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1章
こぼれ話.ギルバートとアレフ
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――第1騎士団宿舎、4階団長私室
「……てな感じで、あのイーサンが照れ顔を見せる迄になった、……ってとこだな」
ある休日の昼下がり。
「……っ、んぁ……そう、か……ぁっあっ、ぁっ……報告、ご苦労……んぁぁっ……だが、今言わなくても……んっ、いいだろう……っっ!!」
窓の外から眩しい程の太陽光が降り注ぐ中。
「お互い忙しい身だろ? 効率よくしたほうがいいと思ってな」
俺の腕の中で乱れる愛しい男に、近状報告なんてものをしている。
上司にあたる男とよく似たこの男。
違いがあるとすれば年相応の大人びた顔立ちと、金糸の美しい髪色。目尻にある2つの泣きボクロに舌を這わせると、彼はビクッと身体を震わせ、紺碧の瞳を潤ませる。
「っ、わかったから……んぁ、ぅ……私に集中……は、ふっ……しろ……」
そう言ってアレフは、俺の背中に回した手でガリっとそこを引っ掻く。
「っ……相変わらず独占欲の強さは兄弟同じようで」
その痛みに煽られ、パンパンッと音を立てながら身体をぶつけると、結合部からぐちゅっぶちゅっと卑猥な音が鳴り響く。
「はっ、ぁあぁああっも、イクッ……イク……ギルっっ…」
「んっ……俺もイきそ、……っっ…!」
顔を真っ赤に染め、強い快楽に眉を寄せるアレフに口付けると、まるでそれを待っていたかのように彼は自ら舌を差し出す。くちゅくちゅと舌を絡ませ合いながら、互いの熱を吐き出した。
俺たちは所謂「秘密の恋人」同士。
その関係は思春期から始まった。
騎士になる為の過酷な訓練や、貴族教育。そんな忙しい毎日で蔑ろになっていた性欲を発散させたいと、誘ってきたのはアレフの方からだった。「自分で処理しろよ」なんて笑いながら了承したのが俺。そんな身体から始まった関係だが、いつの間にか心まで掴まれ、今やお互い無くてはならない存在となっている。
……だが、その関係は公にならないまま、静かに終わりを迎えようとしていた。
「大丈夫か? アレフ。何時になく派手にイったな」
「は、っ……あぁ、……煩い、言うな……」
アレフ・ゼル・クライヴ。
名門侯爵クライヴ家の長男で次期当主。そんな男が、侯爵家の三男坊……ましてや従兄弟の男とズルズルとこの先付き合う訳にはいかないだろ。そう思いながらも離れられず、気が付けばアレフも先月28歳になった。流石に跡継ぎを……と両親が焦っているのか、最近は見合い話が絶えないという噂だ。
――もう、潮時なんだろうな。
そんな言葉が頭を過ぎる回数が日に日に増えていく。
「……この後、ロイデール侯爵家の令嬢と茶会なんだろ?」
ベッドで抱き合い、アレフの髪を撫でる俺がそう言うと、ピクっと彼の身体が揺らいだ。
「何故それを知っている」
心做しか声が震えているように聞こえるのは……気の所為だろうか。
「イーサンから聞いた」
俺は変わらぬ声色でそう返した。
「……そうか」
長い睫毛を伏せ何かを考える素振りを見せたかと思えば、するりと腕の中から抜け、ベッドから降りたアレフはこちらを見向きもせずそのままシャワールームへと向かった。
「ロイデール侯爵家……名門じゃん。お似合い、だな」
ベッドに残された俺は1人そう呟くと、大きな溜め息を吐く。身体を横に向け、彼の熱が仄かに残るシーツをギュッと握り、これからの事を考え静かに目を閉じた。
きっと、この縁談は纏まるんだろうな。
――今日で俺たちの関係も終わり、か。
カタンッとクローゼットが開く音で、意識が覚醒する。
……いつの間にか寝ちまったのか。
背中の向こうでは、身を清め終わったアレフが、恐らく茶会に向けて着替えを初めているだろう。布擦れ音が聞こえる度に、俺の心は暗く影を落として行った。
行くな……と言えばいいものを。いつもの軽口は、こういう時に何の役にも立たない。らしくない自分に、無性に腹が立つ。
