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2章
37-3
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――
『マクスマイザ王国? そこに向かっているの?』
ぴーちゃんの背に乗り、アトランティウムからの脱出をしたあの日。
夜空の遊覧をしながら、イーサンに今後の事について訊ねると、聞いた事もない都市の名前が返ってきた。
『あぁ、ギルバートは聖域ミアランジェで全員落ち合おうと言っていた。ミアランジェは最北の果て……トリの体力も限界が近いように見える。この先は地上を移動する方が良いだろう』
『確かに、ぴーちゃんの勢いが段々と落ちている気がする』
『キィィ……』
勢いよく地上を飛び立って既に数時間が経過している。成人男性2名を乗せての飛行、さすがにぴーちゃんの身体にも負担が掛かっているのだろう……その勢いと高度は、目に見える程落ちていた。
『ミアランジェへは、ラキシウス王国、アリニーア帝国、マクスマイザ王国そのいずれかを通る必要がある』
『ほ、ほう……』
聞き馴染みのない単語達に、俺はその片仮名の羅列を追うことで精一杯。
さすがに幻想夜想曲で、国外に出る事なんて無かったからな……
『そうしてギニア遺跡群を抜け、大陸先端にある楽園ショアーヌに隠された転送門でしか、行く術が存在しない』
『隠されたって……もしそれが見つからなかったら……』
それがどんな場所なのか、皆目見当もつかないが万が一見付からなかったら……もう皆に会えないのではないか。
――『アオさーん! 新作のお菓子買ってきたっすよぉ』
『なぁ、キーファ……それ俺の分無くね?』
『ギルバート副団長はそんな事より早くその書類終わらせてください。……俺の分はあるんだろうな、キーファよ』
『もちろんっすよぉ! ジェイスさんの分、俺が忘れる訳ないでしょ』
不意に脳裏に、あの暖かい日々が蘇る。
色濃く湧き上がる不安が、背中を伝いイーサンに伝わったのか、彼は後ろから優しく俺の頭を撫でてくれた。
『心配無用、騎士団の人間……幹部以上の者はその場所を把握している。だからこそ、ギルバートはミアランジェを選んだのだろうからな』
『そっか……それなら大丈夫か、良かった』
ホッと胸を撫で下ろし、そのまま脱力した身体をイーサンに預けた。
『あぁ、問題ない。寧ろ問題なのは、どこのルートを使って行くかだが……』
『さっき言ってた三国のこと? 1番早いルートで行くのはダメなの?』
なるべく早いに超したことはないだろう。……だが、心配なのはアーク達の存在。目的の地だって、どうせ彼らには筒抜けなのだろう。
『直線で行けるラキシウス王国を使うのが早い……だがあの国は閉鎖的で余所者を嫌う。俺達が入れば間違いなく目立ち、動きが制限されるだろう』
いい思い出が無いのだろうか、イーサンは眉間に皺を寄せながら深いため息を吐く。
『そっか……じゃぁ、アリニーア帝国は? 帝国って言うくらいだし色々な民族がいる分悪目立ちしなそうだけど……』
『そうだな。しかも2番目に早いルートとなる上、国情も安定している。……だがその好条件の道には、アーク達が何かしら仕掛けている可能性が高い』
『それはそう……だね、すんなり行かせて貰える訳ないか。なら、最後の……なんだっけ、マクスマイザ王国?』
イーサンの言葉に俺は頷く。当然イーサンも警戒するよな……あのアトランティウムの惨状を目の当たりにしたんだから。
『そうだな……』
それまで淡々と話していたイーサンが、突然何かを言い淀むように言葉を詰まらせる。
不思議に思った俺は後ろを振り向き彼の様子を伺うと、眉間に皺の寄ったイーサンと目が合った。
『どうしたの? あんまり乗り気じゃない?』
キョトンと開いた俺の大きな目を暫くじっと見つめた彼は、ため息混じりに言葉を続ける。
『……マクスマイザはな、世界最悪と云われている治安だからだ。正直アーク達が何かを仕掛けなくても、無事国を抜けられるか怪しい……』
『……っ!! そんな場所……』
『だが、行くしかない。……残された道はそこしかないんだ』
イーサンの声が、これまでとは打って変わって力強い物になる。
アトランティウム以外の事を何も知らない自分が、彼の決定に反対する理由なんてない。
腰に回る腕へと重なっていた手に、キュッと力が入った事に彼が気が付いたのだろう、熱っぽい吐息が耳を掠めたかと思えば「ちゅっ」という音が耳の奥まで届く。
『まぁ、そう心配するな。お前の事は命に変えてでも守ってやる』
『だっ、ダメだよ。……イーサンに何かあるのは俺……嫌だ……』
下がった眉のまま顔を上に向けると、少し驚いた表情の彼と目が合った。だが直ぐにイーサンは「ふっ」といつもの笑い顔に戻り身をかがめ、震える笑いぼくろに向かい口付けを落とした。
