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2章
37-2
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「おねーさんひとり? えーめっちゃ可愛いじゃん」
「俺らと遊ぼうよーとりあえずどこ住み?」
「い、いや……あの」
なんだお前ら、日本の繁華街から湧いて出たんか。
そんな2人の青年に、エメラルドグリーンのワンピースを揺らしながら壁際へと追い込まれた……俺。
「ねぇ、おねーさん……俺らとイイ事しない?」
「これも何かの縁だしさぁ、3人でタノシイコトしようよ」
引き攣る顔に掛かるのは、緩く巻かれた銀髪のロングヘア。眉下に切りそろえられた奥にある紫色の瞳は、この状況をどうしたものかと揺れている。
――というかお前ら、声で男だって気付けよ。
ピクピクと眉が寄るのを他所に男たちは、編み上げの大きく開かれた胸元の上でキュッと握られた白肌の手首を、乱暴に握る。
「ちょっ……止めてください、連れが居るんで」
「えー? どこどこー居ないじゃん」
「んじゃそのお連れさんも一緒に遊ぼうよー。おねーさんのお友達なら絶対可愛いっしょ!」
そうだな、可愛いよ。……ベクトル違いだけど。
腕を掴む男たちが、ジリジリと俺に迫る。
メインストリートから1本裏手に入った路地。建物の影になっているそこは、助けを呼ぶにも人の姿が見当たらない。
ドンッと背中に当たる茶色のレンガが「これ以上の逃亡は不可能」ということを告げている。
「ほんっと、止めてください……ってか、止めた方がいいと思うんです、貴方達の為にも。命は大事ですから」
この数分後に起こることを想像した俺の口から、ポロッとそんな本音が盛れる。
大袈裟じゃなくて多分だけど君たちはこの後、人生最大のピンチを迎える事になると思うんだ。
「はー? それどういう意……」
そう言い終わる前、ダンッッ!! と凄まじい音と共に男が立つ横のレンガがパラパラと音を立てる。
「そんなに言うなら、一緒に遊んでやろうじゃないか」
壁にめり込む腕をそのままに、いつの間にか俺たちの横に立つ男……その紺碧の瞳は瞳孔が開き、口許はそれはそれはいい笑顔で歪んでいる。
さながら漆黒の魔王降臨と言っても過言ではない。
「ヒッ!!」
「なんだ、イイトコロに連れてってくれるんだろ?」
……ほら、言わんこっちゃない。
予想通り過ぎるこの展開に頭を抱える俺の前で、片方の男は壊れたロボットのように首を動かし、魔王の存在を確認したかと思えばみるみるうちに顔面蒼白に、もう片方は……立ったまま気絶してないか?
「で。お前ら、俺の連れになんか用か?」
おかしいな、どうして質問をするのに国宝級の剣を抜く必要があるのだろうか。
蒼穹の剣身が首に充てられれば、男はすぐ様両手で「降参」を謳い、ジリジリと俺たちから距離を取る。
「や、止めなよ……俺別に何かされたわけじゃないし」
ズンズンと近寄ってきたイーサンは俺の肩を抱き、自分の方に引き寄せながら、剣を男たちに向け……それはまさに、か弱い女性を守るかっこいい騎士様そのもの。
「は? お前の肌に一瞬でも触れた事がもう既に大罪、己の命で償うべきだろ」
「いやほんと何言ってんの」
このびっくりサイコパスな台詞と、殺人鬼のような表情が無ければ、だが。
「話が違ぇじゃねぇかよ……」
「おい、もういい。行くぞ」
男たちが何やら小声で話しているのが耳に留まり、ふとそちらを振り返る。
だが既に2人の姿は……どこにも見当たらなかった。
>>>
暗い路地にポツンと残された俺は今、ゴツゴツとした腕の中の囲われている。
頭ひとつ分大きな彼は、俺の安否を確かめるかのようにその身を屈め、額、頬、そして手首に至るまで丁寧に唇を落としていた。
「ちょっと1人になっただけで絡まれるとは……」
彼に対してだけ敏感な俺の肌は、薄い唇が触れる度にピクッと弾む。
「言ったろう、マクスマイザ王国はそういう場所なんだ。頼むからもう、俺の傍を離れないでくれ」
一通り口付けが終わった彼は、俺の長い髪を掻き上げながら美しい青の瞳でじっとこちらを見つめている。その深い海のような色に吸い込まれそうになる俺は、慌てて目を背けた。
――相変わらず、イーサンの瞳を見てるとドキドキが止まらなくなる……
俺の気持ちを知ってか知らずか、熱っぽい目元に熱い唇が添えられた。
「うん、ごめんね。まさかあんな簡単にはぐれるなんて思わなくて……」
つい露店で売られていた物珍しい酒に目を奪われ足を止めイーサンの手を離した瞬間、溢れんばかりの人の波に俺の身体は攫われてしまう。
必死に彼の姿を探すも見当たらず……辿り着いた先がこの裏路地だった。
「お前の姿が見えなくなって、狂いそうになった」
「ほんの少しの間じゃん……大袈裟だよ」
苦笑いしながら腕を回した背中は、少しばかり湿り気を帯びている。
必死に俺の事を探し回る彼の姿を想像して、いつもより強くその大きな身体に抱き着いた。
「罰としてこの後3日は、お前を部屋から出さない」
「そんな事してたら、ミアランジェに行くの遅くなっちゃうよ」
そんな事を言いながら満更でもない俺は、彼から与えられた口付けを自ら深めていった。
――ここは人々の欲望と闇が渦巻く、世界最大の魔境都市マクスマイザ王国。
逃亡の末辿り着いたこの場所は、甘くて危険な……どこまでも人の欲望に忠実な街だった。