見える所に死ぬ程痕残してやればよかった。……いや、何考えてんだよ。アレフの大事な縁談ぶち壊してどうすんだ。
「どうして、行くなと言わない」
ベッドで丸くなる俺の身体を、不意に暖かい物が包んだ。
「……は? ……いや、何言って……そんなの言える訳……」
何言っている?と振り返ると、正装に着替えたものだとばかり思っていたアレフは、白いシルクのガウンを羽織っていた。その瞳は、何か言いたげにじっと俺の事を見つめている。
「私が他の人間の物になろうとしているのに、止めもしないのか。……お前にとって私は、それだけの価値という事か」
そんなアレフの言葉に、俺の脳内からプチッという音が聞こえた。
「……っっあの、なぁ!!」
勢いよく俺は身体を起こし、アレフの肩を強く掴んだかと思えば、そのままベッドに組み敷いた。
「……ギル……?」
焚き付けた筈の彼は、驚き目を見開いている。……そんな姿に、無性に腹が立った。
「ンな事…言えたらこんな苦しんでねぇんだよ」
ずっと溜め込んでいた言葉を、彼に向かって吐き出した。
「……ギル……」
「お前と俺とじゃ何もかも違いすぎるんだよ!! ましてや俺は男だ…身内だ。だから、そんな軽々しく……我儘なんて……言えるはずないだろ」
はぁはぁ、と息を荒らげ、強い口調でそう吐き捨てた。
――本当は、誰にも渡したくないんだよ……アレフの事を。でもその気持ちは、大人になればなるほど俺の心を苦しめてきた。
俺が女だったら。俺が赤の他人だったら。……誰にも文句を言わせず、ずっと傍にいる事が出来るのに。
そんな事ずっと思ってたなんて、口が裂けても言えやしない。
目頭が熱くなるのを、唇を噛み締めグッと耐えた。大の大人……しかも男がこんなの所で泣いて、みっともないだけだ。
「……私の事を愛しているか? ギルバート」
彼の上で、おそらく酷い顔をしている俺の顔を、アレフは腕を伸ばして優しく撫でた。何も言葉を返す事の出来ない俺は、それに静かに頷く。
「……行く、なよ。ずっと俺の傍に居ろよ……アレフ」
子供みたいな我儘を呟いた俺に、彼は「フッ」と笑って見せた。
「漸く言ってくれたな。お前の本心を聞く為に、どれだけ茶番を演じた事か」
……ん?
今なんか、……後半とんでもない言葉聞こえなかったか?
「どういうことだ」
目は大きく見開かれ、アレフの肩を抑えていた腕が無意識に震える。そんな自分とは打って変わって俺の下の彼は見たことも無い程の満面の笑み。
「安心しろ、ロイデール家との茶会なんてとうの昔に断りを入れている。なんなら他の縁談も全て破談済みだ」
……ん?ちょっとコイツの言っていることが理解出来ないが……?
「……は?……いやでもイーサンが」
「あぁ、言えと命じたからな」
「……え?」
思わず腕の力が抜ける。それをいい事に、アレフはゆっくり起き上がったかと思えば、代わりに今度は俺が天井を見る事となった。
「お前はよく、イーサンの事を独占欲と執着心の塊と言っていたが……私もイーサンも根っこは同じなんだよ、ギルバート。何せ血を分けた兄弟なんだからな」
「……はい?」
そんな素っ頓狂な返事しか出来ない俺の顎に、アレフの長い綺麗な指が掛かる。
「アレはまだ、真っ直ぐな分救いがあるが。悪いな、初めて関係を持った14の時から、お前の将来は私が貰うと決めているんだ」
「悪い……何言ってるのか。いやお前、公爵家の跡取りだし……俺身内だし……」
目の前にある「ニヤリ」と口を歪ませたその顔は、何かを企んでいるイーサンに酷似して……いや、それ以上になにかドス黒い物を感じる。「あれ? これ、俺なんか逃げられないやつ?」なんて言葉が瞬時に頭を過ぎった。
「お前、中々本心を見せないからな。私が嫁を貰うなんてホラ吹けばなにか聞けるかと思い、イーサンにも色々協力させたんだよ……気付かなかったか?」
……そういえば「アレフが見合いする」だなんだの情報は全部アイツ伝いだった気がしなくもないが……いや、それ疑うってのが無理な話だろうがよ!?