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『マクスマイザ王国? そこに向かっているの?』
ぴーちゃんの背に乗り、アトランティウムからの脱出をしたあの日。
夜空の遊覧をしながら、イーサンに今後の事について訊ねると、聞いた事もない都市の名前が返ってきた。
『あぁ、ギルバートは聖域ミアランジェで全員落ち合おうと言っていた。ミアランジェは最北の果て……トリの体力も限界が近いように見える。この先は地上を移動する方が良いだろう』
『確かに、ぴーちゃんの勢いが段々と落ちている気がする』
『キィィ……』
勢いよく地上を飛び立って既に数時間が経過している。成人男性2名を乗せての飛行、さすがにぴーちゃんの身体にも負担が掛かっているのだろう……その勢いと高度は、目に見える程落ちていた。
『ミアランジェへは、ラキシウス王国、アリニーア帝国、マクスマイザ王国そのいずれかを通る必要がある』
『ほ、ほう……』
聞き馴染みのない単語達に、俺はその片仮名の羅列を追うことで精一杯。
さすがに幻想夜想曲で、国外に出る事なんて無かったからな……
『そうしてギニア遺跡群を抜け、大陸先端にある楽園ショアーヌに隠された転送門でしか、行く術が存在しない』
『隠されたって……もしそれが見つからなかったら……』
それがどんな場所なのか、皆目見当もつかないが万が一見付からなかったら……もう皆に会えないのではないか。
――『アオさーん! 新作のお菓子買ってきたっすよぉ』
『なぁ、キーファ……それ俺の分無くね?』
『ギルバート副団長はそんな事より早くその書類終わらせてください。……俺の分はあるんだろうな、キーファよ』
『もちろんっすよぉ! ジェイスさんの分、俺が忘れる訳ないでしょ』
不意に脳裏に、あの暖かい日々が蘇る。
色濃く湧き上がる不安が、背中を伝いイーサンに伝わったのか、彼は後ろから優しく俺の頭を撫でてくれた。
『心配無用、騎士団の人間……幹部以上の者はその場所を把握している。だからこそ、ギルバートはミアランジェを選んだのだろうからな』
『そっか……それなら大丈夫か、良かった』
ホッと胸を撫で下ろし、そのまま脱力した身体をイーサンに預けた。
『あぁ、問題ない。寧ろ問題なのは、どこのルートを使って行くかだが……』
『さっき言ってた三国のこと? 1番早いルートで行くのはダメなの?』
なるべく早いに超したことはないだろう。……だが、心配なのはアーク達の存在。目的の地だって、どうせ彼らには筒抜けなのだろう。
『直線で行けるラキシウス王国を使うのが早い……だがあの国は閉鎖的で余所者を嫌う。俺達が入れば間違いなく目立ち、動きが制限されるだろう』
いい思い出が無いのだろうか、イーサンは眉間に皺を寄せながら深いため息を吐く。
『そっか……じゃぁ、アリニーア帝国は? 帝国って言うくらいだし色々な民族がいる分悪目立ちしなそうだけど……』
『そうだな。しかも2番目に早いルートとなる上、国情も安定している。……だがその好条件の道には、アーク達が何かしら仕掛けている可能性が高い』
『それはそう……だね、すんなり行かせて貰える訳ないか。なら、最後の……なんだっけ、マクスマイザ王国?』
イーサンの言葉に俺は頷く。当然イーサンも警戒するよな……あのアトランティウムの惨状を目の当たりにしたんだから。
『そうだな……』
それまで淡々と話していたイーサンが、突然何かを言い淀むように言葉を詰まらせる。
不思議に思った俺は後ろを振り向き彼の様子を伺うと、眉間に皺の寄ったイーサンと目が合った。
『どうしたの? あんまり乗り気じゃない?』
キョトンと開いた俺の大きな目を暫くじっと見つめた彼は、ため息混じりに言葉を続ける。
『……マクスマイザはな、世界最悪と云われている治安だからだ。正直アーク達が何かを仕掛けなくても、無事国を抜けられるか怪しい……』
『……っ!! そんな場所……』
『だが、行くしかない。……残された道はそこしかないんだ』
イーサンの声が、これまでとは打って変わって力強い物になる。
アトランティウム以外の事を何も知らない自分が、彼の決定に反対する理由なんてない。
腰に回る腕へと重なっていた手に、キュッと力が入った事に彼が気が付いたのだろう、熱っぽい吐息が耳を掠めたかと思えば「ちゅっ」という音が耳の奥まで届く。
『まぁ、そう心配するな。お前の事は命に変えてでも守ってやる』
『だっ、ダメだよ。……イーサンに何かあるのは俺……嫌だ……』
下がった眉のまま顔を上に向けると、少し驚いた表情の彼と目が合った。だが直ぐにイーサンは「ふっ」といつもの笑い顔に戻り身をかがめ、震える笑いぼくろに向かい口付けを落とした。
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