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2章 デビュー戦
39話 800mを走る理由
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800mはタイムレース決勝だ。
というより、100m、200m、400m以外は全て一発決勝。
走幅跳や投擲は3回の試技で記録を出さなくてはならないし、トラック種目は1回のレースで全てが決まる。
土日の2日間で開催という都合上仕方ないのだが、これで都大会進出の可否が決まるというのも緊張感がある仕組みだ。
「私はタイムレースの方が好きだけどな。記録会みたいに自分のペースで走れるし、疲れないし」
「えー、私は予選、準決、決勝って上がってくほうが好き! やっぱり他の選手と順位をめぐって競り合う方がやる気出るし。あと、3本目になったら、自己ベストの速い選手が勝つとも限らないしね。体力と気合の勝負、いいじゃん!」
歌と綾乃は800mのスタート地点で議論を交わしていた。
「でも確かに、今日のところはタイムレースでよかったかもね。マイルの決勝まで体力きついっしょ」
「正直、ね。朝にマイルの予選、昼に800m、夕方にマイルの決勝……全力でトラック4周は流石に苦しいや」
「私は決勝走らないけど、歌は走るからなぁー。ま、私に任せてよ」
綾乃と歌の800mの自己ベストは、僅かに1秒差で綾乃が速い。
しかしこれまで、何度もその序列は入れ替わってきた。
そして今、どちらが本当に速いのかは、2人にも正直なところ分からない。
なぜなら2人とも、自己ベストを大幅に更新できる自信があるからだ。
「悪いね、”相棒”」
「いいってことよ。一緒に、都大会行くんでしょ」
「うん」
2人が走るのは2組目。
登録タイム順の組み分けなため、持ちタイムでは全体のトップ16人以内ということ。
都大会進出ラインは12位なので、この組で4着以内のゴールが最低条件だろう。
もっとも、どの選手も登録タイム以上に実力は伸ばしているはずで、それによって結果は変わる。
綾乃と歌が1組目の選手より速く走ることもありえるし、逆にもっと後ろの組の選手が、頂点に立つ可能性もある。
なにより、データのない1年生も混じっているのだ、油断はできない。
「油断しないで、先頭でいくよ」
「了解」
2人は隣同士でスタート位置につく。
スターティングブロックを使わない、スタンディングスタートだ。
綾乃はいつものように明るい金色の髪をしっかりセットしているが、その横顔はキリリと本気の表情だ。
歌はその顔を見て、頼もしく思う。
チームで唯一の中距離専門選手、そして唯一の同期。
この舞台で隣を走る、自分に最も近く、最も頼りになる存在。
綾乃がリードしてくれるなら、勝利は必然だ。
「始まりますね……まさか先輩達、大会でも隣同士になるなんて」
「でもちょっと、楽しそうよねえ。麻矢と一緒に走ったのなんて、いつが最後だったか」
「美咲が100mに出てくれば走れるぞ!」
「嫌よ。あんな才能の暴力みたいな競技」
「200mの選手って、100mの選手のこと、いつもビミョーに見下してくるよな!」
「まぁまぁ、そこで戦えてる麻矢ちゃんは才能があるってことなんだから」
