って私に微笑んだ。
「え……どうしてです?」
「こんな面白い子、好きにならない男はいないよ?」
その言葉に、隣のフリードがピクリと反応した。
アクセルに向ける視線がさらに冷たくなったような気がする。
「……皇太子、それはどういう意味ですか?」
「どういう意味もなにも、そのままの意味だよ? フランツェスカはいい子で面白いし、いっそ帝国に連れて帰りたい……」
「それ以上続けたら……貴方の口にも猿ぐつわをすることになりますよ、皇太子?」
「え、なに怖っ。この状況だとそれ全然冗談に聞こえない! ほんと、君って……冗談が通じない」
「……冗談? そうは聞こえませんでしたが?」
アクセルがそう言って肩をすくめれば、フリードは眉間に皺を寄せたまま鋭い視線を返す。
そんな二人の言い合いに、私は息を吐いた。
「……フリード、アクセル。お遊びの時間はこれくらいにして、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか? その為に私は戻ってきたので」
その言葉に、二人の動きがぴたりと止まる。
「……そうですね」
「本題、いいね」
そう言ってフリードは微笑み。
アクセルが楽しそうに目を瞬かせる。
そして二人は。
――私へと視線を向けたのです。
まるで子どもの喧嘩のような二人の言い合い。
見ているぶんには微笑ましいですし、ずっと眺めていたいような気もします。
ですが今は、それよりも先にやらなければいけないことがある。
だから二人を止めようと、私は口を開きかけた。
――その時。
縄で縛ったままの父が、第三騎士団の騎士に抱えられてちょうど王宮内に運ばれてきたのです。
「姫様。こちら……どういたしましょう?」
「どこか適当な部屋にでも運びましょうか。その辺に転がしておくと邪魔になりますので」
「かしこまりました」
その姿を見て、アクセルは。
「…………ねぇ、フランツェスカ?」
「はい、どういたしました?」
「いま……なにかすごいものが、見えたような……気がするんだけど? それは……なに?」
私と同じ紫色の目が、クソ親父のその姿に釘付けになっていた。
「これは……私の父です」
「父って……もしかして前国王!? 退位後、どこかに姿をくらましたっていう……」
「はい、その前国王です」
「いや……でも、どうしてこの状態? いったいなにが……」
「モルゲンロートに戻るのが嫌だと言って、逃げようとしたので仕方なく」
「だからってこれ? フランツェスカ……もしや君、なにか恨みが……」
「これは本当に仕方なくです、他意はありません」
もちろん恨みはありますが。
こういった形で復讐するつもりはありません。
この程度じゃ、全然足りませんし。
「……フランツェスカ。念のためにもう一度聞くけど、これ……本当に退位した前モルゲンロート国王?」
そしてアクセルは困惑したようにため息をついてから、私の方へと向き直った。
「残念ながら……」
「残念ながらって言っちゃったねぇ、ご本人の前で……」
アクセルが頭を抱えたその瞬間。
猿ぐつわ越しにクソ親父が「んー!」と抗議の声を上げる。
その姿に。
アクセルは引きつった顔で後ずさった。
「あまりお気になさらず、ほおっておいても大丈夫ですよ」
私はそう答えた。
……実際、気にする必要はない。
縛ってあるので、なにもできないし。
猿ぐつわしてあるから、なにも話せないし。
「いや、これは流石に気にすると思うよ? だってこれは……」
「言いたいことはわかりますが、これは自業自得です。そして私はその行いに対する相応の扱いをしているだけです」
「それにしたって、やる事がえげつない」
「そうです?」
「……フランツェスカ。君は今まで色々と大変だったんだね?」
「それは、まあ……それなりに」
「よし、わかった。今日から私は全力でフランツェスカを応援する」
急に真面目な顔をしたアクセルが、そう言って私に微笑んだ。
「え……どうしてです?」
「こんな面白い子、好きにならない男はいないよ?」
その言葉に、隣のフリードがピクリと反応した。
アクセルに向ける視線がさらに冷たくなったような気がする。
「……皇太子、それはどういう意味ですか?」
「どういう意味もなにも、そのままの意味だよ? フランツェスカはいい子で面白いし、いっそ帝国に連れて帰りたい……」
「それ以上続けたら……貴方の口にも猿ぐつわをすることになりますよ、皇太子?」
「え、なに怖っ。この状況だとそれ全然冗談に聞こえない! ほんと、君って……冗談が通じない」
「……冗談? そうは聞こえませんでしたが?」
アクセルがそう言って肩をすくめれば、フリードは眉間に皺を寄せたまま鋭い視線を返す。
そんな二人の言い合いに、私は息を吐いた。
「……フリード、アクセル。お遊びの時間はこれくらいにして、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか? その為に私は戻ってきたので」
その言葉に、二人の動きがぴたりと止まる。
「……そうですね」
「本題、いいね」
そう言ってフリードは微笑み。
アクセルが楽しそうに目を瞬かせる。
そして二人は。
――私へと視線を向けたのです。
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