「い、いやあの……ほら、お前跡取りとかさ、そういう問題出てくるじゃん。俺もお前も産めないよ!?男だよ?」
素直に喜べばいいものを。どうして俺の口は、不安を示唆する言葉しか生み出すことが出来ないのか。彼に押し倒されたまま必死にあれやこれや言う俺に、アレフは顎に掛けた指をクイッと動かし、身をかがめ煩い俺の唇を塞いだ。
「そんなもの。そもそも両親には、お前以外伴侶にはしないと説得済み。イーサンも男色だとカミングアウトし、ならまぁ養子を貰うなりなんなりで家の存続をすれば良い、好きに生きろとの事だ」
はァァァァァ!?
いやたしかに、どんな遺伝子の間違いがあってこの兄弟が生まれたんだって程にぽやっとしたご両親だけれどもぉぉそんな軽くていいのかよおおお!?
「……俺の悩んだ時間……返せよ……」
「因みに、この件はお前のところのサイラス家も了承済だ。良かったな、ギル。私たちの邪魔をする者は誰ひとり居ないぞ」
「ちょ、いつの間に……?」
頭の良い奴は嫌いだ。
彼の熱で濡れた唇を、再びギリっと噛む。
「そもそも、後継者問題が切迫しているならば、この歳まで独り身なわけないだろ。もうとっくに所帯持ちになって子供の2、3人は産まれている」
「してやったり」と顔に書いてあるアレフのその表情が、途端に憎らしくなる。いまだ俺の顎に置かれたままの腕を強く引き、バランスを崩したアレフを受け止めながらその唇を自分のそれで覆った。
「……第1騎士団は、団長不在で何日許される」
「2日……いや、3日はどうにかなるだろうな」
見た事が無いほどキラキラ輝くアレフの瞳には、機嫌が悪そうに眉を寄せる俺の姿が映っている。
「覚悟しろよ、なら3日かけてこれ迄俺が我慢し続けたモノをお前に全部ぶちまけてやるからな」
透き通るような美しい首筋に顔を埋め、そこに思い切りガリっと噛み付く。
「……っ、は……それはそれは……楽しみだな」
たったそれだけの行為で、アレフは達した時と同じように身体を震わせた。
「……愛してるよ、アレフ」
「私もだ、ギルバートよ」
ずっと諦めなければと思っていたものが、手に入るなんてな。態度はアレだったかもしれないが……嬉しくないわけないだろ。
……俺の心の中は、初めてアレフを抱いたあの日と同じ様に高揚していた。
「……てな感じで、あのイーサンが照れ顔を見せる迄になった、……ってとこだな」
ある休日の昼下がり。
「……っ、んぁ……そう、か……ぁっあっ、ぁっ……報告、ご苦労……んぁぁっ……だが、今言わなくても……んっ、いいだろう……っっ!!」
窓の外から眩しい程の太陽光が降り注ぐ中。
「お互い忙しい身だろ? 効率よくしたほうがいいと思ってな」
俺の腕の中で乱れる愛しい男に、近状報告なんてものをしている。
上司にあたる男とよく似たこの男。
違いがあるとすれば年相応の大人びた顔立ちと、金糸の美しい髪色。目尻にある2つの泣きボクロに舌を這わせると、彼はビクッと身体を震わせ、紺碧の瞳を潤ませる。
「っ、わかったから……んぁ、ぅ……私に集中……は、ふっ……しろ……」
そう言ってアレフは、俺の背中に回した手でガリっとそこを引っ掻く。
「っ……相変わらず独占欲の強さは兄弟同じようで」
その痛みに煽られ、パンパンッと音を立てながら身体をぶつけると、結合部からぐちゅっぶちゅっと卑猥な音が鳴り響く。
「はっ、ぁあぁああっも、イクッ……イク……ギルっっ…」
「んっ……俺もイきそ、……っっ…!」
顔を真っ赤に染め、強い快楽に眉を寄せるアレフに口付けると、まるでそれを待っていたかのように彼は自ら舌を差し出す。くちゅくちゅと舌を絡ませ合いながら、互いの熱を吐き出した。
俺たちは所謂「秘密の恋人」同士。
その関係は思春期から始まった。
騎士になる為の過酷な訓練や、貴族教育。そんな忙しい毎日で蔑ろになっていた性欲を発散させたいと、誘ってきたのはアレフの方からだった。「自分で処理しろよ」なんて笑いながら了承したのが俺。そんな身体から始まった関係だが、いつの間にか心まで掴まれ、今やお互い無くてはならない存在となっている。