「香織の言う通りですよ。それに比べて400mは泥臭いですからね、華やかなショートスプリンターが羨ましいですよ」
「400mの選手も、卑屈な感じ出しつつビミョーに見下してくるよな?!」
伊緒は少し心配そうだが、3年生組は楽観的だ。
上級生として1年間練習を見てきて、ここで落ちるレベルではないと確信しているのだろう。
「なぁ瑠那、先輩達って結構、自分の専門種目にプライド持ってるよな……」
「歌先輩も400mに、綾乃先輩も1,500mについて語り出すと止まらないしな。800mの話は聞いたことないが」
「あれ? 確かに……」
2人とも去年の新人戦も含めて、主要な大会では必ず800mにエントリーしている。
しかし、あまり800mについて語っているところは見たことがなかった。
「スタートしました!」
伊緒に言われ、一同はおしゃべりを止めて応援をする。
オープンレーンになると同時に綾乃が早速先頭に立ち、すぐ後ろに歌がぴったりとくっついている。
歌は抜こうとする様子もなく、1周目はそのまま通過する。
「早速2人がトップに立ってますね! スプリンターの歌先輩の方が前半飛ばすかと思ってましたが」
「普段はそうだけど、あれは2人で示し合わせてるわね」
「あぁ、チームプレイだな」
伊緒は少し考えるが、レース展開を見てハッと気付く。
綾乃と歌はスパートをかけた素振りを見せないが、後続の選手は徐々に遅れだす。
実力を考えれば飛ばし過ぎというスピードでもない、一体なぜか。
「まさか、スリップストリーム!」
「正解~」
ぴんぽーん。と麻矢が笑って言う。
スリップストリーム。
F1の世界から自転車競技まで、レース界では常識とも言える技術。
簡単に言えば、前にぴったりとついて走ることで、風の抵抗をなくすことだ。
競技場には風速1.5m程度の風が吹いている。
バックストレートでは向かい風、ホームストレートでは追い風だ。
歌は、綾乃の後ろにぴったりとつけることで向かい風の影響を防いでいた。
また、追い風のときには綾乃から少し走路をずらすことで、互いに追い風の影響を受けている。
対して、後続の選手達は互いに距離がややあるがために、向かい風の影響を防げていない。
他校の選手同士がぴったりとくっついて走れないのには理由がある。
800mも含め、中距離は競技場の格闘技とも呼ばれる危険な種目。
ハイスピードかつオープンレーンなため、腕があたる、足を踏まれるなどのトラブルは耐えない。
世界大会でも毎回、転倒者が続出するほどの熾烈な争いが繰り広げられている。
そういったトラブルを避けるには、安全距離を取ることが一番なのだ。
そのため、他の選手達は歌ほど上手くスリップストリームを使えていなかった。
綾乃と歌はこれまで、何度も一緒に練習してきた。
相手の脚の運び方、腕の振り方、疲れた時の傾向、全て把握している。
ゆえに、かなり距離を詰めてすぐ後ろを走ることができるのだ。
「綾乃ちゃんは体力がある上に、これで今大会の出番は終わりですからね。マイルの決勝を控える歌ちゃんの負担を考えて、風除けの役割を担ったのでしょう。美しい連携プレーですね」
今日初めて使う戦術だったのか、蒼も感心している。
そして綾乃と歌はラスト100m、ホームストレートに戻ってこようというところだ。
(歌……こっから飛ばすよ!)
(ここまで楽させてもらったんだから、今度は私の番!)
