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1章
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――苦しい。
何だこの……まるでクッションを口に突っ込まれたような息苦しさは。
顔面を覆うモフっとした物体を、手探りで掴み剥がし取る。手の中で暴れ鳴く、その声には覚えがあった。
「ピーーピーー!!」
「はっ……は……、あ? お前……焼き鳥の……」
スルッと手の中から抜け出たトリに、ペチッと頬を殴られた。
――コイツ、ヒトの言葉を理解しているのだろうか。
「お前、トリの分際でよくも……」
「今日こそ焼き鳥にしてやる」と、そいつの丸々とした頭頂部を掴むと、その下にあるつぶらな瞳が潤み何かを訴えている。
「ピーピッピッピピピ」
「アオが? ……何があった」
どうしてか、このトリの言わんとせんことが理解出来る。
俺はベッドから起き上がり、その柔らかい身体を両手で抱き上げ視線を通じ合わせた。
「ピーッピピッピッ」
「本当か? ……っ、クソ……」
トリの言う事を完全に理解した俺は、慌ててベッドサイドに置いていた通信機に手を遣る。
時刻は夜もだいぶ深まった頃。……どうせ、どいつもこいつも同じ場所に居て起きてんただろ。
発信音が止み『は、い…』と上擦った声へと変わった。
「ジェイス。緊急命令だ、今すぐ装備を整え、宿舎の庭に集合。キーファも…聞こえてんだろ!! 5分で終わらせてすぐ来い。1秒でも遅れたらキーファは左遷だ、いいな」
『は!? いま……から? ……っ、ぁっ…んっ…』
『ちょ、団長! 5分って無理すぎません!?』
ジェイスのあられも無い声と、遠くからの不満が聞こえた所で、通信をプチッと切った。
「……まぁ、こっちはいつもの事だからどうでもいい」
というか怪我したんだから大人しくしてろとアオに言われたはずなんだがな、あの二人は。
……問題はもう1つの方だ。
「流石に最中だとキツいんだが色々と……」
ため息混じりに、先にウチの昼行灯の方に連絡を試みる。
「……出ない」
更に大きなため息を繰り出し、もう片方へと連絡を試みた。
『……はい。どうしたイーサン、こんな時間に』
アレフの声は、心做しか掠れて居るように聞こえなくもないが通常運転だ、助かった。
「夜分にすみません兄貴。そこにギルバートは居ますか? 居るならば緊急命令、5分後に宿舎庭へ集合と伝えて下さい」
『あぁ、ギルは今シャワーだな。いいだろう。5分……まぁ、なんとかなるだろ。伝えておく』
そう言って通信機は切られた。
――よかった事後だった。
流石に実の兄と、兄同然に育った男のあられも無い声を聞くなんて、生理的に無理がある。
通信機をサイドテーブルに置き立ち上がると、自らも仕事着である漆黒の軍用服をクローゼットから乱暴に取り出す。
――あのアオの態度から想像は付いた。いっそ縛り付けてでもこの部屋に閉じ込めておくべきだった。
「……馬鹿だろう、俺……」
自分への苛立ちと舌打ちは止まらないが、起きてしまったことは仕方ない。
アオを取り戻すだけならば、別にアイツらを用立てる必要はない、ひとりで事足りる。
だがこうなったならば、徹底的にやらせてもらおう。
「天子信仰……フタバ諸共徹底的に叩き潰す」
よくも俺の大事なアオを追い詰めてくれたな。
武器立てに並べてある聖剣デュランダルを握る手に力が入る。
「1人残らず……嬲り殺してやる」
ガシャッと力強くそれを腰に帯刀させ、指定した集合場所へ向かうべくドアノブに手を掛けると、肩にズッシリとした重みを感じた。「なんだ」とそちらを向くと、顔が柔らかい羽毛に包まれる。
「ピピ」
「はっ、お前も行くか。主の危機だもんな」
「ピーー」
鳴きながら俺の肩で飛び跳ねるトリも、どことなく勇んでいるように見えなくもない。それをそのままに、俺は部屋を後にした。