……だが、その関係は公にならないまま、静かに終わりを迎えようとしていた。
「大丈夫か? アレフ。何時になく派手にイったな」
「は、っ……あぁ、……煩い、言うな……」
アレフ・ゼル・クライヴ。
名門侯爵クライヴ家の長男で次期当主。そんな男が、侯爵家の三男坊……ましてや従兄弟の男とズルズルとこの先付き合う訳にはいかないだろ。そう思いながらも離れられず、気が付けばアレフも先月28歳になった。流石に跡継ぎを……と両親が焦っているのか、最近は見合い話が絶えないという噂だ。
――もう、潮時なんだろうな。
そんな言葉が頭を過ぎる回数が日に日に増えていく。
「……この後、ロイデール侯爵家の令嬢と茶会なんだろ?」
ベッドで抱き合い、アレフの髪を撫でる俺がそう言うと、ピクっと彼の身体が揺らいだ。
「何故それを知っている」
心做しか声が震えているように聞こえるのは……気の所為だろうか。
「イーサンから聞いた」
俺は変わらぬ声色でそう返した。
「……そうか」
長い睫毛を伏せ何かを考える素振りを見せたかと思えば、するりと腕の中から抜け、ベッドから降りたアレフはこちらを見向きもせずそのままシャワールームへと向かった。
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きっと、この縁談は纏まるんだろうな。
――今日で俺たちの関係も終わり、か。
カタンッとクローゼットが開く音で、意識が覚醒する。
……いつの間にか寝ちまったのか。
背中の向こうでは、身を清め終わったアレフが、恐らく茶会に向けて着替えを初めているだろう。布擦れ音が聞こえる度に、俺の心は暗く影を落として行った。
行くな……と言えばいいものを。いつもの軽口は、こういう時に何の役にも立たない。らしくない自分に、無性に腹が立つ。
見える所に死ぬ程痕残してやればよかった。……いや、何考えてんだよ。アレフの大事な縁談ぶち壊してどうすんだ。
「どうして、行くなと言わない」
ベッドで丸くなる俺の身体を、不意に暖かい物が包んだ。
「……は? ……いや、何言って……そんなの言える訳……」
何言っている?と振り返ると、正装に着替えたものだとばかり思っていたアレフは、白いシルクのガウンを羽織っていた。その瞳は、何か言いたげにじっと俺の事を見つめている。
「私が他の人間の物になろうとしているのに、止めもしないのか。……お前にとって私は、それだけの価値という事か」
そんなアレフの言葉に、俺の脳内からプチッという音が聞こえた。
「……っっあの、なぁ!!」
勢いよく俺は身体を起こし、アレフの肩を強く掴んだかと思えば、そのままベッドに組み敷いた。
「……ギル……?」
焚き付けた筈の彼は、驚き目を見開いている。……そんな姿に、無性に腹が立った。
「ンな事…言えたらこんな苦しんでねぇんだよ」
ずっと溜め込んでいた言葉を、彼に向かって吐き出した。
「……ギル……」
「お前と俺とじゃ何もかも違いすぎるんだよ!! ましてや俺は男だ…身内だ。だから、そんな軽々しく……我儘なんて……言えるはずないだろ」
はぁはぁ、と息を荒らげ、強い口調でそう吐き捨てた。
――本当は、誰にも渡したくないんだよ……アレフの事を。でもその気持ちは、大人になればなるほど俺の心を苦しめてきた。
俺が女だったら。俺が赤の他人だったら。……誰にも文句を言わせず、ずっと傍にいる事が出来るのに。
そんな事ずっと思ってたなんて、口が裂けても言えやしない。
目頭が熱くなるのを、唇を噛み締めグッと耐えた。大の大人……しかも男がこんなの所で泣いて、みっともないだけだ。
「……私の事を愛しているか? ギルバート」
彼の上で、おそらく酷い顔をしている俺の顔を、アレフは腕を伸ばして優しく撫でた。何も言葉を返す事の出来ない俺は、それに静かに頷く。
「……行く、なよ。ずっと俺の傍に居ろよ……アレフ」
子供みたいな我儘を呟いた俺に、彼は「フッ」と笑って見せた。
「漸く言ってくれたな。お前の本心を聞く為に、どれだけ茶番を演じた事か」
……ん?
今なんか、……後半とんでもない言葉聞こえなかったか?