ホームストレートに入るところで、歌はスパートをかけて綾乃を抜き去る。
そして今度は綾乃が歌を真後ろから追う形になった。
「ポジションが入れ替わった!?」
「なるほど……ラストスパート、全力を出せば、余力のある歌ちゃんが先頭になる。それを見越して、今度は綾乃ちゃんがスリップストリームを使うわけですか」
「ナイスコンビネーションだな!」
歌はスプリンターのスピードを活かしてスパートし、綾乃もそれに続いてゴールした。
「2人とも2分23秒台ですよ!!」
「これなら余裕の都大会進出ね」
ゴール地点では、付き添いを買って出た花火が2人にタオルとドリンクを渡している。
綾乃は流石に疲れたようで、地面に座り込んで空を仰いでいた。
「やっぱ、一緒に走るのは楽しいなぁー!」
「ほんとにね! でも今日はハンデもらっちゃったから、都大会では……本気の勝負したいね」
「のぞむところだっ」
拳を突き出した歌に、綾乃も応えてコツンと拳をぶつけた。
歌と綾乃は、中学時代から陸上部に所属していた。
当時の専門種目はともに800m。
学校は別々なれど実力はまさに伯仲、当時から大会では何度も競い合った仲だ。
そしていつしか大会の度、競技場で暇を見つけては語り合うほどになった。
中学女子の大会種目は、高校の種目とは少し違う。
成長途中の身体への負荷を考え、高負荷な種目はなくなっている。
400mもその一つで、歌は200mではなく800mを主戦場にした。
そして3,000mもなく、1,500mが最も長い距離になる。
すると将来より長い距離を主戦場にする予定のスタミナ型の選手は、1,500mに流入する。
結果、綾乃のようなスピード方の中距離選手は自然と800mを主戦場にすることになった。
テレビ越しに見た世界の舞台で憧れたのは、それぞれ400mと1,500m。
短距離と中距離という、交わることのない世界だった。
しかし中学時代、競い合って最も熱くなれた相手との再戦を忘れることはできない。
結果的に、互いに専門種目に軸足を置きつつも、800mへのエントリーは継続した。
そして白熱した勝負を求め、示し合わせたわけでもないのに、互いに800mの練習も欠かさなかった。
2人とも、800mについてはもはや語らない。
他者に求めるものも、もはやない。
求めるのは、ただ一つ、永遠にして最高のライバルとの、最高に熱い勝負。
地区予選は、タイトなスケジュールによって全力でぶつかれない。
つまり今日の連携プレーはチームメイト同士の連携というわけではなく、倒すべき相手との一時休戦、共同戦線だったのだ。
全力でぶつかり合うレースをするために、今日のレースは通過点に過ぎない。
「マイル、期待してるから」
「これだけお膳立てしてもらって……負けられないよね。うん」
また勝負したい、そう思えるライバルとの出会いは貴重だ。
どれだけ速くても、そんな相手に出会えるとは限らない。
しかし出会えば、両者に言葉はいらない。
レースの中で、言葉より多くを語り合えるのだから。
800mとは……奇跡的に出会った2人にとっての、魂の会話の場だったのだ。
というより、100m、200m、400m以外は全て一発決勝。
走幅跳や投擲は3回の試技で記録を出さなくてはならないし、トラック種目は1回のレースで全てが決まる。
土日の2日間で開催という都合上仕方ないのだが、これで都大会進出の可否が決まるというのも緊張感がある仕組みだ。
「私はタイムレースの方が好きだけどな。記録会みたいに自分のペースで走れるし、疲れないし」
「えー、私は予選、準決、決勝って上がってくほうが好き! やっぱり他の選手と順位をめぐって競り合う方がやる気出るし。あと、3本目になったら、自己ベストの速い選手が勝つとも限らないしね。体力と気合の勝負、いいじゃん!」
歌と綾乃は800mのスタート地点で議論を交わしていた。
「でも確かに、今日のところはタイムレースでよかったかもね。マイルの決勝まで体力きついっしょ」
「正直、ね。朝にマイルの予選、昼に800m、夕方にマイルの決勝……全力でトラック4周は流石に苦しいや」
「私は決勝走らないけど、歌は走るからなぁー。ま、私に任せてよ」
綾乃と歌の800mの自己ベストは、僅かに1秒差で綾乃が速い。
しかしこれまで、何度もその序列は入れ替わってきた。
そして今、どちらが本当に速いのかは、2人にも正直なところ分からない。
なぜなら2人とも、自己ベストを大幅に更新できる自信があるからだ。
「悪いね、”相棒”」
「いいってことよ。一緒に、都大会行くんでしょ」
「うん」
2人が走るのは2組目。
登録タイム順の組み分けなため、持ちタイムでは全体のトップ16人以内ということ。