「おねーさんひとり? えーめっちゃ可愛いじゃん」
「俺らと遊ぼうよーとりあえずどこ住み?」
「い、いや……あの」
なんだお前ら、日本の繁華街から湧いて出たんか。
そんな2人の青年に、エメラルドグリーンのワンピースを揺らしながら壁際へと追い込まれた……俺。
「ねぇ、おねーさん……俺らとイイ事しない?」
「これも何かの縁だしさぁ、3人でタノシイコトしようよ」
引き攣る顔に掛かるのは、緩く巻かれた銀髪のロングヘア。眉下に切りそろえられた奥にある紫色の瞳は、この状況をどうしたものかと揺れている。
――というかお前ら、声で男だって気付けよ。
ピクピクと眉が寄るのを他所に男たちは、編み上げの大きく開かれた胸元の上でキュッと握られた白肌の手首を、乱暴に握る。
「ちょっ……止めてください、連れが居るんで」
「えー? どこどこー居ないじゃん」
「んじゃそのお連れさんも一緒に遊ぼうよー。おねーさんのお友達なら絶対可愛いっしょ!」
そうだな、可愛いよ。……ベクトル違いだけど。
腕を掴む男たちが、ジリジリと俺に迫る。
メインストリートから1本裏手に入った路地。建物の影になっているそこは、助けを呼ぶにも人の姿が見当たらない。
ドンッと背中に当たる茶色のレンガが「これ以上の逃亡は不可能」ということを告げている。
「ほんっと、止めてください……ってか、止めた方がいいと思うんです、貴方達の為にも。命は大事ですから」
この数分後に起こることを想像した俺の口から、ポロッとそんな本音が盛れる。
大袈裟じゃなくて多分だけど君たちはこの後、人生最大のピンチを迎える事になると思うんだ。
「はー? それどういう意……」
そう言い終わる前、ダンッッ!! と凄まじい音と共に男が立つ横のレンガがパラパラと音を立てる。
「そんなに言うなら、一緒に遊んでやろうじゃないか」
壁にめり込む腕をそのままに、いつの間にか俺たちの横に立つ男……その紺碧の瞳は瞳孔が開き、口許はそれはそれはいい笑顔で歪んでいる。
さながら漆黒の魔王降臨と言っても過言ではない。
「ヒッ!!」
「なんだ、イイトコロに連れてってくれるんだろ?」
……ほら、言わんこっちゃない。
予想通り過ぎるこの展開に頭を抱える俺の前で、片方の男は壊れたロボットのように首を動かし、魔王の存在を確認したかと思えばみるみるうちに顔面蒼白に、もう片方は……立ったまま気絶してないか?
「で。お前ら、俺の連れになんか用か?」
おかしいな、どうして質問をするのに国宝級の剣を抜く必要があるのだろうか。
蒼穹の剣身が首に充てられれば、男はすぐ様両手で「降参」を謳い、ジリジリと俺たちから距離を取る。
「や、止めなよ……俺別に何かされたわけじゃないし」
ズンズンと近寄ってきたイーサンは俺の肩を抱き、自分の方に引き寄せながら、剣を男たちに向け……それはまさに、か弱い女性を守るかっこいい騎士様そのもの。
「は? お前の肌に一瞬でも触れた事がもう既に大罪、己の命で償うべきだろ」
「いやほんと何言ってんの」
このびっくりサイコパスな台詞と、殺人鬼のような表情が無ければ、だが。
「話が違ぇじゃねぇかよ……」
「おい、もういい。行くぞ」
男たちが何やら小声で話しているのが耳に留まり、ふとそちらを振り返る。
だが既に2人の姿は……どこにも見当たらなかった。
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暗い路地にポツンと残された俺は今、ゴツゴツとした腕の中の囲われている。
頭ひとつ分大きな彼は、俺の安否を確かめるかのようにその身を屈め、額、頬、そして手首に至るまで丁寧に唇を落としていた。
「ちょっと1人になっただけで絡まれるとは……」
彼に対してだけ敏感な俺の肌は、薄い唇が触れる度にピクッと弾む。
「言ったろう、マクスマイザ王国はそういう場所なんだ。頼むからもう、俺の傍を離れないでくれ」
一通り口付けが終わった彼は、俺の長い髪を掻き上げながら美しい青の瞳でじっとこちらを見つめている。その深い海のような色に吸い込まれそうになる俺は、慌てて目を背けた。
――相変わらず、イーサンの瞳を見てるとドキドキが止まらなくなる……
俺の気持ちを知ってか知らずか、熱っぽい目元に熱い唇が添えられた。
「うん、ごめんね。まさかあんな簡単にはぐれるなんて思わなくて……」
つい露店で売られていた物珍しい酒に目を奪われ足を止めイーサンの手を離した瞬間、溢れんばかりの人の波に俺の身体は攫われてしまう。
必死に彼の姿を探すも見当たらず……辿り着いた先がこの裏路地だった。
「お前の姿が見えなくなって、狂いそうになった」
「ほんの少しの間じゃん……大袈裟だよ」
苦笑いしながら腕を回した背中は、少しばかり湿り気を帯びている。
必死に俺の事を探し回る彼の姿を想像して、いつもより強くその大きな身体に抱き着いた。
「罰としてこの後3日は、お前を部屋から出さない」
「そんな事してたら、ミアランジェに行くの遅くなっちゃうよ」
そんな事を言いながら満更でもない俺は、彼から与えられた口付けを自ら深めていった。
――ここは人々の欲望と闇が渦巻く、世界最大の魔境都市マクスマイザ王国。
逃亡の末辿り着いたこの場所は、甘くて危険な……どこまでも人の欲望に忠実な街だった。
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