「どういうことだ」
目は大きく見開かれ、アレフの肩を抑えていた腕が無意識に震える。そんな自分とは打って変わって俺の下の彼は見たことも無い程の満面の笑み。
「安心しろ、ロイデール家との茶会なんてとうの昔に断りを入れている。なんなら他の縁談も全て破談済みだ」
……ん?ちょっとコイツの言っていることが理解出来ないが……?
「……は?……いやでもイーサンが」
「あぁ、言えと命じたからな」
「……え?」
思わず腕の力が抜ける。それをいい事に、アレフはゆっくり起き上がったかと思えば、代わりに今度は俺が天井を見る事となった。
「お前はよく、イーサンの事を独占欲と執着心の塊と言っていたが……私もイーサンも根っこは同じなんだよ、ギルバート。何せ血を分けた兄弟なんだからな」
「……はい?」
そんな素っ頓狂な返事しか出来ない俺の顎に、アレフの長い綺麗な指が掛かる。
「アレはまだ、真っ直ぐな分救いがあるが。悪いな、初めて関係を持った14の時から、お前の将来は私が貰うと決めているんだ」
「悪い……何言ってるのか。いやお前、公爵家の跡取りだし……俺身内だし……」
目の前にある「ニヤリ」と口を歪ませたその顔は、何かを企んでいるイーサンに酷似して……いや、それ以上になにかドス黒い物を感じる。「あれ? これ、俺なんか逃げられないやつ?」なんて言葉が瞬時に頭を過ぎった。
「お前、中々本心を見せないからな。私が嫁を貰うなんてホラ吹けばなにか聞けるかと思い、イーサンにも色々協力させたんだよ……気付かなかったか?」
……そういえば「アレフが見合いする」だなんだの情報は全部アイツ伝いだった気がしなくもないが……いや、それ疑うってのが無理な話だろうがよ!?
「い、いやあの……ほら、お前跡取りとかさ、そういう問題出てくるじゃん。俺もお前も産めないよ!?男だよ?」
素直に喜べばいいものを。どうして俺の口は、不安を示唆する言葉しか生み出すことが出来ないのか。彼に押し倒されたまま必死にあれやこれや言う俺に、アレフは顎に掛けた指をクイッと動かし、身をかがめ煩い俺の唇を塞いだ。
「そんなもの。そもそも両親には、お前以外伴侶にはしないと説得済み。イーサンも男色だとカミングアウトし、ならまぁ養子を貰うなりなんなりで家の存続をすれば良い、好きに生きろとの事だ」
はァァァァァ!?
いやたしかに、どんな遺伝子の間違いがあってこの兄弟が生まれたんだって程にぽやっとしたご両親だけれどもぉぉそんな軽くていいのかよおおお!?
「……俺の悩んだ時間……返せよ……」
「因みに、この件はお前のところのサイラス家も了承済だ。良かったな、ギル。私たちの邪魔をする者は誰ひとり居ないぞ」
「ちょ、いつの間に……?」
頭の良い奴は嫌いだ。
彼の熱で濡れた唇を、再びギリっと噛む。
「そもそも、後継者問題が切迫しているならば、この歳まで独り身なわけないだろ。もうとっくに所帯持ちになって子供の2、3人は産まれている」
「してやったり」と顔に書いてあるアレフのその表情が、途端に憎らしくなる。いまだ俺の顎に置かれたままの腕を強く引き、バランスを崩したアレフを受け止めながらその唇を自分のそれで覆った。
「……第1騎士団は、団長不在で何日許される」
「2日……いや、3日はどうにかなるだろうな」
見た事が無いほどキラキラ輝くアレフの瞳には、機嫌が悪そうに眉を寄せる俺の姿が映っている。
「覚悟しろよ、なら3日かけてこれ迄俺が我慢し続けたモノをお前に全部ぶちまけてやるからな」
透き通るような美しい首筋に顔を埋め、そこに思い切りガリっと噛み付く。
「……っ、は……それはそれは……楽しみだな」
たったそれだけの行為で、アレフは達した時と同じように身体を震わせた。
「……愛してるよ、アレフ」
「私もだ、ギルバートよ」
ずっと諦めなければと思っていたものが、手に入るなんてな。態度はアレだったかもしれないが……嬉しくないわけないだろ。
……俺の心の中は、初めてアレフを抱いたあの日と同じ様に高揚していた。
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