都大会進出ラインは12位なので、この組で4着以内のゴールが最低条件だろう。
もっとも、どの選手も登録タイム以上に実力は伸ばしているはずで、それによって結果は変わる。
綾乃と歌が1組目の選手より速く走ることもありえるし、逆にもっと後ろの組の選手が、頂点に立つ可能性もある。
なにより、データのない1年生も混じっているのだ、油断はできない。
「油断しないで、先頭でいくよ」
「了解」
2人は隣同士でスタート位置につく。
スターティングブロックを使わない、スタンディングスタートだ。
綾乃はいつものように明るい金色の髪をしっかりセットしているが、その横顔はキリリと本気の表情だ。
歌はその顔を見て、頼もしく思う。
チームで唯一の中距離専門選手、そして唯一の同期。
この舞台で隣を走る、自分に最も近く、最も頼りになる存在。
綾乃がリードしてくれるなら、勝利は必然だ。
「始まりますね……まさか先輩達、大会でも隣同士になるなんて」
「でもちょっと、楽しそうよねえ。麻矢と一緒に走ったのなんて、いつが最後だったか」
「美咲が100mに出てくれば走れるぞ!」
「嫌よ。あんな才能の暴力みたいな競技」
「200mの選手って、100mの選手のこと、いつもビミョーに見下してくるよな!」
「まぁまぁ、そこで戦えてる麻矢ちゃんは才能があるってことなんだから」
「香織の言う通りですよ。それに比べて400mは泥臭いですからね、華やかなショートスプリンターが羨ましいですよ」
「400mの選手も、卑屈な感じ出しつつビミョーに見下してくるよな?!」
伊緒は少し心配そうだが、3年生組は楽観的だ。
上級生として1年間練習を見てきて、ここで落ちるレベルではないと確信しているのだろう。
「なぁ瑠那、先輩達って結構、自分の専門種目にプライド持ってるよな……」
「歌先輩も400mに、綾乃先輩も1,500mについて語り出すと止まらないしな。800mの話は聞いたことないが」
「あれ? 確かに……」
2人とも去年の新人戦も含めて、主要な大会では必ず800mにエントリーしている。
しかし、あまり800mについて語っているところは見たことがなかった。
「スタートしました!」
伊緒に言われ、一同はおしゃべりを止めて応援をする。
オープンレーンになると同時に綾乃が早速先頭に立ち、すぐ後ろに歌がぴったりとくっついている。
歌は抜こうとする様子もなく、1周目はそのまま通過する。
「早速2人がトップに立ってますね! スプリンターの歌先輩の方が前半飛ばすかと思ってましたが」
「普段はそうだけど、あれは2人で示し合わせてるわね」
「あぁ、チームプレイだな」
伊緒は少し考えるが、レース展開を見てハッと気付く。
綾乃と歌はスパートをかけた素振りを見せないが、後続の選手は徐々に遅れだす。
実力を考えれば飛ばし過ぎというスピードでもない、一体なぜか。
「まさか、スリップストリーム!」
「正解~」
ぴんぽーん。と麻矢が笑って言う。
スリップストリーム。
F1の世界から自転車競技まで、レース界では常識とも言える技術。
簡単に言えば、前にぴったりとついて走ることで、風の抵抗をなくすことだ。
競技場には風速1.5m程度の風が吹いている。
バックストレートでは向かい風、ホームストレートでは追い風だ。
歌は、綾乃の後ろにぴったりとつけることで向かい風の影響を防いでいた。
また、追い風のときには綾乃から少し走路をずらすことで、互いに追い風の影響を受けている。
対して、後続の選手達は互いに距離がややあるがために、向かい風の影響を防げていない。
他校の選手同士がぴったりとくっついて走れないのには理由がある。
800mも含め、中距離は競技場の格闘技とも呼ばれる危険な種目。
ハイスピードかつオープンレーンなため、腕があたる、足を踏まれるなどのトラブルは耐えない。
世界大会でも毎回、転倒者が続出するほどの熾烈な争いが繰り広げられている。
そういったトラブルを避けるには、安全距離を取ることが一番なのだ。
そのため、他の選手達は歌ほど上手くスリップストリームを使えていなかった。
綾乃と歌はこれまで、何度も一緒に練習してきた。
相手の脚の運び方、腕の振り方、疲れた時の傾向、全て把握している。
ゆえに、かなり距離を詰めてすぐ後ろを走ることができるのだ。
「綾乃ちゃんは体力がある上に、これで今大会の出番は終わりですからね。マイルの決勝を控える歌ちゃんの負担を考えて、風除けの役割を担ったのでしょう。美しい連携プレーですね」
今日初めて使う戦術だったのか、蒼も感心している。
そして綾乃と歌はラスト100m、ホームストレートに戻ってこようというところだ。
(歌……こっから飛ばすよ!)