「アオにも1度、わからせる必要があるな」
そう呟きながら、長い廊下を駆け出して行った。
<<<
「遅いっすよぉぉー! まさかの団長が最後とか聞いてないっす」
庭の真ん中に置かれた噴水の前に、ガーデンライトに照らされた4人の影が伸びていた。
「天子信仰を叩きに行くんだろう」
右端に立つ、招集を掛けていないはずの兄の声に少し驚くも、直ぐに目を細め「ふっ」と俺の鼻から笑いにも似た声が漏れる。
「あぁ。トリの話によると、アオが1人天子信仰本部に乗り込んだ。そうだな、トリ!」
「ピー! ピピッピピ」
肩に乗ったままのトリにそう投げ掛けると、膨らんだ身体を大きく跳ねさせ「その通り」と皆に告げる。
「……団長、いつの間にそれと心通わせたんですか……こわ」
「まーまー! ……んで。取り返すだけならわざわざ俺たちをこんな時間に呼び出さないよなァ?」
真ん中に立つジェイスからドン引き声が聞こえ、右隣に立つギルバートがそんな彼を宥めながら、俺に問う。もうそんなの「分かりきっています」という笑いを浮かべている男の敢えての質問に、俺は同じように片口角を挙げた。
すぅっと息を大きく吐くと、普段より張りのある声で1列に並ぶ男たちへ声を上げた。
「緊急任務だ。内容は、アオの奪還及び天子信仰本部の壊滅。思う存分暴れ回り、1人残らず叩き潰せ。遠慮はいらん、望むのは殲滅だ。尚、この任務に失敗という言葉は存在しない。お前ら、自分の命と引き換えにしてもアオを取り戻せ。いいな!!」
「いやいや、今日も酷い無茶苦茶任務っすね」
伸びをしながらそう苦笑するキーファに、アレフがそう返す。
「そうか? 第1騎士団では日常茶飯事だがな」
ライトで陰るその顔は、俺以上の悪い顔で笑っている。
「いやぁ~俺ら第2騎士団で良かったなァ!?」
一際大きなギルバートの声がその場に響き渡った。
「いいかお前ら。行くぞ!!」
俺の声を合図に、全員が闇夜へと一斉に駆け出して行った。
何だこの……まるでクッションを口に突っ込まれたような息苦しさは。
顔面を覆うモフっとした物体を、手探りで掴み剥がし取る。手の中で暴れ鳴く、その声には覚えがあった。
「ピーーピーー!!」
「はっ……は……、あ? お前……焼き鳥の……」
スルッと手の中から抜け出たトリに、ペチッと頬を殴られた。
――コイツ、ヒトの言葉を理解しているのだろうか。
「お前、トリの分際でよくも……」
「今日こそ焼き鳥にしてやる」と、そいつの丸々とした頭頂部を掴むと、その下にあるつぶらな瞳が潤み何かを訴えている。
「ピーピッピッピピピ」
「アオが? ……何があった」
どうしてか、このトリの言わんとせんことが理解出来る。
俺はベッドから起き上がり、その柔らかい身体を両手で抱き上げ視線を通じ合わせた。
「ピーッピピッピッ」
「本当か? ……っ、クソ……」
トリの言う事を完全に理解した俺は、慌ててベッドサイドに置いていた通信機に手を遣る。
時刻は夜もだいぶ深まった頃。……どうせ、どいつもこいつも同じ場所に居て起きてんただろ。
発信音が止み『は、い…』と上擦った声へと変わった。
「ジェイス。緊急命令だ、今すぐ装備を整え、宿舎の庭に集合。キーファも…聞こえてんだろ!! 5分で終わらせてすぐ来い。1秒でも遅れたらキーファは左遷だ、いいな」
『は!? いま……から? ……っ、ぁっ…んっ…』
『ちょ、団長! 5分って無理すぎません!?』
ジェイスのあられも無い声と、遠くからの不満が聞こえた所で、通信をプチッと切った。
「……まぁ、こっちはいつもの事だからどうでもいい」
というか怪我したんだから大人しくしてろとアオに言われたはずなんだがな、あの二人は。
……問題はもう1つの方だ。
「流石に最中だとキツいんだが色々と……」
ため息混じりに、先にウチの昼行灯の方に連絡を試みる。
