75 / 93
2章
37-2
>>>
「おねーさんひとり? えーめっちゃ可愛いじゃん」
「俺らと遊ぼうよーとりあえずどこ住み?」
「い、いや……あの」
なんだお前ら、日本の繁華街から湧いて出たんか。
そんな2人の青年に、エメラルドグリーンのワンピースを揺らしながら壁際へと追い込まれた……俺。
「ねぇ、おねーさん……俺らとイイ事しない?」
「これも何かの縁だしさぁ、3人でタノシイコトしようよ」
引き攣る顔に掛かるのは、緩く巻かれた銀髪のロングヘア。眉下に切りそろえられた奥にある紫色の瞳は、この状況をどうしたものかと揺れている。
――というかお前ら、声で男だって気付けよ。
ピクピクと眉が寄るのを他所に男たちは、編み上げの大きく開かれた胸元の上でキュッと握られた白肌の手首を、乱暴に握る。
「ちょっ……止めてください、連れが居るんで」
「えー? どこどこー居ないじゃん」
「んじゃそのお連れさんも一緒に遊ぼうよー。おねーさんのお友達なら絶対可愛いっしょ!」
そうだな、可愛いよ。……ベクトル違いだけど。
腕を掴む男たちが、ジリジリと俺に迫る。
メインストリートから1本裏手に入った路地。建物の影になっているそこは、助けを呼ぶにも人の姿が見当たらない。
ドンッと背中に当たる茶色のレンガが「これ以上の逃亡は不可能」ということを告げている。
「ほんっと、止めてください……ってか、止めた方がいいと思うんです、貴方達の為にも。命は大事ですから」
この数分後に起こることを想像した俺の口から、ポロッとそんな本音が盛れる。
大袈裟じゃなくて多分だけど君たちはこの後、人生最大のピンチを迎える事になると思うんだ。
「はー? それどういう意……」
そう言い終わる前、ダンッッ!! と凄まじい音と共に男が立つ横のレンガがパラパラと音を立てる。
「そんなに言うなら、一緒に遊んでやろうじゃないか」
壁にめり込む腕をそのままに、いつの間にか俺たちの横に立つ男……その紺碧の瞳は瞳孔が開き、口許はそれはそれはいい笑顔で歪んでいる。
さながら漆黒の魔王降臨と言っても過言ではない。
「ヒッ!!」
「なんだ、イイトコロに連れてってくれるんだろ?」
……ほら、言わんこっちゃない。
予想通り過ぎるこの展開に頭を抱える俺の前で、片方の男は壊れたロボットのように首を動かし、魔王の存在を確認したかと思えばみるみるうちに顔面蒼白に、もう片方は……立ったまま気絶してないか?
「で。お前ら、俺の連れになんか用か?」
おかしいな、どうして質問をするのに国宝級の剣を抜く必要があるのだろうか。
蒼穹の剣身が首に充てられれば、男はすぐ様両手で「降参」を謳い、ジリジリと俺たちから距離を取る。
「や、止めなよ……俺別に何かされたわけじゃないし」
ズンズンと近寄ってきたイーサンは俺の肩を抱き、自分の方に引き寄せながら、剣を男たちに向け……それはまさに、か弱い女性を守るかっこいい騎士様そのもの。
「は? お前の肌に一瞬でも触れた事がもう既に大罪、己の命で償うべきだろ」
「いやほんと何言ってんの」
このびっくりサイコパスな台詞と、殺人鬼のような表情が無ければ、だが。
「話が違ぇじゃねぇかよ……」
「おい、もういい。行くぞ」
男たちが何やら小声で話しているのが耳に留まり、ふとそちらを振り返る。
だが既に2人の姿は……どこにも見当たらなかった。
>>>
暗い路地にポツンと残された俺は今、ゴツゴツとした腕の中の囲われている。
頭ひとつ分大きな彼は、俺の安否を確かめるかのようにその身を屈め、額、頬、そして手首に至るまで丁寧に唇を落としていた。
「ちょっと1人になっただけで絡まれるとは……」
彼に対してだけ敏感な俺の肌は、薄い唇が触れる度にピクッと弾む。
「言ったろう、マクスマイザ王国はそういう場所なんだ。頼むからもう、俺の傍を離れないでくれ」
一通り口付けが終わった彼は、俺の長い髪を掻き上げながら美しい青の瞳でじっとこちらを見つめている。その深い海のような色に吸い込まれそうになる俺は、慌てて目を背けた。
――相変わらず、イーサンの瞳を見てるとドキドキが止まらなくなる……
俺の気持ちを知ってか知らずか、熱っぽい目元に熱い唇が添えられた。
「うん、ごめんね。まさかあんな簡単にはぐれるなんて思わなくて……」
つい露店で売られていた物珍しい酒に目を奪われ足を止めイーサンの手を離した瞬間、溢れんばかりの人の波に俺の身体は攫われてしまう。
必死に彼の姿を探すも見当たらず……辿り着いた先がこの裏路地だった。
「お前の姿が見えなくなって、狂いそうになった」
「ほんの少しの間じゃん……大袈裟だよ」
苦笑いしながら腕を回した背中は、少しばかり湿り気を帯びている。
必死に俺の事を探し回る彼の姿を想像して、いつもより強くその大きな身体に抱き着いた。
「罰としてこの後3日は、お前を部屋から出さない」
「そんな事してたら、ミアランジェに行くの遅くなっちゃうよ」
そんな事を言いながら満更でもない俺は、彼から与えられた口付けを自ら深めていった。
――ここは人々の欲望と闇が渦巻く、世界最大の魔境都市マクスマイザ王国。
逃亡の末辿り着いたこの場所は、甘くて危険な……どこまでも人の欲望に忠実な街だった。
「おねーさんひとり? えーめっちゃ可愛いじゃん」