(ここまで楽させてもらったんだから、今度は私の番!)
ホームストレートに入るところで、歌はスパートをかけて綾乃を抜き去る。
そして今度は綾乃が歌を真後ろから追う形になった。
「ポジションが入れ替わった!?」
「なるほど……ラストスパート、全力を出せば、余力のある歌ちゃんが先頭になる。それを見越して、今度は綾乃ちゃんがスリップストリームを使うわけですか」
「ナイスコンビネーションだな!」
歌はスプリンターのスピードを活かしてスパートし、綾乃もそれに続いてゴールした。
「2人とも2分23秒台ですよ!!」
「これなら余裕の都大会進出ね」
ゴール地点では、付き添いを買って出た花火が2人にタオルとドリンクを渡している。
綾乃は流石に疲れたようで、地面に座り込んで空を仰いでいた。
「やっぱ、一緒に走るのは楽しいなぁー!」
「ほんとにね! でも今日はハンデもらっちゃったから、都大会では……本気の勝負したいね」
「のぞむところだっ」
拳を突き出した歌に、綾乃も応えてコツンと拳をぶつけた。
歌と綾乃は、中学時代から陸上部に所属していた。
当時の専門種目はともに800m。
学校は別々なれど実力はまさに伯仲、当時から大会では何度も競い合った仲だ。
そしていつしか大会の度、競技場で暇を見つけては語り合うほどになった。
中学女子の大会種目は、高校の種目とは少し違う。
成長途中の身体への負荷を考え、高負荷な種目はなくなっている。
400mもその一つで、歌は200mではなく800mを主戦場にした。
そして3,000mもなく、1,500mが最も長い距離になる。
すると将来より長い距離を主戦場にする予定のスタミナ型の選手は、1,500mに流入する。
結果、綾乃のようなスピード方の中距離選手は自然と800mを主戦場にすることになった。
テレビ越しに見た世界の舞台で憧れたのは、それぞれ400mと1,500m。
短距離と中距離という、交わることのない世界だった。
しかし中学時代、競い合って最も熱くなれた相手との再戦を忘れることはできない。
結果的に、互いに専門種目に軸足を置きつつも、800mへのエントリーは継続した。
そして白熱した勝負を求め、示し合わせたわけでもないのに、互いに800mの練習も欠かさなかった。
2人とも、800mについてはもはや語らない。
他者に求めるものも、もはやない。
求めるのは、ただ一つ、永遠にして最高のライバルとの、最高に熱い勝負。
地区予選は、タイトなスケジュールによって全力でぶつかれない。
つまり今日の連携プレーはチームメイト同士の連携というわけではなく、倒すべき相手との一時休戦、共同戦線だったのだ。
全力でぶつかり合うレースをするために、今日のレースは通過点に過ぎない。
「マイル、期待してるから」
「これだけお膳立てしてもらって……負けられないよね。うん」
また勝負したい、そう思えるライバルとの出会いは貴重だ。
どれだけ速くても、そんな相手に出会えるとは限らない。
しかし出会えば、両者に言葉はいらない。
レースの中で、言葉より多くを語り合えるのだから。
800mとは……奇跡的に出会った2人にとっての、魂の会話の場だったのだ。
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