「……出ない」
更に大きなため息を繰り出し、もう片方へと連絡を試みた。
『……はい。どうしたイーサン、こんな時間に』
アレフの声は、心做しか掠れて居るように聞こえなくもないが通常運転だ、助かった。
「夜分にすみません兄貴。そこにギルバートは居ますか? 居るならば緊急命令、5分後に宿舎庭へ集合と伝えて下さい」
『あぁ、ギルは今シャワーだな。いいだろう。5分……まぁ、なんとかなるだろ。伝えておく』
そう言って通信機は切られた。
――よかった事後だった。
流石に実の兄と、兄同然に育った男のあられも無い声を聞くなんて、生理的に無理がある。
通信機をサイドテーブルに置き立ち上がると、自らも仕事着である漆黒の軍用服をクローゼットから乱暴に取り出す。
――あのアオの態度から想像は付いた。いっそ縛り付けてでもこの部屋に閉じ込めておくべきだった。
「……馬鹿だろう、俺……」
自分への苛立ちと舌打ちは止まらないが、起きてしまったことは仕方ない。
アオを取り戻すだけならば、別にアイツらを用立てる必要はない、ひとりで事足りる。
だがこうなったならば、徹底的にやらせてもらおう。
「天子信仰……フタバ諸共徹底的に叩き潰す」
よくも俺の大事なアオを追い詰めてくれたな。
武器立てに並べてある聖剣デュランダルを握る手に力が入る。
「1人残らず……嬲り殺してやる」
ガシャッと力強くそれを腰に帯刀させ、指定した集合場所へ向かうべくドアノブに手を掛けると、肩にズッシリとした重みを感じた。「なんだ」とそちらを向くと、顔が柔らかい羽毛に包まれる。
「ピピ」
「はっ、お前も行くか。主の危機だもんな」
「ピーー」
鳴きながら俺の肩で飛び跳ねるトリも、どことなく勇んでいるように見えなくもない。それをそのままに、俺は部屋を後にした。
「アオにも1度、わからせる必要があるな」
そう呟きながら、長い廊下を駆け出して行った。
<<<
「遅いっすよぉぉー! まさかの団長が最後とか聞いてないっす」
庭の真ん中に置かれた噴水の前に、ガーデンライトに照らされた4人の影が伸びていた。
「天子信仰を叩きに行くんだろう」
右端に立つ、招集を掛けていないはずの兄の声に少し驚くも、直ぐに目を細め「ふっ」と俺の鼻から笑いにも似た声が漏れる。
「あぁ。トリの話によると、アオが1人天子信仰本部に乗り込んだ。そうだな、トリ!」
「ピー! ピピッピピ」
肩に乗ったままのトリにそう投げ掛けると、膨らんだ身体を大きく跳ねさせ「その通り」と皆に告げる。
「……団長、いつの間にそれと心通わせたんですか……こわ」
「まーまー! ……んで。取り返すだけならわざわざ俺たちをこんな時間に呼び出さないよなァ?」
真ん中に立つジェイスからドン引き声が聞こえ、右隣に立つギルバートがそんな彼を宥めながら、俺に問う。もうそんなの「分かりきっています」という笑いを浮かべている男の敢えての質問に、俺は同じように片口角を挙げた。
すぅっと息を大きく吐くと、普段より張りのある声で1列に並ぶ男たちへ声を上げた。
「緊急任務だ。内容は、アオの奪還及び天子信仰本部の壊滅。思う存分暴れ回り、1人残らず叩き潰せ。遠慮はいらん、望むのは殲滅だ。尚、この任務に失敗という言葉は存在しない。お前ら、自分の命と引き換えにしてもアオを取り戻せ。いいな!!」
「いやいや、今日も酷い無茶苦茶任務っすね」
伸びをしながらそう苦笑するキーファに、アレフがそう返す。
「そうか? 第1騎士団では日常茶飯事だがな」
ライトで陰るその顔は、俺以上の悪い顔で笑っている。
「いやぁ~俺ら第2騎士団で良かったなァ!?」
一際大きなギルバートの声がその場に響き渡った。
「いいかお前ら。行くぞ!!」
俺の声を合図に、全員が闇夜へと一斉に駆け出して行った。
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