「俺らと遊ぼうよーとりあえずどこ住み?」
「い、いや……あの」
なんだお前ら、日本の繁華街から湧いて出たんか。
そんな2人の青年に、エメラルドグリーンのワンピースを揺らしながら壁際へと追い込まれた……俺。
「ねぇ、おねーさん……俺らとイイ事しない?」
「これも何かの縁だしさぁ、3人でタノシイコトしようよ」
引き攣る顔に掛かるのは、緩く巻かれた銀髪のロングヘア。眉下に切りそろえられた奥にある紫色の瞳は、この状況をどうしたものかと揺れている。
――というかお前ら、声で男だって気付けよ。
ピクピクと眉が寄るのを他所に男たちは、編み上げの大きく開かれた胸元の上でキュッと握られた白肌の手首を、乱暴に握る。
「ちょっ……止めてください、連れが居るんで」
「えー? どこどこー居ないじゃん」
「んじゃそのお連れさんも一緒に遊ぼうよー。おねーさんのお友達なら絶対可愛いっしょ!」
そうだな、可愛いよ。……ベクトル違いだけど。
腕を掴む男たちが、ジリジリと俺に迫る。
メインストリートから1本裏手に入った路地。建物の影になっているそこは、助けを呼ぶにも人の姿が見当たらない。
ドンッと背中に当たる茶色のレンガが「これ以上の逃亡は不可能」ということを告げている。
「ほんっと、止めてください……ってか、止めた方がいいと思うんです、貴方達の為にも。命は大事ですから」
この数分後に起こることを想像した俺の口から、ポロッとそんな本音が盛れる。
大袈裟じゃなくて多分だけど君たちはこの後、人生最大のピンチを迎える事になると思うんだ。
「はー? それどういう意……」
そう言い終わる前、ダンッッ!! と凄まじい音と共に男が立つ横のレンガがパラパラと音を立てる。
「そんなに言うなら、一緒に遊んでやろうじゃないか」
壁にめり込む腕をそのままに、いつの間にか俺たちの横に立つ男……その紺碧の瞳は瞳孔が開き、口許はそれはそれはいい笑顔で歪んでいる。
さながら漆黒の魔王降臨と言っても過言ではない。
「ヒッ!!」
「なんだ、イイトコロに連れてってくれるんだろ?」
……ほら、言わんこっちゃない。
予想通り過ぎるこの展開に頭を抱える俺の前で、片方の男は壊れたロボットのように首を動かし、魔王の存在を確認したかと思えばみるみるうちに顔面蒼白に、もう片方は……立ったまま気絶してないか?
「で。お前ら、俺の連れになんか用か?」
おかしいな、どうして質問をするのに国宝級の剣を抜く必要があるのだろうか。
蒼穹の剣身が首に充てられれば、男はすぐ様両手で「降参」を謳い、ジリジリと俺たちから距離を取る。
「や、止めなよ……俺別に何かされたわけじゃないし」
ズンズンと近寄ってきたイーサンは俺の肩を抱き、自分の方に引き寄せながら、剣を男たちに向け……それはまさに、か弱い女性を守るかっこいい騎士様そのもの。
「は? お前の肌に一瞬でも触れた事がもう既に大罪、己の命で償うべきだろ」
「いやほんと何言ってんの」
このびっくりサイコパスな台詞と、殺人鬼のような表情が無ければ、だが。
「話が違ぇじゃねぇかよ……」
「おい、もういい。行くぞ」
男たちが何やら小声で話しているのが耳に留まり、ふとそちらを振り返る。
だが既に2人の姿は……どこにも見当たらなかった。
>>>
暗い路地にポツンと残された俺は今、ゴツゴツとした腕の中の囲われている。
頭ひとつ分大きな彼は、俺の安否を確かめるかのようにその身を屈め、額、頬、そして手首に至るまで丁寧に唇を落としていた。
「ちょっと1人になっただけで絡まれるとは……」
彼に対してだけ敏感な俺の肌は、薄い唇が触れる度にピクッと弾む。
「言ったろう、マクスマイザ王国はそういう場所なんだ。頼むからもう、俺の傍を離れないでくれ」
一通り口付けが終わった彼は、俺の長い髪を掻き上げながら美しい青の瞳でじっとこちらを見つめている。その深い海のような色に吸い込まれそうになる俺は、慌てて目を背けた。
――相変わらず、イーサンの瞳を見てるとドキドキが止まらなくなる……
俺の気持ちを知ってか知らずか、熱っぽい目元に熱い唇が添えられた。
「うん、ごめんね。まさかあんな簡単にはぐれるなんて思わなくて……」
つい露店で売られていた物珍しい酒に目を奪われ足を止めイーサンの手を離した瞬間、溢れんばかりの人の波に俺の身体は攫われてしまう。
必死に彼の姿を探すも見当たらず……辿り着いた先がこの裏路地だった。
「お前の姿が見えなくなって、狂いそうになった」
「ほんの少しの間じゃん……大袈裟だよ」
苦笑いしながら腕を回した背中は、少しばかり湿り気を帯びている。
必死に俺の事を探し回る彼の姿を想像して、いつもより強くその大きな身体に抱き着いた。
「罰としてこの後3日は、お前を部屋から出さない」
「そんな事してたら、ミアランジェに行くの遅くなっちゃうよ」
そんな事を言いながら満更でもない俺は、彼から与えられた口付けを自ら深めていった。
――ここは人々の欲望と闇が渦巻く、世界最大の魔境都市マクスマイザ王国。
逃亡の末辿り着いたこの場所は、甘くて危険な……どこまでも人の欲望に忠実な街だった。
あなたにおすすめの小説
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される